看護基礎教育における看護技術教育の基準案作成に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201321A
報告書区分
総括
研究課題名
看護基礎教育における看護技術教育の基準案作成に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
田島 桂子(広島県立保健福祉大学)
研究分担者(所属機関)
  • 藤村龍子(東海大学)
  • 高橋照子(愛知医科大学)
  • 井上智子(東京医科歯科大学)
  • 田村正枝(長野県立大学)
  • 村田恵子(神戸大学)
  • 安酸史子(岡山大学)
  • 太田喜久子(慶應義塾大学)
  • 加藤千代世(社会保険看護研修センター)
  • 筒井真優美(日本赤十字大学)
  • 小田正枝(西南女学院大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
4,392,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これからの看護職者はめざましく変化する医療・看護環境の中で、確実な看護技術を用いた適切な看護の提供と、状況に応じた看護技術に関わる指導的役割を担う能力を身につけておく必要がある。本研究は、これからの時代に即した看護基礎教育の過程に必要な看護技術とその教育のあり方に関する基準を作成することが目的である。なお、本年度は看護教育者側からの教育に必要な看護技術を明らかにし、その技術と前年度、臨地・臨床の現場の実態を踏まえて体系的に整理した必要な看護技術とを照合し、その結果に基づく教育のあり方を検討することを目標としている。
研究方法
以下の方法で、教育面からの看護基礎教育に必要な看護技術の検討および教育のあり方を考える資料を得た。1)検討者は全て教育機関で教育に携わっている者で、研究分担者および全国にわたる日本看護学教育学会評議員を含む看護学7領域の研究協力者とする。2)概念規定した「教育単位」と「看護技術」に基づく教育単位の設定とそれに含まれる看護技術の検討を、指定規則に表示されている看護学7領域(基礎・小児・成人・老年・精神・母性・在宅・地域看護学)ごとに行う。設定した教育単位と看護技術については、必要な認知領域面の内容の検討を同時に行う。3)2)項で検討した内容について、全国の看護教育課程別(大学、短期大学、専門学校-3年課程)の看護学7領域ごとの責任者を対象とした質問紙調査を行う。調査内容には、看護学教育の全般的な考え方として、教育内容の調整方法、看護技術教育の考え方や必要な看護技術および教育単位に組み入れる内容の構成方法などを含める。4)上記調査結果を参考に必要に応じた修正を行った結果として設定された看護技術項目と、前年度設定して調査しその必要性が支持された項目とを照合し,それぞれ時限を異にして設定した看護技術間の整合性と教育上の必要性を確認する。5)前年度および本年度の調査結果を反映させた教育のあり方を検討する。
結果と考察
1)全国の看護教育課程別、合計132校(回収率84.8%)の看護学7領域の責任者を対象とした調査結果のうち,看護技術および教育のあり方を考えるために必要な結果の概要は次のようである。①教育機関における教育内容の調整の仕方については、全看護教育課程(以下、全体)で「看護学全領域で調整している」は20%台にとどまり,「必要に応じて調整している」が約70%を占めている。②学内における教育の考え方については、全体では「看護技術を重視している」の最高が基礎看護学の19.8%で,他の看護学では10%以下である。その他には「理論や考え方を重視する」が最高90.3%から最低45.5%がある。③臨地実習における教育の考え方については、全体では「看護実践を重視している」の最高が36.8%で、最低は15.1%である。その他には「思考過程-看護計画立案等-を重視している」が、最高61.1%,最低41.1%がある。④設定された教育単位で取り上げられている看護技術については,全体で「適切である」の最高が68.5%、最低が51.2%となっている。この問では、その他に「その他の意見がある」項が設定されていたが、それを選択した回答内容の多くが、難易度や技術項目の多さと教育時間との関係などで技術項目への提案はわずかであった。⑤設定した教育単位の教育内容の構成の仕方については、“前提となる内容"、“中心的に取り上げる学修内容"および“発展・向
