今後の歯科技工士に対する養成方策等に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200201357A
報告書区分
総括
研究課題名
今後の歯科技工士に対する養成方策等に関する総合的研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 嘉一(日本歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 鳥山佳則(東京医科歯科大学歯学部附属病院)
  • 佐藤温重(明倫短期大学)
  • 末瀬一彦(大阪歯科大学歯科技工士専門学校)
  • 田上順次(東京医科歯科大学大学院)
  • 五十嵐孝義(日本大学歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
-
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、歯科技工の需要が新材料を用いた高度・最新の知識および技術を必要とするもののみならず、要介護高齢者、障害者に対しての口腔ケア、口腔リハビリテーションの視点からの歯科補綴やエステティックを重視した歯冠修復など、従来では想定されていなかった領域にまで広がっている。しかし、現在の歯科技工士養成の現場においては、個別的、微修正的な対応に留まり、こうした状況の変化に十分に対応する教育が行われていないのが現状である。また、医療専門職の教育養成全体としても、医療人としての人間性を涵養する教育やチーム医療としての取り組みの重視や、ゆとりある教育の実現などが求められている。こうした環境変化や社会的要請に対応した養成カリキュラムを構築し、それに基づいた効果的な教育を展開していくことが早急に必要になっている。このため本研究では歯科技工士学校養成所の現場で容易に適応が可能となるような教育内容、教授方法等も含めた具体的な養成カリキュラムのモデルを提示する。さらに、現在都道府県別に実施されている歯科技工士試験について調査し、全国統一試験について検討することにより、時代の要請に適応した質の高い歯科技工士を確保し、適切な歯科技工物の安定的な供給に資することを目的とする。
研究方法
1.カリキュラムについて:前年度に作成されたカリキュラムのモデルプランのうち実施可能なカリキュラムを試行実施し、その結果を基礎分野、専門基礎分野、専門分野(歯科技工実習を含む)の分野別にヒアリングを行い調査した。本調査には歯科技工士教育の現場である歯科技工士学校養成所の中から、7校に協力を得た。2.歯科技工士試験について:全国統一での歯科技工士試験の実施を想定してモデルプラン(実施案)を策定し、それぞれの所属機関にアンケート調査を実施した。また、資格試験の実施時期および学説試験と実地試験の順序についても調査に加えた。これらのアンケート調査の対象は全国歯科技工士教育協議会に加盟する71校の教務主任に、さらに学説試験および実地試験内容の総論的評価について全国47都道府県歯科医師会および歯科技工士会に対して調査を行った。
結果と考察
前年度、基本的概念を基づきカリキュラムモデルを作成したが、あくまでも机上の域を出ず、その実施にあたっての問題点等を探るために試行教育を実施した。1)基礎分野:保健体育、体育、情報処理の実習、情報処理技術、総合理学、社会人教育、社会福祉、経営概論について試行教育を実施した。評価は一部科目について定まっていないものの、良好であり、すべての教科とも実施可能であるとの判断が成立した。新卒者に対して、雇用側である歯科医院や歯科技工所は雇用の際、社会性・人間性を重視する。このことからも、基礎分野に挙げられた多くの科目が実施の可能性があると判断できたことは有意義であったと考えられる。さらに、他の医療職種を含め、他大学との単位の互換の観点からも意義深いと考える。2)専門基礎分野:審美歯科技工学、CAD/CAM理論、社会福祉について試行教育を実施した。試行の評価はいずれも良好であった。今回試行した科目はいずれも現在の教授要綱が施行された時代には考えられなかった科目であり、環境や社会的要請に対応したカリキュラムの構築を主眼とした本研究の課題に合致した結果が出たものと考えられる。3)専門分野:審美歯科技工学、顎顔面補綴学、スポーツ歯学、レーザー溶接学、インプラント技工学について試行教育を実施した。常に進歩する医療界、歯科医療の中で活躍
すべき歯科技工士の養成課程において、これらの最新技術に関する科目が実施可能であり、教育効果が高いことが示唆されたことは、大きな成果であると考える。4)試行教育後の課題:(1)試行教育を行った科目の中で審美歯科技工学、CAD/CAM理論は考え方によって基礎分野、専門基礎分野に、社会福祉は基礎分野と専門基礎分野に重複することとなり、いわゆる楔形教育科目であると考えられる。このことは、教育を3分野に明確に分離するよりも、教育効果の向上と分野間の単位の分配不足を補うことからも有効であると考えられる。(2)本研究で提案した新科目を試行実施したが、2年制で実施することは教育時間をいたずらに過密させることになると考えられ、修業年限を3年以上とし、93単位の中で実施することが望ましいことが示唆された。(3)試行した教育の評価は良好であり、実施可能との結論を出して問題はないが、今後はさらに定量的な評価も実施する必要性がある。2.歯科技工士試験の全国統一化を図るために実施案を作成し、アンケート調査、ヒアリングによってその実施可能性について検討した。アンケートの回収率は学校養成所93%、県歯会長100%、県技会長91.5%であった。1)学説試験:アンケート調査の結果、実施案に対して出題数、出題形式、試験時間等、大筋で理解が得られた。「歯科技工実習10題」については71.2%の学校から「よいと思う」との回答が得られたが、11校からは「0題が適切である」との回答があった。しかし、現行の学科目の中にも歯科技工実習と標示され、教育課程での占める割合も高く、現行の歯科技工士試験でも、歯科技工士試験出題基準に示されていないが歯科技工実習的出題が歯冠修復技工学、有床義歯技工学においてなされている。さらに歯科技工士試験に科目標示されることで学習意欲が向上され、結果的に教育の質の向上に連なる点等を考慮すると、必要な科目であると考える。2)実地試験:医療関係職種の中で唯一実地試験が実施されているのが歯科技工士試験である。この事実は非常に意義深いものがある。アンケートにおいては、様々な意見があり今後さらに検討する必要があった。
結論
1.カリキュラムの試行:a.基礎分野では現行の指定科目(外国語・造形美術概論)の他に保健体育、情報処理、総合理学、社会福祉、経営概論社会学等が実施可能であることが示唆された。b.専門基礎分野は2年制と3年制では自ずと異なる。c.専門基礎分野の「歯科技工と歯科医療」では、現行の指定科目の他に口腔衛生学、社会福祉学等が実施可能であることが示唆された。d.専門基礎分野の「歯・口腔の構造と機能」では現行の指定科目の他に審美歯科技工学、顎顔面技工学、障害者歯科技工学等が実施可能であることが示唆された。e.専門分野の「歯科材料・歯科技工機器と加工技術」では現行の指定科目の他にCAD/CAM、システム工学、生体材料学、課題研究などによる自己解決型の科目等が実施可能であることが示唆された。f.専門分野では現行の指定科目の他に審美歯科学、歯周病学、顎顔面補綴学、インプラント技工学、スポーツ歯学、レーザー溶接加工学等が実施可能であることが示唆された。2.歯科技工士試験についてa.学説試験について:専門基礎分野70題、専門分野90題の実施案に75%以上の賛同を得た。1)歯科技工実習10題については今後も検討を要する。2)出題形式はマークシート方式四肢択一に90%以上の賛同を得た。3)実施案に対し、歯科技工士会の88.4%、歯科医師会の80.9%の賛同を得た。b.実地試験について1)実施案に対して大筋で賛同を得た。2)評価方法としては複数試験委員による段階方式が93.3%の賛同を得た。3)実施案に対し、歯科技工士会の53.5%、歯科医師会の55.3%の賛同を得た。

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