文献情報
文献番号
200201290A
報告書区分
総括
研究課題名
EBMを支える人材の系統的な養成に関する調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 裕光(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
- 津谷喜一郎(東京大学)
- 名郷直樹(作手村診療所)
- 中山健夫(京都大学)
- 野添篤毅(愛知淑徳大学)
- 河合富士美(聖路加国際病院)
- 山口直比古(東邦大学)
- 磯野威(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は,医療現場や政策決定の現場でのエビデンスの有効利用の振興・普及とそのためのリサーチライブラリアン及び情報の専門家の養成である.また臨床試験,臨床研究の場におけるエビデンスレベルを高めるとともに結果評価のためにそのエビデンスレベルの評価を可能とする構造化抄録の普及を目指すものである。具体的に期待される研究成果は以下の項目に集約される.すなわち、(1)リサーチライブラリアン及び情報の専門家育成のための具体的な教育プログラム・教育資材の普及、(2)システマティック・レビューのできるリサーチライブラリアン及び情報の専門家の養成、(3)構造化抄録作成のためのガイドライン策定及び構造化抄録の普及、(4)EBMに関わる各分野スタッフの役割および技術の研究と普及、(5)EBMの推進による具体的な効果の検証、(6)EBMの実践に関わるスタッフの組織化、などである。
研究方法
わが国においては,システマティック・レビューの方法論や教育の未熟さのた
め,EBMを実践するためのシステマティック・レビューを行える実務者(リサーチライブラリアン)が育っていないとの問題があり,その養成は急務である.また,一方の情報提供側も,エビデンスを利用する側が目的に合った検索が容易にでき,検索結果のエビデンスレベルを評価できるよう標準化されたレポート・抄録作成,検索語付与を構造化することも重要であるが,こうした構造化抄録作成についても立ち遅れている.以上のように、EBMを進める上では、医療従事者および医学、薬学、統計学、図書館情報学など幅広い分野の人材の協力体制が必須となっている。本研究は平成11年度より継続してきた「EBMを支えるリサーチライブラリアン養成についての調査研究」事業の成果を踏まえて,構造化抄録普及のための研究を行うと同時に、リサーチライブラリアン及び情報の専門家を中心に、より広範囲の人材を対象として、EBMの実践に不可欠な人材の養成を行うものである.これらのワークショップを通じて、リサーチライブラリアン育成のための具体的な教育プログラム・教材の開発、システマティック・レビューのできるリサーチライブラリアンの養成、リサーチライブラリアンの診療ガイドライン策定への参画促進、医療現場におけるエビデンスの有効利用の振興・普及、医学雑誌における構造化抄録の普及などに関して研究を行う。
め,EBMを実践するためのシステマティック・レビューを行える実務者(リサーチライブラリアン)が育っていないとの問題があり,その養成は急務である.また,一方の情報提供側も,エビデンスを利用する側が目的に合った検索が容易にでき,検索結果のエビデンスレベルを評価できるよう標準化されたレポート・抄録作成,検索語付与を構造化することも重要であるが,こうした構造化抄録作成についても立ち遅れている.以上のように、EBMを進める上では、医療従事者および医学、薬学、統計学、図書館情報学など幅広い分野の人材の協力体制が必須となっている。本研究は平成11年度より継続してきた「EBMを支えるリサーチライブラリアン養成についての調査研究」事業の成果を踏まえて,構造化抄録普及のための研究を行うと同時に、リサーチライブラリアン及び情報の専門家を中心に、より広範囲の人材を対象として、EBMの実践に不可欠な人材の養成を行うものである.これらのワークショップを通じて、リサーチライブラリアン育成のための具体的な教育プログラム・教材の開発、システマティック・レビューのできるリサーチライブラリアンの養成、リサーチライブラリアンの診療ガイドライン策定への参画促進、医療現場におけるエビデンスの有効利用の振興・普及、医学雑誌における構造化抄録の普及などに関して研究を行う。
結果と考察
