糖尿病の食事療法のエビデンス(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201292A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病の食事療法のエビデンス(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
清野 裕(京都大学)
研究分担者(所属機関)
  • 山田祐一郎(京都大学)
  • 福島光夫(京都大学)
  • 井原裕(彦根市立病院)
  • 松山榮一(国立姫路病院)
  • 森豊(国立東宇都宮病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では糖尿病罹患者数は生活習慣と社会環境の変化に伴い40年間で70倍に激増し、690万にも達することが報告されている。糖尿病に伴って生じる合併症も深刻な問題となっており、心筋梗塞や脳梗塞、腎不全、失明などによる生命予後やQOLの不良が深刻な社会問題となっている。また、医療経済的にも社会に大きな負担を強いている。糖尿病は、食事療法・運動療法・薬物療法が治療の柱である。過剰な摂取エネルギーの症例に対して薬物療法を強化することによって血糖値をコントロールすることが可能であっても、かえって大血管障害を助長し、必ずしも予後にとって良好でない。したがって、食事療法の重要性は高く、薬物療法を必要としない軽症糖尿病の時期から適切な食事療法を施行することによって、重症化ひいては合併症の発症進展を阻止することが可能である。さらに、患者を集団として見て、予後やQOLの改善度をかかったコストで割った指標で見た場合、医療経済の観点からは動脈硬化の食事療法が最も治療効率が高かったとする研究がある。したがって、重症化する前に治療する必要があり、また、合併症の発症を未然に予防する必要があり、このような重症化・合併症予防は、医療費の大幅な削減に繋がる。
最近の分子生物学・生理学の進展により、栄養素が腸管からの消化・吸収を介するだけではなく、さまざまな消化管因子を介して代謝を調節していることが明らかになった。とくに、膵β細胞からのインスリン分泌を効率よく促進したり、脂肪組織への糖や脂肪の取り込みの促進に重要である。このような新しい研究成果も取り入れて、より適切な糖尿病食事療法の確立を目的としている。
研究方法
作成したGIP受容体欠損マウスを高脂肪食で飼育し、経時的に体重、血糖などを測定する。さらに、間接カロリメータを用いた酸素消費量の測定により摂取したエネルギーがどのように代謝されるか検討する。また、健常者に種々の組成の脂肪酸を含む食事を提供し、その後、食事負荷試験を行い定時的に血中のGIP濃度を測定した。
結果と考察
GIP受容体欠損マウスを高脂肪食で飼育しても、肥満・インスリン抵抗性を来さないことを明らかにした。その機序として、GIPの存在下では脂肪が脂肪細胞に取り込まれるが、このシグナルが欠如すると、脂肪細胞に取り込まれることなく、肝臓・骨格筋でエネルギーとして消費されることを明らかにした。また、Metabolic syndromeのモデル動物であるob/obマウスを用いた解析により、この過食によって肥満が生じるモデル動物においてもやはりGIPのシグナル欠如によって、肥満は軽減し、それに伴いインスリン抵抗性の改善、脂質代謝の異常が改善した。したがって、GIPのシグナルは、Metabolic syndromeの発症に密接に関連し、このシグナルの解析が重要であることを示すことができた。さらに健常者に種々の組成の脂肪酸を含む食事を提供したGIPを測定したところ、動物性脂肪を高く含有する食事ではGIPは速やかに上昇し、その頂値が高いことを明らかにした。この結果は、Metabolic syndromeを起こすような食生活をすると、GIPの濃度が上昇することを示唆するものである。
結論
脂肪の含有量・ないしは脂肪酸の組成の違いが、GIP分泌を調節し、さらには体内の代謝が調節されることが明らかになり、今後の食事指導の一つの大きな指標となりうることが明らかとなった。

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研究報告書(紙媒体)

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