上にかかわる内容"を組み入れて構成することを提案したところ、全体では、「適切である」が最高87.6%、最低で81.5%であった。⑥設定した教育単位の教育の過程での学修内容に見合う教育方法やその過程に教育評価を組み入れることについては,全体で「必要である」が最高93.5%最低84.0%であった。この実態は,現状では看護技術が看護基礎教育の中心に置かれていないことを浮き彫りにしている。しかし、提案した看護技術項目についてはおおむね同意され,また,教育内容の構成方法についても同意されている。このことは,教育内容の構成方法に関しては、教育理論が十分認識されていることを意味するので,現状認識と看護技術と看護実践との関係ないし技術の」構造が明確に捉えられれば、看護技術を中心とした教育への変換の可能性は高いように思われる。2)教育者によって設定された看護学7領域別の必要な教育単位から導き出された看護技術と、前年度にこれからの看護の場で求められるものとして体系的に設定した看護技術とを照合した結果では、次のことが明らかになった。①設定した看護技術289項目のすべてが,「当該領域の看護学で取り上げられる技術」、「既修(習)内容となる技術」、「他の領域での教育内容として期待する技術」、「当該領域の内容を中心として発展的な学修となる技術」として位置づけられた。②設定した看護技術項目は大半が全看護学領域対象の内容で,その他に一部であるが、小児や老年などの特定領域対象,地域看護に関する内容および助産領域対象の技術に分類された。この結果は,現行の看護学7領域で確実に教育できる内容であることを示すと同時に、看護基礎教育の範疇で,別に看護技術の類似項目を再構成して設定した教育単位での教育の可能性を示唆するものと考えられる。また,教授ー学修過程を,中心として取り上げる看護技術と前提あるいは発展・向上に位置づける内容を組み入れてつくリ,付随的に学修の幅と深さをつける可能性も期待できるものである。
3)前年度および本年度の調査結果を反映させた教育のあり方については,次のような事項を考慮した教育を考えることになる。①看護技術の学修上での課題となっている事項-身体侵襲性の高い技術の学修,臨地・臨床での頻度が少なく,経験の機会が望めない内容の学修,時代的ニーズで開発された電子機器の整備状況による学修差などへの対応を考える。②看護技術と臨地・臨床での看護実践内容となる看護行為との関係を考慮して具体的な教育内容の構造化を図り、教育の段階と評価が容易に考えられるようにする。③機関の教育理念の下に設定されている教育科目間で取り上げる教育内容の調整を図る。④設定されている教育科目ないし教育単位の構成内容として, 中心として取り上げる看護技術と前提あるいは発展・向上につながる内容(全ての技術に認知領域の内容が含まれる)を組み入れる。
⑤③と④項では,本研究によって同意された看護技術289項目を考慮する。その際の最低到達目標として、厚生労働省による「看護基礎教育における看護技術教育のあり方に関する検討会報告書」(平成15年3月17日)および文部科学省による「看護学教育のあり方に関する検討会報告書」(平成14年3月26日)表示の看護技術が取り上げられることが望まれる。⑥教育科目ないし教育単位の教授-学修過程では、内容に見合う教育方法と教育評価の過程を組み入れ、確実な成果が出るような教授―学修計画を立案する。⑦学内実習および臨地実習での技術を中心とした学修の強化およびその教育環境の整備を行う。
結論
初年度に、臨地・臨床の現場で必要とされている看護技術の実態を基に、人間の成長・発達段階、看護の場、看護実践過程、保健師・助産師・看護師に不可欠な内容等の視点から研究者らが体系的に精選した看護技術項目は、本年度調査による指定規則に表示されている看護学7領域の教育の過程に必要とされる内容と一致した。したがって,本研究で明らかにした看護技術の概念に基づく289項目を,看護基礎教育における教育内容面からの基準として、以下に示す教育のあり方と併せて教育の過程を創ることによって、看護実践能力育成につながる教育の可能性が生まれることが明らかになった。①看護技術の学修上での課題となっている事項-a.身体侵襲性の高い技術の学修,b.臨地・臨床での頻度が少なく,経験の機会が望めない内容の学修,c.時代的ニーズで開発された電子機器の整備状況による学修差などへの対応を考える。②教育の過程を創る際には、本研究で概念規定した「教育単位」と「看護技術」を考慮し、看護技術と臨地・臨床での看護実践内容となる看護行為との関係を明確にして、看護実践能力育成につながるような教育の段階を設ける。③機関の教育理念の下に設定されている教育科目間で取り上げる教育内容の調整を図る。④設定されている教育科目ないし教育単位の構成内容として, 中心として取り上げる看護技術と前提あるいは発展・向上につながる内容(全ての技術に認知領域の内容が含まれる)を組み入れる。⑤③と④項では,本研究によって同意された看護技術289項目を考慮する。⑥教育科目ないし教育単位の教授-学修過程では、内容に見合う教育方法と教育評価の過程を組み入れる。⑦学内および臨地実習での技術を中心とした学修の強化を図る。
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