文献情報
文献番号
200201416A
報告書区分
総括
研究課題名
最適必要排風量と光触媒を用いた効率的な有害物質発散防止システムの構築に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
名古屋 俊士(早稲田大学理工学部)
研究分担者(所属機関)
- 田中勇武(産業医科大産業生態研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在一般的に使用されている各種局所排気装置の必要排風量を求める計算式に、工学的な手法と経済性を加味した最適必要排風量の一般式を求めることは、必要以上の排風量で有害物質を吸引しないので省エネにもなり、労働安全衛生マネ-ジメントを構築した作業環境作りを実施するためには不可欠なことと考える。さらに、必要以上の排風量での吸引は、フ-ド等で吸引した有害物質の後処理に掛かる費用に対しても負担となる。後処理費の負担軽減のためには、有害物質の処理に関しても環境のやさしい浄化と省エネを考慮した後処理法の開発が必要である。
そこで、本研究では局所排気装置の最適必要排風量の一般式を求めることを目的に実験を行った。また、捕集された有害化学物質の後処理法として、現在省エネで且つ環境浄化触媒として注目を集めている光触媒に注目し、光触媒を独自に作製し、その光触媒を用いて有害化学物質の分解実験を行った。
そこで、本研究では局所排気装置の最適必要排風量の一般式を求めることを目的に実験を行った。また、捕集された有害化学物質の後処理法として、現在省エネで且つ環境浄化触媒として注目を集めている光触媒に注目し、光触媒を独自に作製し、その光触媒を用いて有害化学物質の分解実験を行った。
研究方法
1)プッシュプル換気装置の設計に必要な風速式
プッシュ気流というのは発生した有害物質をプル気流の影響がある部分まで運ぶという重要な役割をもっており、プッシュ気流の特徴や性質がわからないとプッシュプル型換気装置の設計はできない。よって、プッシュ気流の特性を明らかにするために大型模型プッシュフードを用い、プッシュ気流の風速に関する様々な測定を行った。さらに、プル気流についても同様な風速測定を行い吸い込み気流の風速式を求める実験を行った。
2)TiO2薄膜光触媒作成法
TiO2ゾルの調製を以下の手順に従って調製した。
(1)チタニウムテトライソプロポキシドTi(OC3H7)4をホールピペットでトールビカーに分取する。この溶液をスタラーで攪拌しながら半量のエタノールC2H5OHをビュレットで滴下する。この際、水浴を使用する。(2)残りのC2H5OHに塩酸HClと水H2Oを混合し、ガラス棒で攪拌する。(3)(1)で調製した溶液をスタラーで攪拌しながら、(2)で調製した溶液をビュレット滴下する。この際、氷浴を使用する。(4)調製した溶液をスタラーで24時間攪拌する。(2)においてHClは触媒として、及び、沈殿の生成や液相分離を防止するために、H2Oは加水分解のために加えられている。
以上の様にして作成されたTiO2ゲル溶液を用いて、デップコウテング法によりガラス板上にTiO2薄膜を形成させる。その後、ガラス板を電気炉内で焼成してがらす板上にTiO2薄膜光触媒を作成する。作成された光触媒は、ブルッカイト型の光触媒である。
作製した光触媒薄膜を石英製小型有害物質分解容器に入れた後、所定の有害化学物質としてトリクロロエチレンを定濃度発生装置から石英製小型有害物質分解容器に入れ、密封した後、紫外線を照射して、トリクロロエチレンの分解状況を経過時間ごとに分解容器内の濃度を求め、分解率を求める。
プッシュ気流というのは発生した有害物質をプル気流の影響がある部分まで運ぶという重要な役割をもっており、プッシュ気流の特徴や性質がわからないとプッシュプル型換気装置の設計はできない。よって、プッシュ気流の特性を明らかにするために大型模型プッシュフードを用い、プッシュ気流の風速に関する様々な測定を行った。さらに、プル気流についても同様な風速測定を行い吸い込み気流の風速式を求める実験を行った。
2)TiO2薄膜光触媒作成法
TiO2ゾルの調製を以下の手順に従って調製した。
(1)チタニウムテトライソプロポキシドTi(OC3H7)4をホールピペットでトールビカーに分取する。この溶液をスタラーで攪拌しながら半量のエタノールC2H5OHをビュレットで滴下する。この際、水浴を使用する。(2)残りのC2H5OHに塩酸HClと水H2Oを混合し、ガラス棒で攪拌する。(3)(1)で調製した溶液をスタラーで攪拌しながら、(2)で調製した溶液をビュレット滴下する。この際、氷浴を使用する。(4)調製した溶液をスタラーで24時間攪拌する。(2)においてHClは触媒として、及び、沈殿の生成や液相分離を防止するために、H2Oは加水分解のために加えられている。
以上の様にして作成されたTiO2ゲル溶液を用いて、デップコウテング法によりガラス板上にTiO2薄膜を形成させる。その後、ガラス板を電気炉内で焼成してがらす板上にTiO2薄膜光触媒を作成する。作成された光触媒は、ブルッカイト型の光触媒である。
作製した光触媒薄膜を石英製小型有害物質分解容器に入れた後、所定の有害化学物質としてトリクロロエチレンを定濃度発生装置から石英製小型有害物質分解容器に入れ、密封した後、紫外線を照射して、トリクロロエチレンの分解状況を経過時間ごとに分解容器内の濃度を求め、分解率を求める。
結果と考察
1)プッシュプル換気装置の設計に必要な風速式
大型プッシュ及びプル装置を用いて、それぞれの気流の風速を測定し、多数の開口面、吹出し風速の風速分布を得るに至った。それを基にそれぞれの風速分布において影響のあるファクターを求め、数式を導入することに初めて成功した。