平成14年度においては、国立保健医療科学院(和光庁舎)において平成14年12月16~18日に3日間の日程で第1回「EBMを支える情報の専門家のためのワークショップ」を開催し、講師・協力者の参加約20名、受講者としての参加約40名と盛況であった。本ワークショップでは、システマティック・レビュー、情報検索技術、EBM分野における情報専門家としての役割、などを主なカリキュラム内容とした。本ワークショップにおいて各セッションともできるだけ参加型の形式をとり、出席者に能動的に参加してもらうことに留意した。特に参加者がそれぞれの現場でEBMの推進役になりうるように実践的な内容を盛り込んだ。ワークショップ終了後の参加者に対するアンケート調査には、積極的な意見が多く見られ、異業種間の意見交換の場としても有意義なワークショップであったことがうかがえた。
平成15年3月には国立保健医療科学院(白金台庁舎)において医学雑誌の編集者(学会誌、紀要などを含む)を対象とした第2回のワークショップを開催した。参加者は、講師・協力者が27名、受講者が42名であった。本ワークショップでは、医学雑誌の質の向上を進める上での「研究デザイン」、「構造化抄録」などの重要性が強調された。パネル形式の総合討論においても国内雑誌の質の向上の問題が議論の中心となった。
米国ヴァンダービルト大学への訪問調査においては、EBMを推進する人材がそれぞれの専門性を背景により確実な情報を入手している状況が把握された。また、そのような人材を育成するための継続的なトレーニングが実施されていることが分かった。
フランス・リヨン第1大学への訪問調査では、同大学医学部学生に対するEBMの教育の実情が把握された。フランスの医学者の伝統的社会の中でEBMの発展の状況が米国とは若干異なることが分かった。
本研究は、従来のリサーチライブラリアンを対象とした人材養成に関する研究をさらに発展させたものであり、EBMを支える幅広い情報専門家の養成を目標とした。その結果、ワークショップ参加者の専門性や経験が多様になり、議論をより活発化させることができたと考えられる。また、参加者が本ワークショップで得た経験を現場にフィードバックできるように内容や形式を考慮した。その結果、EBMを普及する上で不可欠な中核となりうる人材の養成に貢献したと考えられる。
次年度以降では、技術や知識だけでなく、本ワークショップが参加者の人的ネットワークの拡大やその情報基盤となりうるように継続的な開催を検討していく予定である。さらに、EBMを実践する上で、現場にいながらEBMの手法を学べることも重要であり、今後は遠隔教育への応用も検討を進めていきたい。
平成15年3月には国立保健医療科学院(白金台庁舎)において医学雑誌の編集者(学会誌、紀要などを含む)を対象とした第2回のワークショップを開催した。参加者は、講師・協力者が27名、受講者が42名であった。本ワークショップでは、医学雑誌の質の向上を進める上での「研究デザイン」、「構造化抄録」などの重要性が強調された。パネル形式の総合討論においても国内雑誌の質の向上の問題が議論の中心となった。
米国ヴァンダービルト大学への訪問調査においては、EBMを推進する人材がそれぞれの専門性を背景により確実な情報を入手している状況が把握された。また、そのような人材を育成するための継続的なトレーニングが実施されていることが分かった。
フランス・リヨン第1大学への訪問調査では、同大学医学部学生に対するEBMの教育の実情が把握された。フランスの医学者の伝統的社会の中でEBMの発展の状況が米国とは若干異なることが分かった。
本研究は、従来のリサーチライブラリアンを対象とした人材養成に関する研究をさらに発展させたものであり、EBMを支える幅広い情報専門家の養成を目標とした。その結果、ワークショップ参加者の専門性や経験が多様になり、議論をより活発化させることができたと考えられる。また、参加者が本ワークショップで得た経験を現場にフィードバックできるように内容や形式を考慮した。その結果、EBMを普及する上で不可欠な中核となりうる人材の養成に貢献したと考えられる。
次年度以降では、技術や知識だけでなく、本ワークショップが参加者の人的ネットワークの拡大やその情報基盤となりうるように継続的な開催を検討していく予定である。さらに、EBMを実践する上で、現場にいながらEBMの手法を学べることも重要であり、今後は遠隔教育への応用も検討を進めていきたい。
結論
本研究おいては、EBMの実際のプロセスの中でEBMを支える人材である情報の専門家、医学雑誌編集者を主な対象として、ワークショップを通じて実際の人材養成を行うとともに、より効果的な教育プログラムの開発を試みた。本年度に行った2回のワークショップについては、参加者に対するアンケート調査からいずれもたいへん有意義であったことが分かった。しかしながら、参加者の多くのニーズにこたえるためには、時間、場所、内容などについてさらに検討を進めていく必要がある。今後は継続的なワークショップの開催、参加対象者の拡大、遠隔教育への応用、などについて検討を進めていく予定である。
公開日・更新日
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