外来化学療法を受けるがん患者の自己管理能力の開発プログラム臨床応用(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201264A
報告書区分
総括
研究課題名
外来化学療法を受けるがん患者の自己管理能力の開発プログラム臨床応用(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
内布 敦子(兵庫県立看護大学)
研究分担者(所属機関)
  • 荒尾晴恵
  • 滋野みゆき
  • 宇野さつき
  • 大塚奈央子(兵庫県立看護大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、セルフケア理論に基づいて開発されたP.LarsonによるIASM(Integrated approach to symptom management)を用いて、外来で化学療法を受けてる患者の症状マネジメントプログラムを開発することを目的としている。特に平成14年度は、外来化学療法中の患者とそれを実施している医師(看護師を対象とした調査は先行研究がある)が必要と認知している看護ケアについて明らかにすることに焦点を当てた。同時に外来かが雨量法については先進国である米国の看護ケア提供のシステムや内容について明らかにすることを目的としている。
研究方法
半構成的質問紙による面接調査を倫理的配慮を行った上で、了解の得られた医師、患者に対して行うこととした。面接調査員は事前に訓練を行い、面接はインタビューガイドを別に定め、それに沿って行うこととした。面接内容はテープに音声録音され、筆耕の上、複数の看護専門家による内容分析にかけ、ニーズのカテゴリーを抽出する質的、帰納的分析とした。
結果と考察
C.研究結果
関西圏内の代表的ながん治療施設において、肺がんの化学療法をうけている患者および、化学療法を実施している医師を対象として、外来化学療法に伴う看護ケアニーズの調査を行うためのインタビューガイドを作成した。インタビューガイドは、本研究は、症状マネジメントモデルであるIASMを枠組みとして用いて看護ケアサービスを提供する事を前提としているので、インタビューの枠組みは、化学療法中に必要な知識、技術、看護サポートが十分にひきだせるように工夫し、倫理的配慮を行って研究計画に組み込んだ。研究計画書は、兵庫県立看護大学の倫理委員会の了承を得て、調査を開始した。インタビューガイドを元に、医師に対しては、外来化学療法中に治療管理上困難となる事象(患者の身体面、精神面、治療環境やシステムなど)、外来化学療法による治療を妨げているもの、また患者の自己管理能力についての見解、実際に患者に提供している治療に関する情報、医師にとって必要な看護師のサポートについて面接調査をおこなった。また同じくインタビューガイドを元に、患者に対しては、外来で化学療法を受けている体験の内容、副作用を中心とした身体の変化、治療にともなう困難への対処、看護師に求めるケア内容、医師とのコミュニケーション状況、治療をうけていて必要と思われる情報(副作用の対処、生活調整の方法など)、生活上の不具合、心の変化、外来治療環境の快適さなどについて面接調査をおこなった。面接内容は、録音をし、書き起こし、複数のエキスパートナースによる内容分析をおこない、ニーズのカテゴリー化を行った。
対象となった患者は計17名すべて肺がん患者で、男性11名、女性6名であった。平均年齢は、62.6歳であった。対象となった医師計5名で、4名は肺がん化学療法を外来で実施している医師であり、1名は乳がんの化学療法を外来で実施している医師であった。インタビュー時間は患者医師ともに、平均約60分程度であった。
最終的にカテゴリー化された看護ケアニーズの内容は、情報ニーズ(症状への対処法、緩和ケアサービスなど)、がん患者同士の情報交換や、交流の場(インターネット上も含む)の設定、外来治療環境の改善(プライバシーの保護、確実で上手な採血、点滴技術、専門看護師の存在、プライマリーナースの必要性など)、副作用を自己管理できるような記録用紙を含むサポートシステム、地域医師との連携調整、緩和ケア移行時の患者サポート、具体的な生活方法の教育指導、24時間体制の相談窓口であった。  
さらに、外来化学療法における先進国である米国の外来化学療法中の看護ケアサービス及び外来放射線治療中の看護ケアサービスの実態について現地看護師及び関係者にヒアリング調査をおこなった。大学病院附属がんセンター及び、放射線治療センターにおいて、看護師4名、心理学者1名、ソーシャルワーカー1名、患者1名に面接を行った。治療導入期に患者へのガイダンスをはじめとする様々な身体的問題や、心理的問題について多様な看護ケアサービス(治療中のモニタリング及びアセスメント、医師への患者身体情報提供、治療調整相談、患者への治療内容の詳細な説明、副作用のオリエンテーションと対処方法のガイダンス、活用できる資源の情報、最新治療の医学文献、患者サポートグループの紹介、週一回の看護面接など)が専門看護師によって提供されていた。看護ケアサービスは、患者のセルフケア能力を見計らって質量ともに、調整されていた。また、1施設で200を越える患者サポートグループが存在し、様々な基金や、寄付、ボランティアの力によって運営され看護師がそのコーディネーターとしての役割を果たしていることがわかった。
また、UCSF看護学部で開発され、本研究の看護介入モデルとして試用する予定となっているPro-selfは外来化学療法センター等では、使用されていないことがわかった。しかしながら、外来において、患者のセルフケアにむけて様々な看護サービスが提供されており、日本においての外来化学療法における患者の看護ケアニーズの開発への具体例を得ることができた。
これらの結果をもとに、次年度は、患者への看護ケア提供として、患者が自由意思で得ることができる情報(副作用や生活の指導、緩和ケア、患者会などについてのパンフレット等)を整備し、その効果の検証を行うことができると思われる。
結論
D.今後の展望
本研究の成果によって明らかとなった外来化学療法における看護ケアニーズに基づき、外来における看護ケアサービスの内容と提供システムについて根拠をもってデザインすることが可能となる。特に、患者のセルフケア能力を活用してそれぞれ個々の患者のニーズに合わせた看護ケアサービスが提供できるように量、質ともに多様な組み合わせができるようなサービスの内容を準備する必要があるものと思われる。
すでに看護師への面接調査によって明らかになっている外来化学療法における看護ケアニーズとして、相談窓口、良好なコミュニケーション、情報共有、専門家同士の連携、情報の共有についてがあるが、共通するケアニーズが、患者や医師にも診られることが今回の調査で明らかになった。すなわち、前述のようなニーズはかなり普遍的なものであると想定できる。
しかしながら、患者が求めているニーズは必ずしも看護師に期待されているものではなく、患者同士のサポートや、医師との交流、緩和ケアについての情報、製薬会社からの最新の情報など看護がカバーする専門範囲をこえて広い範囲でニーズが存在していることが特徴である。したがって、看護ケアサービスには、患者のニーズをそれぞれの資源につなぐ役割がもとめられている。このような研究結果を踏まえて、外来における情報提供のありかたや、看護師が提供できるサービスの内容を決定することが出来る。具体的には、症状への対応、生活調整方法、詳細な薬剤、緩和ケアに関する情報の提供、患者同士のネットワークの運営、医師とのコミュニケーションの調整などを含んだサービスの提供し、その効果を評価する計画である。

公開日・更新日

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