国家試験プール制を早期実現するための問題作成ソフトに関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201261A
報告書区分
総括
研究課題名
国家試験プール制を早期実現するための問題作成ソフトに関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
小口 春久(北海道大学大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 久光 久(昭和大学歯学部)
  • 森田 学(北海道大学大学院歯学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医師・歯科医師国家試験のプール制(試験問題をあらかじめ蓄えておく方式)導入の必要性が、医師国家試験改善検討委員会及び歯科医師国家試験制度改善委員会によって従前から提唱されている。さらに、平成13年8月、医道審議会歯科医師分科会において「93回歯科医師国家試験漏洩問題に対する再発防止策」が公表され、漏洩防止の観点からもプール制の早期実現が強く求められてきた。プール制の早期実現には、良質な試験問題を早期に多数作成する必要がある。しかし、現状の国家試験問題の作成は、漏洩防止の観点から、紙と鉛筆によって行われているため効率が悪く、そのための諸経費の負担も大きい。従って、コンピューター等のOA機器を使用して、問題作成の高効率化・低コスト化を図る必要性も指摘されている。以上のことから、本研究の目的は、コンピューター等のOA機器を使用した新たな問題作成システム用ソフトを構築し、新システムに組み込む試験問題について検討することとした。
研究方法
1.入力用ソフトの開発:新システムの構成としては、問題入力システム、問題プールシステム、問題ブラッシュアップシステム、問題選定システム、問題出題システムなど考えられる。今年度は、問題入力システム(コンピューターソフト)を試作した。問題ごとに入力する項目の内容は、年、グループ番号、委員番号、問題番号、出題別、既出問題別、既出問題番号、タクソノミー、キーワード、設問文、選択肢、正解肢、禁忌肢、大項目、中項目、小項目、視覚素材、コメントとした。2.既出問題のブラッシュアップと新規問題の作成:歯科医師国家試験問題の作成に関わった経験のある有識者33名が、過去3年分の既出問題をブラッシュアップし、さらに新規問題を作成した。有識者それぞれが、これらのブラッシュアップされた問題及び新規作成問題を、前述した試作ソフトの入力型式に従ってOA媒体(フロッピィーディスク)にテキスト形式で入力した。フロッピィーディスク(問題)を回収した後、有識者7名(歯科医師国家試験における試験委員長あるいは幹事委員経験者)が、それぞれの専門科目について、さらに詳細に国家試験問題としての妥当性を評価した。評価した問題を「ほぼこのまま使用可能」、「修正により使用可能」、「使用することは難しい」に分類した。なお、わが国の国家試験の作成プロセスは公表されていないため、これらの機密性に関しては十分に注意を払った。3.視覚素材の募集:臨床実地試験問題の新規作成にあたり、全国28歯科大学・大学歯学部(奥羽大学を除く)から視覚素材(保存、補綴、口腔外科、小児歯科、矯正)を募集し、専門科目のグループごとに、前述の歯科医師国家試験問題の作成に関わった経験のある有識者が評価を加えた。
結果と考察
1.作成された試験問題数とその評価結果:既出問題については、合計1031題をブラッシュアップし作成した。その結果、ほぼこのまま国家試験に使用可能なものは460題(45%)、文言の修正により国家試験に使用可能なものは241題(23%)、内容の修正により国家試験に使用可能なものは168題(16%)であり、全体の約84%は使用できる可能性があった。特に、基礎、補綴、口腔外科の科目において既出問題がそのまま利用できる割合が高かった。新規作成問題については1622題が集まった。ほぼこのまま国家試験に使用可能なものの割合は23%と既出問題に比べると低かった。今回、試験問題作成委員それぞれが、ブラッシュアップした既出問題と新たに作成した問題を、試作ソフトの入力型式に従って入力した。入力方法については、テキスト形式を使用したため、どのパソ
コンでも入力できるという利点があり、短期間に多数の問題が集積された。しかし、その反面、外字や機種に依存する文字を入力することができない、歯科特有の歯式が入力できない等の欠点があった。また、フロッピィーディスクからデータベース用パソコンに問題を移行する際、入力ミスがあると移行できないシステムとなっていたが、集められたほとんどのデータにミスが認められた。入力ミスは問題を入力する者の正確さに左右されるものの、全ての入力者が常に100%間違い無く入力することは現実不可能である。今後は入力ミスの発生頻度についても調査を行い、多いミスについては自動で修正できるようなソフトに改修するなどの改善策について検討する必要がある。さらに、テキストファイルチェック機能、グループごとの問題を印刷する機能などについてもソフトに具備される必要があろう。問題のブラッシュアップや問題の妥当性についての評価は、専門科目ごとに1名の評価者(歯科医師国家試験における試験委員長あるいは幹事委員経験者)が行った。従って、評価者の主観によって評価が異なる可能性がある。今回みられたように、専門科目によって国家試験として使用できる問題の割合に差が生じたのも、1名だけの評価者で評価した事が影響したのかもしれない。将来はこれらを踏まえて試験問題のプール制を導入する必要がある。2.募集された視覚素材数とその評価結果:総計832個の視覚素材が募集された。そのうち、ほぼこのまま国家試験に使用可能なものは244個(29%)、トリミングなどの修正により国家試験に使用可能なものは88個(11%)、説明文などの工夫により国家試験に使用可能なものは265個(32%)であり、全体の約72%は使用できる可能性があるという評価結果であった。特に口腔外科、小児歯科の視覚素材は、ほぼこのまま使えるものが多かった。これに対して、保存、矯正の視覚素材は問題文を工夫すれば使えるものが多かった。使用することが難しいものについては、その理由として視覚素材数の不足を指摘されているものが多かった。提示された視覚素材のみでは情報量が「必要かつ充分とはいえない」という判断であった。将来は、視覚素材としての所要条件を明確に規定し募集する必要がある。もちろん、視覚素材の募集に際しては、患者に十分な説明を行い、承諾を得るなど、患者のプライバシーを侵害することのないよう十分に配慮しなければならない。今回、問題が入力されているフロッピーディスクを郵送してもらうことにより問題を集めた。将来的に問題のプールをより効率よく集めるためには、セキュリティーに十分に留意しながらインターネットなどのweb上で行えるような環境を整備する方法も考えられる。また、試験問題や視覚素材の募集は、大学だけでなく臨床研修施設や歯科医師会などから募集することについても検討するべきであろう。
結論
本年度試作した問題入力システム(コンピューターソフト)により短期間に多数の問題が集積された。しかし、入力ミス、問題のブラッシュアップ等についての問題点があった。今後、一層効率的な募集方法を検討する必要性がある。

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