(1)プッシュ気流の風速分布について得られた知見を以下に示す。
①開口面の中心線上の風速は、大きく2つの区間に分けて考えることができる。すなわち、開口面から風速を保ち、風速が減衰することのない区間と、吹出し風速を維持できなくなり徐々に減衰する区間である。
②プッシュフードから吹出されたプッシュ気流の開口面の中心線上風速は以下の式を用いて求めることができる。
V = Vc (D≦Dmax)
V = Vc+a(D-Dmax)
ここで、 a:減衰の傾き
a=-0.0015Vc-3.35・10-5X-0.000983
D:開口面からの距離 cm
Dmax:非減衰到達距離 cm
Dmax=Dx・Dv
Dx=-0.051X2+5.84X
Dv=-0.603Vc2+1.34Vc+0.406
V:風速 m/s
V0:吹出し風速 m/s
X:開口面の大きさ cm
(2)プルフードから吹出されたプル気流の開口面の中心線上風速は、以下の式を用いて 求めることができる。
V=Vcexp(-1.97D/X)
ここで、 V:風速 m/s
Vc:吸込み風速 m/s
D:開口面からの距離 cm
X:開口面の大きさ cm
2)薄膜光触媒による有害化学物質の分解について
石英ガラス製有害物質分解容器に作製した薄膜試料を5枚立てかけるように敷き詰め、しっかりとふたをし、光が照射されないようにアルミホイルで覆う。パーミエーターでトリクロルエチレンを100ppm発生させ反応容器に1時間流通させ、容器内にTCEを充満させる。その後、分解容器の両端をピンチコックで留め、アルミホイルを外し、反応容器上から紫外線ランプにより紫外線を薄膜試料に照射する。15分ごとに反応容器内の気体をマイクロシリンジで採取し、ガスクロマトグラフによってトリクロルエチレンを定量する。その結果、トリクロルエチレンを99%分解することが出来た。
大型プッシュ及びプル装置を用いて、それぞれの気流の風速を測定し、多数の開口面、吹出し風速の風速分布を得るに至った。それを基にそれぞれの風速分布において影響のあるファクターを求め、数式を導入することに初めて成功した。
(1)プッシュ気流の風速分布について得られた知見を以下に示す。
①開口面の中心線上の風速は、大きく2つの区間に分けて考えることができる。すなわち、開口面から風速を保ち、風速が減衰することのない区間と、吹出し風速を維持できなくなり徐々に減衰する区間である。
②プッシュフードから吹出されたプッシュ気流の開口面の中心線上風速は以下の式を用いて求めることができる。
V = Vc (D≦Dmax)
V = Vc+a(D-Dmax)
ここで、 a:減衰の傾き
a=-0.0015Vc-3.35・10-5X-0.000983
D:開口面からの距離 cm
Dmax:非減衰到達距離 cm
Dmax=Dx・Dv
Dx=-0.051X2+5.84X
Dv=-0.603Vc2+1.34Vc+0.406
V:風速 m/s
V0:吹出し風速 m/s
X:開口面の大きさ cm
(2)プルフードから吹出されたプル気流の開口面の中心線上風速は、以下の式を用いて 求めることができる。
V=Vcexp(-1.97D/X)
ここで、 V:風速 m/s
Vc:吸込み風速 m/s
D:開口面からの距離 cm
X:開口面の大きさ cm
2)薄膜光触媒による有害化学物質の分解について
石英ガラス製有害物質分解容器に作製した薄膜試料を5枚立てかけるように敷き詰め、しっかりとふたをし、光が照射されないようにアルミホイルで覆う。パーミエーターでトリクロルエチレンを100ppm発生させ反応容器に1時間流通させ、容器内にTCEを充満させる。その後、分解容器の両端をピンチコックで留め、アルミホイルを外し、反応容器上から紫外線ランプにより紫外線を薄膜試料に照射する。15分ごとに反応容器内の気体をマイクロシリンジで採取し、ガスクロマトグラフによってトリクロルエチレンを定量する。その結果、トリクロルエチレンを99%分解することが出来た。
結論
1)プッシュプル換気装置の設計に必要な風速式
プッシュ及びプルフ-ドにおいて吹き出し中心線上の風速及び吸い込み風速の式を求めることが出来た。このことは、プッシュプル換気装置の中間に捕捉面を設定し、捕捉面における風速を決めた時、その風速に対応したプッシュフードの吹き出し風速とプルフードにおける吸い込み風速を求めることが可能となり、従来感に頼って設計していた吹き出し風量及び吸い込み風量を式から求めることが可能となった。
2)TiO2 薄膜光触媒による有害化学物質の分解
独自の方法によりTiO2 薄膜光触媒の作成を可能にした。その作成されたTiO2 薄膜光触媒を用いてテトロクロルエチレンを分解したところ良好な分解性能が得られた。このことにより、局所排気装置で捕集された有害化学物質を従来とは異なる方法で分解することが可能となった。
プッシュ及びプルフ-ドにおいて吹き出し中心線上の風速及び吸い込み風速の式を求めることが出来た。このことは、プッシュプル換気装置の中間に捕捉面を設定し、捕捉面における風速を決めた時、その風速に対応したプッシュフードの吹き出し風速とプルフードにおける吸い込み風速を求めることが可能となり、従来感に頼って設計していた吹き出し風量及び吸い込み風量を式から求めることが可能となった。
2)TiO2 薄膜光触媒による有害化学物質の分解
独自の方法によりTiO2 薄膜光触媒の作成を可能にした。その作成されたTiO2 薄膜光触媒を用いてテトロクロルエチレンを分解したところ良好な分解性能が得られた。このことにより、局所排気装置で捕集された有害化学物質を従来とは異なる方法で分解することが可能となった。
公開日・更新日
公開日
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