脳卒中地域クリティカルパスの開発に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201301A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中地域クリティカルパスの開発に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
木村 彰男(慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 大田哲生(慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター)
  • 森健太郎(順天堂大学伊豆長岡病院)
  • 青柳昌樹(三島社会保険病院)
  • 黒澤崇四(NTT東日本伊豆病院)
  • 稲田晴生(中伊豆リハビリテーションセンター)
  • 袴田康弘(静岡県立総合病院)
  • 築地治久(伊東市立伊東市民病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
-
研究費
8,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
寝たきり、要介護の最大の原因である脳卒中を対象として、地域の貴重な急性期医療資源やリハビリテーション資源を合理的かつ効率的に活用し地域の医療の質の向上を図るため、急性期から回復期さらには維持期までの一貫した脳卒中地域クリティカルパスを開発し、あわせてクリティカルパスが円滑に運用されるためのITを活用した地域診療ネットワークを構築することを目的とする。
研究方法
本研究の中核をなすものは地域クリティカルパスの開発とITを活用した地域完結型診療ネットワークの構築と検証である。救命救急センターでは、回復期との連携を考慮した院内クリティカルパスを策定する。回復期リハビリテーション病院は患者の選択基準、効率的なリハビリテーションの方法を確立し急性期病院と連結したパスの策定と検証をおこなう。また、維持期との効率的な連携方法も検討し、発症から維持期までの一貫した地域クリティカルパスを確立する。3カ年計画の2年目である本年度は、昨年度におこなわれた各施設のクリティカルパスの検証、病病連携の現状調査などの結果をふまえて地域に適したクリティカルパスの策定やネットワークシステムの開発をおこなった。最終年度には地域ネットワークシステムの運用をおこない、その改良および効果の検証をおこなう。
結果と考察
急性期病院では、より効率のよいクリティカルパスの作成を目的に、バリアントを減少させるため、新しい治療方法の有効性を検討した。その結果、脳出血の治療に内視鏡を使用することで在院日数が減少し意識レベルの改善度も良好であることが示された。しかし、各疾患に対して現存のクリティカルパスを運用してみたところ、患者が回復期リハビリ病院に移るタイミングは必ずしも理想的な時期ではないことが示された。また、回復期病院から在宅へのスムーズな患者の流れをつくるためには、地域におけるリハビリ資源の充実が必要であるが、地域資源の調査結果ではその不足が示唆された。しかしながら、テレビ会議システムは画像通信能力に問題があるものの使用しやすく、時間の節約、緊密な意志の疎通には有用であることが示された。適切な時期の急性期病院から回復期リハビリ病院への患者の移動を図るためには、各施設をインターネットで接続したネットワークシステムが必要であるが、本年度はそのネットワークの確立とシステム上のソフトの開発をおこなった。 当地域においては、設立母体、性格、規模などをまったく異にする急性期から維持期の施設が効率的な連携を保つことなく診療活動をおこなっており、転院時にタイムラグを生ずるなど、貴重な医療資源が有効に活用されておらず、その損失は大きい。これらの資源を合理的・効率的に活用するためには一貫した地域クリティカルパスの導入とともに、地域内の病院情報や患者情報をリアルタイムに共有できるITを活用した診療ネットワーク作りが望まれる。今回の研究では患者の能力を最大限に向上させ、在宅復帰に貢献すると考えられる急性期病院から回復期リハビリ病院への移動の効率化を中心に検討した。ネットワーク上で両施設間の情報交換をリアルタイムで患者の病状のみではなく、身体能力、ADLを含めた内容でおこなうことで、適切な時期に必要なリハビリ訓練が施行されるようになると考えられる。さらに急性期病院で各疾患ごとに分類されたパスの使用や、よりバリアント
の少ない治療方法を取り入れていくことで地域完結型ネットワークの諸問題は改善されると思われる。脳卒中の治療方法は今後も進歩していくことが予想され、本研究で用いられたクリティカルパスもそれらに対応すべく進化させることが必要と考える。
また、地域との診療ネットワークを確立させるためにはテレビ会議システムなどの方法を用いることも有用だが、費用、通信速度の問題もあり動画の利用には適していない。今後、安価な高速モバイル回線の整備に期待したい。本研究で構築している地域連携システムは多くの地域で利用でき、簡便で使い勝手がよく、かつ発展性のあるシステムになるよう配慮した。
結論
寝たきり、要介護の最大の原因である脳卒中を対象として、地域の貴重な急性期医療資源やリハビリテーション資源を合理的かつ効率的に活用し、地域の医療の質の向上を図るため、急性期から回復期さらには維持期までの一貫した脳卒中地域クリティカルパスを開発し、クリティカルパスが円滑に運用されるためのITを活用した地域完結型診療ネットワークの構築について研究した。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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