骨粗鬆症検診の有効性に関する研究-腰椎骨密度の低下は骨折リスクの上昇をどの程度反映するか-(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201340A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症検診の有効性に関する研究-腰椎骨密度の低下は骨折リスクの上昇をどの程度反映するか-(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
伊木 雅之(近畿大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 由良晶子(近畿大学医学部)
  • 相原宏州(近畿大学医学部)
  • 久保田 恵(岡山県立大学保健福祉学部)
  • 藤原佐枝子(放射線影響研究所)
  • 安村誠司(福島県立医科大学)
  • 吉村典子(和歌山県立医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人において腰椎骨密度の低下がその後の骨折リスクの上昇につながるかどうかを明らかにする。骨粗鬆症検診をはじめ、地域保健領域で骨折・骨粗鬆症の予防のために行われている各種の対策の有効性についてSystematic reviewを行い、「エビデンスに基づく地域保健における骨折予防ガイドライン」を作成する。
研究方法
腰椎骨密度測定による骨粗鬆症検診の受診時60歳以上の女性受診者を対象に郵送法で受診時から現在までの骨折状況を把握した回顧的コホート研究を実施した。
ガイドライン作成では骨折・骨粗鬆症予防上必要な項目について、PubMedと医学中央雑誌を用いて文献を検索し、systematic reviewを行い、その結果に基づいて勧告を策定した。
結果と考察
当初3年であった研究期間を2年に変更されたため、骨折リスク評価のための回顧的コホート調査も「骨折予防ガイドライン」の策定も未完となった。回顧的コホート研究では、腰椎骨密度の1標準偏差低下当たりの骨折リスク(オッズ比と95%信頼区間)の上昇は、全骨折で1.20 (1.05-1.38)、骨粗鬆症性骨折で1.35 (1.11-1.65)、骨粗鬆症性非椎体骨折で1.22 (1.00-1.50)、前腕骨遠位端骨折1.56 (1.15-2.11)であった。大腿骨頸部骨折は調査対象者数が不足したため、発生数が少なく、分析できなかった。関連文献のreviewによれば、白人女性において骨密度の1標準偏差の低下は将来の骨折リスクを2倍程度に上昇させるが、この傾向は年齢が上がるほど、また測定後の期間が長くなるほど低下した。日本人についてはデータが少ないが、同様の傾向と考えられた。これらの結果と比べると本研究における骨密度の標準偏差低下当たりの骨折リスクの上昇はやや小さかった。
牛乳・乳製品摂取の骨折・骨粗鬆症予防の有効性についてのSystematic reviewによれば、小児期の牛乳摂取は高い骨密度の獲得に寄与し、中高年期では閉経後骨量減少を抑制することが明らかになり、できるだけ若年から牛乳・乳製品を多く取る生活習慣を獲得させるべきと勧告された。カルシウムサプリメントならびに食物からのカルシウム摂取の骨折・骨粗鬆症予防の有効性については、男女を問わず、高齢者で有効で、特に高齢者でカルシウム摂取量を増やすことが勧告された。運動の骨折・骨粗鬆症予防の有効性については、中高年期の運動は大腿骨頚部骨折のリスクを下げるので、高齢期になっても、習慣的に運動をすること、活動的な生活をすることが勧告された。転倒予防対策の骨折予防の有効性については、高齢者の全身的運動とバランス機能を改善させる運動、及びヒッププロテクターの装着が有効であるので、これらを推進することが勧告された。
結論
骨密度の測定は骨粗鬆症性骨折のリスクを表現するので、骨粗鬆症検診は有効であると推定される。しかし、対象者の選定やscreenされた者への対処法によってその有効性は変化するので、今後さらなる検討が必要である。また、骨折・骨粗鬆症の1次予防策については有効なものが多数存在するので、積極的に進めるべきである。ただし、3年計画で開始された本研究が2年に短縮されたため、すべての分野をカバーできなかったのは極めて残念である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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