臭素化ダイオキシン類の毒性評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201402A
報告書区分
総括
研究課題名
臭素化ダイオキシン類の毒性評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
山本 静護(中央労働災害防止協会、日本バイオアッセイ研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
42,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臭素化ダイオキシンによる労働者の健康障害を防止する施策を行うための基礎データを得ることを目的として、臭素化ダイオキシン類の(1)労働現場における暴露形態に合わせた経気道投与による毒性(動物への吸入暴露代替法としての経気道投与技術の開発・検討を含む)、及び(2)塩素化ダイオキシン類との毒性比較に必要な経口投与による毒性(臓器毒性や生殖毒性等)を評価するための研究を3年計画で行う。本年度は、臓器毒性、内分泌機能、体内負荷量等に関する急性的影響及び次年度以降の生殖毒性研究実施のための基礎データを得ることを目的として臭素化ダイオキシン(TBDD)の単回経口投与による研究及びTBDDの経気道投与に用いる動物種及び投与方法・器材の選定等を目的とした投与技術の基礎的検討を行った。
研究方法
臭素化ダイオキシン(TBDD)の単回経口投与による研究では、被験物質2,3,7,8-四臭化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(TBDD)を300μg/kg、100μg/kg、30μg/kg、10μg/kg、0μg/kg(対照群:溶媒のみ)一回強制経口投与(6週齢で投与)したCrj:Wistarラット雌雄について、観察期間中は一般状態の観察及び体重測定、またTBDD投与後2日、7日及び36日に動物を解剖し、血液学的検査(赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、網赤血球比、血小板数、白血球数、白血球分類、プロトロンビン時間(PT)と活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT))、血液生化的検査(総蛋白、アルブミン、A/G比、総ビリルビン、グルコース、総コレステロール、リン脂質、GOT、GPT、LDH、γ-GTP、CPK、尿素窒素、クレアチニン、ナトリウム、カリウム、クロール、カルシウム、無機リン、血清中の蛋白分画(アルブミン、α1-グロブリン、α2-グロブリン、β-グロブリン、γ-グロブリン)、血清中のホルモン(T3、T4、TSH)の測定、肝臓中の誘導酵素(AHH、ECOD、EROD)量の測定、肝臓及び体内負荷量の測定(肝臓及び脂肪組織中のTBDD未変化体濃度の測定)、剖検観察、臓器の重量測定(胸腺、副腎、精巣、卵巣、心臓、肺、腎臓、脾臓、肝臓、脳、甲状腺の湿重量を測定。)、病理組織学的検査(骨髄(大腿骨)、リンパ節(腋窩、腹壁腸間膜)、胸腺、脾臓、肝臓、腎臓、下垂体、甲状腺、精巣、精巣上体、卵巣、子宮、腟、脳、脊髄の器官、組織について、ホルマリン固定後、切り出し、パラフィン包埋、薄切、ヘマトキシリン・エオジン染色を行い、光学顕微鏡による検査を実施した。)を実施した。また、経気道投与技術の開発・検討では、Crj:Wistarラット雄とCrj:BDF1マウス雄を用いて、動物種の選定、エーテル吸入麻酔とイソフルラン吸入麻酔の比較、気管内注入法(ステンレス製ゾンデあるいはプラスチック製ゾンデ使用)、液体気管内噴霧法(液体気管内投与器具マイクロスプレイヤー使用)及び粉末気管内噴霧法(粉末気管内投与器具使用)を、墨汁または炭粉を経気道投与した後、動物を解剖し、剖検観察を行って検討した。
結果と考察
TBDDの単回経口投与により、雌300μg/kgの3匹が観察期間の後期に死亡し、それらには体重減少と健康状態の悪化がみられた。生存動物では、投与後4日以降、雄の100、300μg/kg及び雌の30、100、300μg/kgで投与量に対応した体重増加の抑制がみられたが、一般状態への影響はみられなかった。血液系への影響として、血小板と骨髄での造血低下が投与後7日からみられ、36日には赤血球と白血球も減少した。血小板の減少は顕著であり、死亡動物にみられた脳や脊髄などの出血の原因となった可能性がある。また、血液系への影響の主因は骨髄での造血低下であると考察し
た。血液系への影響は雌雄とも30μg/kg以上の用量で認められた。免疫系臓器への影響として、胸腺に投与後2日から重量低下、7日には皮質からのリンパ球の消失や核崩壊がみられた。胸腺への影響は雌雄とも30μg/kg以上の用量で認められた。また、白血球分類で好酸球比の低下が示された。血清中のホルモン濃度(TSH、T4、T3)の測定では、雄のT4のみが低値を示した。臓器中の誘導酵素量(AHH、ECOD、EROD)の測定では、各酵素量ともにすべての投与群で高値を示し、観察期間を通してその値は同じ範囲で継続した。体内負荷量の測定では、肝臓中及び脂肪中のTBDDは雌雄共に投与量に対応した値を示した。それぞれの臓器中濃度を比較するとTBDDの肝臓中の濃度は脂肪中の濃度よりやや高い値を示したが、観察期間終了後では脂肪中の濃度が高かった。肝臓には臓器重量の増加、病理組織学的変化及び血液生化学的検査パラメーターの変化がみられた。TBDD投与後2日から臓器重量の増加と肝細胞の軽度な好塩基性化、総コレステロールの増加が認められた。投与後7日には、より明瞭な病理組織学的変化(肝細胞の腫大、細胞質内封入体の出現、雌では単細胞壊死と線維化)や血液生化学的検査パラメーターの変化(リン脂質、総蛋白の増加、雌ではGOTの増加)がみられた。さらに、投与後36日には肝細胞の配列異常や多核化が主に雌の300μg/kgに発生した。肝臓への影響は雌雄とも10μg/kg以上で認められた。生殖系臓器(精巣、精巣上体、卵巣、子宮、腟及び乳腺)や腎臓への影響は認められなかった。経気道投与技術の開発・検討では、マウスには気管内投与が困難であり、また臓器の採取可能量も少ないため、動物種はラットが適していると判断した。麻酔方法は、イソフルラン吸入麻酔では、小動物用吸入麻酔器の使用により安定した麻酔を継続できたため、確実な気管内挿管操作及び投与溶液の投与が可能であった。従って、イソフルラン吸入麻酔はエーテル吸入麻酔より適切であると判断した。投与方法は、化学物質を肺内に確実に投与することが可能で、また肺の各葉に均一に投与することが可能な液体気管内噴霧法(マイクロスプレイヤー使用)が適切と判断した。
結論
臭素化ダイオキシンの単回経口投与による生体影響として、胸腺、肝臓及び脾臓への臓器毒性が確認された。さらに、新たな知見として、①肝臓と血液系、特に血液凝固能への毒性が主な死因であること、②骨髄にも顕著な毒性影響がみられること、③単回投与でも時間の経過とともに毒性影響が強くなる遅延性の毒性が起きることを見出した。経気道投与技術の開発・検討においては、①動物種は、経口投与研究と合わせる、投与成功率が良好、血液等の生体サンプル量が確保できる等の検討結果よりラットが選定された。②確実な気管内挿管操作及び投与溶液の投与を可能とするイソフルランの吸入麻酔法が有効であった。③投与方法は、液体気管内投与器具を使用した液体気管内噴霧法が最も良好であった。これらの成果は、本研究の最終目的「臭素化ダイオキシンによる労働者の健康障害を防止する施策を行うための基礎データを得ること」の達成に繋がるものである。

公開日・更新日

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