二次医療圏毎の小児救急医療体制の現状等の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200201316A
報告書区分
総括
研究課題名
二次医療圏毎の小児救急医療体制の現状等の評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
田中 哲郎(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 田久浩志(中部学院大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
二次医療圏に小児専門の救急医療体制を整備するとしていることより、現状把握とその可能性等につき基礎的な検討を行うことを目的とした。
研究方法
各課題解決に最も適切な方法にて行った。詳細については各報告書を参照されたい。
結果と考察
平成14年における小児救急医療の現状について調査を行った。小児の二次救急医療については全国363二次医療圏の内24時間365日体制で小児科当直を持つ二次医療圏は107二次医療圏、小児救急の輪番体制のあるのは97二次医療圏のみで、203二次医療圏ではこれらの体制がなく未整備状態であった。また、二次医療圏毎に病院勤務の小児科医数について詳細に検討を行った結果、病院勤務の小児科医師(主たる)数の総数は8,158名で、二次医療圏別にみると中央値は9.0名、最大値は254名(名古屋)、平均値22.7名で、標準偏差は33.9名であった。二次医療圏毎に小児科医数、医療機関数、病院小児科標榜数、救急告示病院数、小児人口について整備、未整備二次医療圏間で検討した結果、小児科医数、医療機関数、病院小児科数、医療施設数、小児人口、小児人口/小児科医数など全てに両者間に有意な差がみられていた。このことより、整備、未整備の要因として、小児人口すなわち患者数の多い少ないが重要な因子であり、この小児人口によりそれに見合った小児の医療施設、小児科医が勤務することになると考えられた。
また、昨年の調査により、小児救急の輪番には一つの二次医療圏当たり15~17名の病院勤務の小児科が参加していることが明らかになっている。このことより未整備医療圏において病院に勤務する小児科医数を検討したところ、一つの二次医療圏に輪番を行うためには最低10名必要とすると小児科医が更に899名、15名必要とすると1,723名必要とされ、これらは現在の病院勤務医8,158名の11~21%の医師が不足すると考えられ、短期的にこれらの人数を増員することは物理的に不可能とされた。
今回の検討により、二次医療圏毎に小児救急体制を整備するためには、①二次医療圏を大きくして小児人口を増やすか、②小児医療費を大幅にあげ小児科が経済的に成り立たせるか、③政策医療として人件費を補助する、の3つの方策が考えられるが、この3つの方策とも実施は難しく、現状では短期間に全ての二次医療圏毎に小児救急体制を整備することは不可能とされた。
以上のことより、長期的な対応ができるまでの間は、最近著しい進歩を遂げているIT技術を使用し、遠隔診療(小児救急サポート)により、十分な救急診療を受けられない地域の子どもと保護者に対してサービスをする方法に政策転換をはかることも考えるべきであると提言する。
結論
二次医療圏毎に小児医師数などを詳細に検討した結果、二次医療圏毎に小児救急医体制を整備することは、小児科医不足などにより、現状では物理的に不可能と考えられることより、長期的に小児科医数の増員ができるまでの間、最近著しい進歩を遂げているIT技術を使用し、遠隔診療(小児救急医療サポート)により、十分な救急診療を受けられない地域の子どもと保護者に対してサービスをする方法に政策転換をはかることも考えるべきである。

公開日・更新日

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