在宅ターミナル患者の経時的ニーズの変化に対するケアプログラムの開発と評価方法

文献情報

文献番号
200201267A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅ターミナル患者の経時的ニーズの変化に対するケアプログラムの開発と評価方法
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
島内 節(東京医科歯科大学大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 友安直子(東京医科歯科大学大学院)
  • 田中博(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
  • 田近栄治(一橋大学大学院)
  • 油井雄二(成城大学経済学部)
  • 季羽倭文子(ホスピスケア研究会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,219,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①在宅死を可能にするために、ターミナル期にあるガン患者と徐々に衰退する高齢者の経時別ニーズに対して必要な看護機能を中心としたケアと支援体制の特徴を分析し、プログラムモデルを開発し、これを個々の事例に適用して仮説検証的に実用化する。日本・カナダ・イギリス・フィンランド・スウェーデンにおいて行う。②プログラムの成果をQOL、在宅における死亡率、経済性、等の視点から明らかにする。日本・カナダ・イギリス・フィンランド・スウェーデンにおいて行う。
研究方法
①文献研究 ②先行研究を参考にしたケアプログラムの枠組み案作成。 ③事例研究に基づく枠組み修正。枠組みの適切さを検証するために事例の取り組み過程と、取り組み視点を枠組みに当てはめてみる。④アンケート調査による枠組みの妥当性検証 ⑤事例研究に基づく標準的ケア内容作成。ケアプログラムの具体的内容を明らかにするために事例から実施されているケア内容をひきだし、標準化する。
⑥ケアプログラムの作成 ⑦作成したケアプログラムの有効性の検討。各国で実際にプログラムどおりにケアを実施し、その効果をいくつかの指標を用いて評価する。有効性を測る指標案として、患者家族のQOL、在宅での死亡率、在宅死の経済的効果、等を考えている。⑧以上の研究結果を集約し、ケアプログラムの使用方法、ケアプログラム実施段階における目標の達成度から見た評価の仕方、ケアプログラム全体の効果を見る評価の仕方をガイドラインとしてまとめ、実用化をはかる。
平成14年度は① ② ③について実施した。④については現在進行中である。
結果と考察
文献から得られたケアプログラム作成上の留意点:
①がんと他のプログラムの大きな差異は疼痛コントロール、ADLとする。②ターミナル期の状態から見た区分は概念化するために必要。ただし、各国の制度や文化によって事情が異なるので、時間設定はむりにおこなわない。③ケアの視点は、包括的・全人的なものであるべき。ケア技術のみでは狭い。宗教や価値観の違いが死の評価にも関るので、このようなことをプログラムにどのように取り込むかが問題。④ケア(提供者)としても、また、死後のケアの対象としても家族を重要視する必要がある。⑤枠組みの妥当性をどのように検証するかは大きな問題である。識者に「適切か否か」を聞くことも考えている。⑥諸研究をみると、事例研究(と哲学的研究)と実証的研究の比率は同程度。アウトカムを明らかにする研究も欧米を主にかなり見られるようになってきている。⑦ただし、アウトカムとして最も多いのはQOL(quality of dying and death も含めて)である。本研究においてどのようなアウトカムをとるかは検討を要する。⑧本研究はプログラム効果測定もおこなうので、アウトカムを測定する必要性は高いと考えられるがプログラム全体の効果と同時に、プログラムの段階ごとの目標達成度を測定するような形での効果測定もおこなうことが実施の手引きとしては役にたつと考えられる。プログラムの中にたとえば実施率等として入れ込む必要があるだろう。
ケアプログラムの枠組み案作成:初期の段階で作成した枠組みを、海外研究者の意見やわが国で結成した研究メンバーの意見を参考に修正し、あわせてこの枠組みで用いる用語の定義もおこなった。(総括報告書参照)
考察:①きわめて個別性が高く標準化にはそぐわないとされてきたターミナルケアの標準化は必要である。②海外における研究や実践をみると、ターミナル期のケアはこう生きたい、こう死にたいという社会の価値観モデルの反映である。わが国においても、在宅死の新しい枠組みの設定は意義がある。③ターミナル期に求められる支援の量と種類は大変多い。それらは現在進行中の調査結果をふまえて、ケアの枠組みの中にまとめあげられる。④今後、ターミナルケアを推進していく上でより重要となると考えられるのは、患者と家族を一体としてとらえ関る姿勢、患者の生きてきた道筋をありのまま受け入れて関ること、患者・家族が諸決定を行えるにいたるまでの支援、チームアプローチの訓練、心理的サポートと同時に具体的でやさしいケアの技術や症状の判断の仕方を示すこと、関係者間の気持ちのずれを少なくするためにコミュニケーション技術、グリーフケアの充実、等である。
結論
ターミナル時期として導入期・安定期・終末 臨死期・死別期を設定しそれぞれの時期におこなうべきケアプロセスとしてアセスメント・ケアプラン・ケア実施をもうけた。また、それぞれの時期におこなうべき支援の内容として、・疼痛その他の苦痛症状のマネジメント・心理精神的援助・社会的援助・スピリチュアルペインへの援助・基本的ニーズへの援助・デスマネジメント・家族親族の関係調整・喪失 悲嘆 死別サポート 等を設定した。

公開日・更新日

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