文献情報
文献番号
200201278A
報告書区分
総括
研究課題名
医療事故を防止するための対策の効果的な実施及び評価に関する研究(総括研究報告書)
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
池田 俊也(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
- 阿部俊子(東京医科歯科大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
-
研究費
4,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、医療機関における医療安全管理への取組状況を把握するとともに、安全管理部門や安全管理担当者の活動によって得られる効果を経済的側面から評価するための基礎的データを収集することを目的とした
研究方法
第一に、医療機関における10の要点の認知度や独自の標語の作成状況などについて、アンケート調査を実施した。調査対象は、特定機能病院82施設(東京女子医科大学病院を含む全施設)、その他の病院918施設(厚生労働省より提供された名簿より1/10抽出)、有床診療所594施設(同名簿より1/30抽出)とした。調査は、自記入式調査票を用いて、2段階に分けて実施した。第一次調査では調査対象施設に対して、第一次調査票ならびに冊子「10の要点」を郵送し、ファクスにより回収を行った。第二次調査は、第一次調査票が返送された施設を対象に、具体的な取り組みや今後の取り組みに関して自由記述による第二次調査票を送付した。
第二に、医療施設において、医療事故防止対策の実施及び評価を中心的に行っているリスクマネージャーの活動と機能を明らかにするために、都内5病院に勤務するリスクマネージャー(専任及び兼任含)の活動内容と活動時間をアンケート方式で調査した。
第三に、医療事故により発生した追加医療費の推計を目的として、病床数約420床の地域中核病院において、医療事故報告書の中から、事故により追加医療費が発生したと思われる事例を抽出した。これらの事例について、医療事故により発生したと思われる医療行為とその費用を特定するとともに、本来は実施されたが保険請求されなかったと思われる医療行為を推定した。
第二に、医療施設において、医療事故防止対策の実施及び評価を中心的に行っているリスクマネージャーの活動と機能を明らかにするために、都内5病院に勤務するリスクマネージャー(専任及び兼任含)の活動内容と活動時間をアンケート方式で調査した。
第三に、医療事故により発生した追加医療費の推計を目的として、病床数約420床の地域中核病院において、医療事故報告書の中から、事故により追加医療費が発生したと思われる事例を抽出した。これらの事例について、医療事故により発生したと思われる医療行為とその費用を特定するとともに、本来は実施されたが保険請求されなかったと思われる医療行為を推定した。
結果と考察
医療機関における10の要点の認知度や独自の標語の作成状況などに関する第一次調査では、428通(回収率26.9%)の回答が得られた。「10の要点」の内容を「よく知っていた」との回答は155通(35.2%)、「内容はよく知らなかったが存在は知っていた」は112通(26.2%)、「存在を知らなかった」は161通(37.6%)であった。独自の標語を少なくとも1項目について作成した医療機関は126施設(29.4%)であった。第二次調査において、「10の要点」を受けた具体的な取り組みについて記載があったのは118施設であった。特定機能病院と診療所を除く92施設において、最も取り組みが高かった項目は「安全文化」(78.2%)、最も取り組みが低かった項目は「技術の活用と工夫」「環境整備」(いずれも64.1%)であった。
リスクマネージャーの活動内容と活動時間に関する調査では、全ての病院で共通して見られた役割は、病院全体の医療安全管理会議への参加であった。各病院で特徴的な委員会もあり、リスクマネージャーがどの程度、臨床現場と関わっているかは、各病院で差が出る結果となった。
医療事故により発生した追加医療費の推計では、当該医療機関では平成14年に487件の医療事故報告書が作成されており、そのうち112件で事故による追加的医療行為が発生していた。その内訳は、転倒が29件と最も多く、次にCVトラブル26件の順であった。医療事故による追加的医療行為の全てあるいは一部を保険請求していたのは76件で、平均点数は2570点であった。最高は、狭心症に対する手術手技に起因する事故であり、14598点であった。
今回の調査研究により、医療機関における医療安全管理への取組状況が明らかになるとともに、安全管理担当者の活動状況の把握ならびに医療事故防止の経済的側面からの評価が実施できた。これらの結果は、今後、安全管理担当者の設置による医療事故防止効果ならびにその医療経済的側面からの影響を推計するための基礎的資料として活用できるものと考えられる。
リスクマネージャーの活動内容と活動時間に関する調査では、全ての病院で共通して見られた役割は、病院全体の医療安全管理会議への参加であった。各病院で特徴的な委員会もあり、リスクマネージャーがどの程度、臨床現場と関わっているかは、各病院で差が出る結果となった。
医療事故により発生した追加医療費の推計では、当該医療機関では平成14年に487件の医療事故報告書が作成されており、そのうち112件で事故による追加的医療行為が発生していた。その内訳は、転倒が29件と最も多く、次にCVトラブル26件の順であった。医療事故による追加的医療行為の全てあるいは一部を保険請求していたのは76件で、平均点数は2570点であった。最高は、狭心症に対する手術手技に起因する事故であり、14598点であった。
今回の調査研究により、医療機関における医療安全管理への取組状況が明らかになるとともに、安全管理担当者の活動状況の把握ならびに医療事故防止の経済的側面からの評価が実施できた。これらの結果は、今後、安全管理担当者の設置による医療事故防止効果ならびにその医療経済的側面からの影響を推計するための基礎的資料として活用できるものと考えられる。
結論
今回の調査研究により、医療機関における医療安全管理への取組状況が明らかとなった。また、安全管理担当者の活動状況の把握ならびに医療事故防止の経済的側面からの評価を実施し、安全管理部門や安全管理担当者の活動によって得られる効果を経済的側面から評価するための基礎的データを収集することができた。
公開日・更新日
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