看護基礎教育における認知領域面の教育基準作成に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201320A
報告書区分
総括
研究課題名
看護基礎教育における認知領域面の教育基準作成に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 照子(愛知医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 田島桂子(広島県立保健福祉大学)
  • 藤村龍子(東海大学)
  • 田村正枝(長野県立大学)
  • 村田恵子(神戸大学)
  • 安酸史子(岡山大学)
  • 小田正枝(西南女学院大学)
  • 太田喜久子(慶應義塾大学)
  • 筒井真優美(日本赤十字大学)
  • 井上智子(東京医科歯科大学)
  • 加藤千代世(社会保険看護研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
4,636,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今日の医療の進歩は専門分化と高度・複雑化をもたらし、一方で、在宅や地域医療では保健・医療・福祉の諸専門職者との協働や、家族員も加えた生活に密着したシステム化が求められている。こうした医療環境や社会状況の変化に対応した適切な看護を提供するために、専門職者としての看護実践能力の質的保証は社会的責務といわなければならない。本研究では看護基礎教育における看護実践能力の育成を目指して、その根拠となる認知領域面の教育内容の基準を作成することを目的としている。初年度は看護実践能力の中心である看護技術に焦点を当て、実践現場で必要とされている看護技術から、基礎教育において各看護学で教授すべき看護技術項目を精選した。本年度は、それに基づいて教育単位を構築し、全国の看護教員の意見を求めた調査を参考にしながら、各看護学の教育単位および教育内容を精選して、認知領域面の基準を作成することを目的とした。
研究方法
現在の医療・看護の現場で必要とされている看護技術の実態を把握するために、①平成7年度以降の公的基金(厚生科学研究費、科学研究費、社会福祉・医療事業団助成等)による8つの研究報告書、および②わが国で看護職者の継続教育に関して定評のある病院、および全国にわたる研究協力者が推薦する病院をあわせて9施設の院内プログラムを分析・統合し、実践現場で必要とされている看護技術項目を抽出した。
これらに基づいて、今日看護職者に求められている看護技術内容を精選した。それを、各看護学(基礎、小児、成人、老年、精神、母性、在宅・地域看護学)別に検討し、各看護学における教育単位を構築するとともに、教育者の意見を求めるために調査を実施した。同時に、分担研究者および研究協力者により、各看護学における認知領域面の教育内容を検討した。最終的に、調査結果を参考にして、各看護学別に看護技術とそれに基づく教育単位を再検討し、実践能力を育成する上で必要な知識と知識を活用するための諸能力等の、認知領域に関する内容を理論的に構築することによって、教育内容としての認知領域面の基準を作成した。
結果と考察
看護実践能力の育成を目指す看護基礎教育において、現場で求められる看護技術から構築された各看護学の教育単位と、その構築の意図および教授されるべき看護技術が明らかになった。また、一つの教育単位あるいはその中の一単元を教授する際の「構成内容」を、「展開例」として各看護学別に表示した。「展開例」とは、認知・精神運動・情意領域の3側面を含む「中心的に取り上げる学修内容」と「前提となる内容」、および「発展に関わる内容」、「向上に関わる内容」、「教育方法」、「教育評価」から構成されている。 
これらの成果に基づいて、広く意見聴取するために、関連事項を含めて教育の実態を把握することを目的とした調査の結果は、次のとおりである。対象は看護基礎教育機関の大学(47校)短期大学(35校)専門学校(50校)の132校に所属する各看護学担当代表者(924名)であった。76.6%から97.0%の機関から回答を得た。
テキスト使用に関しては、教育課程に関係なく3課程において、各看護学でほとんどの学校でテキストを使用しており、その使い方では、全体的にどの科目でも補助的に使われている傾向は同じだが、特に大学においてその傾向が顕著であった。教育内容の調整に関しては、専門学校では看護学全領域で調整している率が高く、次いで大学、短大の順であった。各看護学に関する教育単位の構築や看護技術については、全体の傾向として、教育単位構築に関しては、専門学校では適切であるという回答が全般的に多かったが、大学の30~50%の教員は意見があるとして、各看護学領域とも具体的な意見を記していた。また、各教育単位でとりあげられている看護技術は適切であるとする回答は、専門学校・短期大学で50~80%であったが、大学では50~60%の教員が各看護学に種々の意見を述べている。一方、「展開例」として教授内容を整理することに関しては、教育課程に関係なくすべての領域で70%以上の教員が適切であると認めている。また、「教育方法」の設定と「教育評価」の組み入れの必要性については、専門学校・短大では全看護学領域でほぼ90%以上が必要だと回答しており、大学でも全領域で70%以上が必要だと回答していた。
これらの回答を参考にして各看護学領域で詳細に検討を重ね、実践能力育成を目指す基礎教育における教育基準として、教授すべき看護技術を中心に据えて理論的に導き出したのが、本研究で明らかにした認知領域面の教育基準である。各看護学で、教育単位構築の意図を明確の記述し、「教育単位」と「教育内容」として、教育内容では「とりあげる看護技術」を明らかにした上で、認知領域面の教育基準を「認知領域面の学修内容」として明示した。
結論
 看護基礎教育における実践能力育成を目指した認知領域面の教育基準を、指定規則に準じた7領域の各看護学別に提示した。これらは、各看護学の教授内容を規定したのではなく、基礎教育における保健師・助産師・看護師に共通して求められる基礎となる標準的内容を提示したものであり、各教育機関における特徴ある科目編成で活用することが期待される。また、「展開例」で示した「前提」「中心的に取り上げる学修内容」「発展・向上にかかわる内容」および「教育方法」の設定と「教育評価」を組み入れた教授方法の検討は、高い支持を得たことからも,各教育者が独自の授業計画案として活用していくことが望まれる。尚、本研究における基準作成は、全国から各看護学における有識者が研究協力者として参加し、各地で精力的な検討会を重ねることによって生み出された成果である。そして、これらの成果は、研究過程を共有してきた「看護基礎教育における看護技術教育の基準作成に関する研究」の成果と共に,全国の教育機関に配布すべく冊子作成中である。
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公開日・更新日

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