保健医療福祉分野における住基カードを用いた個人・組織・資格認証の在り方に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201305A
報告書区分
総括
研究課題名
保健医療福祉分野における住基カードを用いた個人・組織・資格認証の在り方に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
大山 永昭(東京工業大学)
研究分担者(所属機関)
  • 喜多紘一(東京工業大学)
  • 公文敦(財団法人医療情報システム開発センター)
  • 土屋文人(東京医科歯科大学)
  • 八幡勝也(財団法人九州ヒューマンメディア創造センター、産業医科大学(併任))
  • 高橋紘士(立教大学)
  • 秋山昌範(国立国際医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では保健医療福祉サービスの情報化を推進するにあたり、個人認証の実現手段として極めて有効である住民基本台帳カード(住基カード)を用いて、サービス提供者(医師・医療機関等)や利用者(患者等)等についての個人・組織・資格認証の実施方策を明らかにすることを目的とする。
これまでの研究で、法定資格を有する医師や薬剤師等の本人確認、保健医療福祉サービス提供機関の認証、提供される情報内容の認証等を行うためには、医師免許等の資格登録情報に基づく認証の仕組みが必要であることを示し、技術面・運用面に関する問題点の検討を行ってきた。同時に資格名簿の整備等の課題を解決することの必要性及び、資格認証を実施するための具体的な方法を明らかにすることの重要性を示した。本年度は、最近の個人情報保護法、電子署名法、GPKI等に関する検討状況を踏まえた上で、平成15年度に住基カードとして配布が予定されているICカードや、同じく平成15年度中にサービス開始が予定されている個人認証基盤と連携して、保健医療福祉分野における個人・組織・資格認証を実施する具体的な方法を明らかにする。
研究方法
工学者及び医師らの研究分担者からなる研究班として、保健、医療、福祉の各分野における情報化推進にあたっている専門家を中心として組織し、委員会を開催して各分野における認証に関する要件と、実現方法の検討を行った。また、ICカードや電子認証に関する検討を行っている諸機関・グループとの情報交換・連携を行い、今後の社会共通基盤となると予想される電子認証の仕組みとの整合を図った。さらに、具体化した住基カードの仕様、法が公布された公的個人認証サービスの実施形態などに基づいて、住基カードを利用して個人・組織・資格認証を実現するための運用モデルを考察し、運用モデルに基づいた組織・資格認証機構の具体化を図った。
結果と考察
保健医療福祉分野における個人・組織・資格認証の実現方策について、以下のように整理した。
・ 法定資格者の認証については、税理士や行政書士等の他の職種でも必要となるため、これらとの整合性を確保して実施手段を構築することが重要である。資格認証においては、他の認証との整合性から、PKIをベースとして実施することが望まれる。
・ 具体的な実施方法としては、①認定認証機関を立ち上げる方法、②属性証明書を用いる方法が考えられる。①②いずれの場合でも、平成14年12月に公布された「電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律」に基づく「公的個人認証サービス」を利用することで、登録時の本人確認(特定認証業務)の負担を低減できる。
・ 実施にあたっては、e-Japan重点計画において官民のインタフェースとしての導入が決定されている広域・多目的ICカードを利用することが有効である。住基カードと公的個人認証サービス用カードは共通の仕様であり、保健医療福祉分野での資格認証においても、このタイプのカードを利用することが有効と考えられる。
・ 医療法人・診療所等の組織認証は、組織の基本的な認証サービスとしては法務省が行う法人認証サービスを基として、個人の場合と同様に属性証明書を発行することで実現できると考えられる。
・ 一方で、現在、紙の台帳で管理されている属性情報との整合性確保が不可欠であり、早急に電子的なデータベース化を図ることが望まれる。データベースには、厚生労働省の医籍登録と隔年ごとに実施される医師調査や、都道府県における病院・診療所の開設にかかる許可申請または届出と、厚生労働省の実施する医療施設調査などを活用することが、網羅性及び情報更新の管理から適切であると考えられる。
また、現在、PKIを利用して運用を開始している事例において、実証試験を行い、資格認証の実現形態、利用の効果および問題点などを明らかにした。加えて、電子的な資格認証の導入に付随する問題として、従来の紙ベースの運用では行ってこなかった様々な課題を厳密化して実施することが期待され、これが実務上極めて大きな障害となる可能性についても指摘した。このような問題の多くは、本来、電子化とはかかわりないものであるが、紙媒体中心の日常業務では通常、厳密な資格認証を求めていないため、顕在化していない状況にある。利便性が重要視される臨床の場において、厳格な資格認証を回避するシステムが構築された場合には、結果的に我が国の法が予定している内容とは異なったものになってしまう可能性がある。これを防止するために、早期に法の整備やその運用方法を含めて再検討を行う必要がある。
医籍は、医師免許の唯一の原簿であり、医師であることを証明することにおいて、網羅性、正確性とともに、信頼性が高いことから、属性認証及び属性証明書を発行するにあたっての資格の検証先として最適かつ欠かせないデータベースと考えられる。また、医師、歯科医師等の保健医療関連の資格にかかる属性証明書の発行を申請する場合の手続きとしては、概ね、各資格の免許証を再発行する場合と同様の手続き及び書類によってなしうると考えられる。しかし属性証明の発行にあたっては、免許証番号、登録年月日、生年月日、氏名によって行われることになるが、医師免許等に現住所は記載されていないため、一意に申請者を同定することになるかは検討が必要である。つまり、同氏名、同生年月日で公的資格のない者が申請してきた場合の排除方法を検討しておくことが必要である。
さらに、住基カードで用いられる広域・多目的ICカードと同等な仕様のICチップ(セキュアチップ)を用いることで、VPNなどにおける鍵の発行・配布を安全に実現できることも明らかにした。
結論
本研究では、保健医療福祉分野の電子認証を実施する方策を検討し、実現に向けた課題を明らかにした。住基カードの配布開始、公的個人認証サービスの創設など、実施に向けた環境は整いつつある。近年、電子カルテによる医療機関連携の運用も進んでいることから、PKIに基づく個人および資格認証の仕組みを早急に確立することが望まれる。本研究で得られた成果は、住基カードのアプリケーションとして、保健医療福祉サービスにおける認証機構の設計に活用される予定となっている。具体的には、(財)医療情報システム開発センターとの間で成果を共有することで、同センターで進めているヘルスケアPKIの実証実験や、認証業務およびICカードに関する仕様およびガイドライン等の検討に反映する。また、住基カード、行政連携ICカード等に関連する研究開発や実証実験などに本研究の成果を提供し、実施に向けた具体的な課題の解決策を示す予定である。資格登録情報のデータベース整備については、今後行政における検討が早急に行われることを期待する。

公開日・更新日

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