医療機器技術の基盤的EBMデータベースの構築に関する調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201345A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機器技術の基盤的EBMデータベースの構築に関する調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 靖久((財)医療機器センター)
研究分担者(所属機関)
  • 箭内博行((財)医療機器センター)
  • 古幡博(東京慈恵会医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
27,580,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
通常EBMに供し得るevidence情報は、一種類の疾患一病態に対し適用する一薬物投与、あるいは一医療機器の有効性を比較法で実証しているものが多い。そのため、一医療機器毎の多様な用途、多様な病態に対する医療機器個別のEBM情報としてまとめられたものではない。本研究の目的は、医療機器自体の臨床的有益性をevidence情報から抽出し、機器毎のevidenceデータベースを構築することである。昨年度は具体的に次の目標を達成した。1)医療機器毎に搭載すべきevidenceデータ項目を決定した。2)循環器系分野の治療機器に限定したevidence調査を行い、データベースへ格納する内容をまとめた。本年度は調査対象分野を①脳神経外科系、②整形外科系としてデータ収集を行い、臨床家による分析結果に基づいて、その内容のデータベース搭載内容をまとめた。
研究方法
調査研究は、原則として臨床家、医療技術専門家、EBM情報専門家等による研究班を形成し、文献調査等は外注した。調査結果については臨床家 (本年度は後述するように脳神経外科医、整形外科医) が中心になって行い、その結果をデータベースへ搭載することとした。なお、作業方針は昨年度とレベルを合わせ、次のように定めた。1)本年度は脳神経外科系及び整形外科系治療機器のうち脳神経外科系8機種、整形外科系14機種を選定した。2)機器データベースのデータ項目に合ったキーワードで調査した。3)EBM情報の中から RCT情報に限定した。4)データベース化項目毎に結論内容で整理した。
結果と考察
1) 医療機器に関する固有データの項目を次のように定めた。a. 機器の適用疾病名 b. 診断機器の場合は診断能力 c. 治療機器の場合は治療能力 d. 安全性・信頼性 e. 患者QOL f. コストベネフィット  2) RCT情報からevidence情報検索フィルターを用いて、上記各項目 ( a~f ) の内容を抽出した。  3) 脳神経外科系の治療機器 (器具) の調査件数(RCT文献数)は次のようになった。なお、調査はMEDLINE、CDSR、CCTR、ACP-Journal Clubの5データベースで行った。ガンマナイフ13件、手術用顕微鏡14件、脳血管内治療28件、脳血管塞栓術システム (コイル) 0件、脳血管塞栓術システム (ステント)13件、ロボットサームジェリーシステム2件、経頭蓋磁気刺激63件、迷走神経刺激30件、合計163件  4) 整形外科系の治療機器 (器具) の調査件数(RCT文献数)は以下のようになった。人工股関節57件、人工膝関節54件、人工肘関節2件、人工肩関節2件、人工足首関節0件、内視鏡 (手根管) 21件、内視鏡 (椎間板ヘルニア) 2件、超音波骨折治療器5件、頚椎牽引6件、腰椎牽引4件、経皮的髄核摘出術9件、椎間板ヘルニアレーザー手術1件、脊椎固定インプラント39件、経皮的電気刺激20件、合計222件  5) 分析の結果、その有効性を示す上記の適用疾病名、治療効果は明らかになったが、c~fの項目については記述が少なく、内容が不充分とならざるを得なかった。(考察)医療機器は薬剤と多くの点で相違するが、今回RCTに基づき医療機器に関するevidence情報を収集し、そのデータベース化の可能性を得た。医療機器のRCTデータの現存数は多く、その処理にはデータマイニングのような自動化検出ソフトが必要である。一方で、安全性・信頼性QOLに関するRCTデータが少ないことに対する対策が必要であるとも考えている。また、RCTによるevidence情報は医療機器 (技術) に関する臨床ニーズを顕在化するという意味が大きく、機器開発の効率化・適正化に役立つモデルも今後検索および検討する必要がある。
結論
本年度は、昨年度の循環器系治療機器に引き続き、脳神経外科および整
形外科系治療機器 (器具) を調査・検討し、機器毎の疾病横断的データベース化を拡大し、臨床現場でも有効で役立つ充実した内容とすることの可能性が示唆された。さらにまた、効率的な医療機器開発を無駄なく実施するevidenceデータベースを形成し得る基盤が示された。すなわち、evidenceに基づく臨床機器適用に関するデータ提供と臨床適用機器研究開発に資するデータ提供の可能なデータバンク化への基礎を築くことができた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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