一般内科診療における結果予測の効果的還元法の開発と調査

文献情報

文献番号
200201289A
報告書区分
総括
研究課題名
一般内科診療における結果予測の効果的還元法の開発と調査
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 好一(京都大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 小山弘(京都大学医学部附属病院)
  • 福井次矢(京都大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,414,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、一般内科の日常の診療において、科学的根拠の効果的提示法を開発し、患者・医師・医療関係者の満足度や行動に、どのような影響をもたらすかを明らかにすることである。その際、特定の疾患の一般的な診療ガイドラインをそのまま適用するのではなく、患者の個々の特性に合わせた表示法の開発を試みる。
治療効果を何らかの方法で数値化することは古くから行われている。さらに理解度向上のための判断ツールは、パンフレット、ビデオ、コンピュータプログラム等が種々提案されている。本研究では、医療機関や在宅を問わずに広くツールが使える工夫として、インターネット技術を選択した。本年度は測定が容易で客観性を持たせることが出来、他の医療効果と関連していると考えられる理解度を測定項目とした。
研究方法
本年度は患者教育が日常的に行われている高脂血症を取り上げ、米国のガイドラインを検討した。患者に応じたシミュレーションのための生存モデルとして、信頼性工学で十分に検討されているワイブル分布を採用した。ワイブル分布のパラメータはガイドラインと日本人の生命表から抽出した。
システム開発に関しては、インターネット技術を応用し、院外や院内のネットワークで容易に利用できるものとした。内部表現にも国際標準を採用し、将来、電子カルテ等と連動させることも可能となるよう検討した。
具体的には、自動セッション管理が可能なWebアプリケーション開発ソフトウェアの選択、グラフやイラスト表示に次世代標準のSVG (Scalable Vector Graphics)の採用、インテルアーキテクチャによる経済的で安定したサーバコンピュータの選択である。将来の電子カルテとの連携のために、情報交換形式が標準化されているデータベース開発システムの一つを採用した。
表示内容について、相対危険度減少(RRR: Relative Risk Reduction)や治療必要人数(NNT: Number Needed to Treat)などの数値を採用し、理解度を増す目的で生存曲線に基づくグラフと人形による表現を用いた、治療効果の判断ツールを開発した。
本年度の評価の指標は理解度とした。理解度はコンプライアンスや治療選択行動と関連していると考えられ、しかも必要であれば普遍的な評価が可能だからである。
医師による事前評価と改良の後、模擬患者による評価を行った。
結果と考察
(1) インターネット系のサーバを用意し、動作確認した。また、入院・外来端末等に接続されている院内LAN上にサーバを置き、同じシステムが動作することを確認した。院内端末の整備を開始した。
(2) 判断ツールの開発を行った。最新のインターネット技術を採用したが、模擬患者による予備実験が可能となる水準に達した。表示に関する技術開発は一段落したと考えられた。
(3) 判断ツールを用いた模擬患者による理解度の試験を実施した。主観的理解度と正答率の関係、医師と模擬患者の理解の違い、表現法の優劣に関する結果が得られた。
高脂血症のガイドラインから抽出されたパラメータを用いたワイブル分布のグラフ等は評価を行った医師と模擬患者に受け入れられた。理解度試験の設定の不自然さは指摘されなかった。
インターネット技術によるグラフ表示は現状でも実用水準のものが作成できる。ただし、Webブラウザの対応など、将来の発展に負う部分もあった。判断ツールの提供システムには、専用のサーバコンピュータの導入が望ましいことが明らかとなった。
主観的理解度と正答率は一致した。生存曲線とコホートのイメージの人形表示では模擬患者の主観的理解度も正答率も高かった。模擬患者ではNNTの理解はおおむね困難であったが、人形表示が一部の模擬患者には理解の助けになった。NNTに関する表示は改良が必要である。
次年度以降は、さらに臨床現場に密着したシステム開発を行い、実地調査を検討する。また、評価項目として患者や医療関係者の満足度等を検討する。
結論
医療効果の予測の提示法を調査し、システムを開発した。システムに必要なパラメータは、厚生労働省の公開資料やガイドラインから取得可能であった。システムはインターネットでも病院内LANでも動作確認できた。つまり、広く普及可能な方式を選ぶことができた。さらに、電子カルテ等との統合も視野に入れることができた。システムには専門家から批判的吟味が加えられ、模擬患者を用いた実験を行うことができた。本年度の評価項目は理解度とした。
模擬患者での実験では、主観的理解度と正答率が一致したため、主観的理解度の有用性が明らかとなった。また、各表示法について理解度に関する考察を行うことができた。これらにより、次年度からの本調査に必要な情報が得られた。

公開日・更新日

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