医師国家試験コンピュータ化に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201259A
報告書区分
総括
研究課題名
医師国家試験コンピュータ化に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
細田 瑳一(財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院)
研究分担者(所属機関)
  • 高林 克日己(千葉大学医学部附属病院)
  • 神津 忠彦(東京女子医科大学)
  • 福井 次矢(京都大学大学院)
  • 田村 光司(東京女子医大)(2002年7月31日迄)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
-
研究終了予定年度
-
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は医師国家試験をコンピュータ化することを現実的視野に立って検討し、問題点を分析してその解決法を研究することを目的とする。医師国家試験のコンピュータ化は既にアメリカ合衆国をはじめとして実施されており、また医学以外の分野でもコンピュータ化が進んでいる。本研究を行うことで実際に本邦で導入するための準備を整えることを目的とする。
研究方法
①CAT(computer adaptive test)の形式で800問の問題を国立大学医学部6年生に解答させ、その結果を分析して具体的問題点を検討する
②既出医師国家試験問題を収積分類し、領域別、デーマ、形式、難易度、タクソノミー、回答肢等をとりあげ、問題のテーマ、正・誤肢、選択肢等をデータベース化し、webサーバー上で稼働する登録ソフトウェア(PHP受信)を開発する
③米国、NBMEを視察し、USMLEのStep1、2及び3の資料を収集、実態を調査する。
結果と考察
①CATの試行検討(高林、田村)
CATは、20名の6学年の学生を対象に、2時間以内で100題終了時まで行なった。時間内に終了しなかった学生はなく、67%が紙のテストより大変だったと答え、コンピュータによるCAT形式では当然のことながら前問に戻れないこと、メモを記入できないこと、集中して疲労度が大きいことを問題点とした。長所としては、選択肢の選択が容易で画面がきれいである、ことなどが挙げられた。CATに対しては22%が不公平さを、22%が違和感を指摘した。全体としては63%が従来の紙のテストを希望した。まだ試行対象人数が少なく次年度も対象を増やして行なう。
②既出問題の分類とデータベース化(田村、神津、細田)
今年度の研究では、方法論の提示のみを目的としたため、約200問(1,000選択肢)のみの登録であり、実地での試験施行はできなかった。しかし、開発ソフトウェアはWebベースであるため、作成された問題の実地での評価はデータベースへ登録された選択肢数がある程度増加した時点で可能であり、次年度以降、既出問題全てにわたる分類・登録作業の継続を検討する。これにより登録された選択肢プールは20,000選択肢となり、この選択肢プールの精度維持についても具体的に作業を行ない、その作業量評価が可能となると予想される。選択肢を分類する項目(難易度のみならず、履修年限・時期等)を適切に選定することにより、医師国家試験のみならず、学生試験、専門医試験、さらには、看護師試験等への応用が可能であり、コンピュータ化試験にふさわしい方法論と考えられた。適切な数の選択肢プールの完成時点で、100問程度のコンピュータ化試験を実際に施行し、試験の実地データの収集も検討している。
③米国での実状(高林、福井、神津)
NBMEの主要メンバーとの会談で米国の実状を入手した。
1)問題のセキュリティ
少人数で行なうので監視の目が行き届いている。それぞれが離れたブースで行なうので互いに相談はできないし、また各人の問題の内容が異なる。室内はビデオで監視しており、入室時には余計な持ち込みなどは禁止している。
2)各大学のカリキュラム改革の自由度
ステップ1、ステップ2はいつでも受けられるため、どの教科をいつまでに終わらなくてはならないという制約がなくなる。
3)Simulationテスト
紙の試験(paper and pencil test)の判定能力を超えることが可能である。
紙では態度や意思決定能力を評価できない。コンピュータでなければできない試験ができる。
4)試行が容易で日々試験ができ、大がかりでなくてよく、コストがかからない。
Step3がどのように行なわれているかについては、米国内で300ヶ所のサイトがあり、一ヶ所で大体15題から45題のワークステーションを設けている。これがサーバーと接続しており、情報はサーバー内に収集された上で、USMLEのセンターに送られる。300ヶ所の試験会場となるサイトのほとんどはベンダーによって運営されている。各サイトは週6日オープンしており、いつ受けてもよいが、連続する2日を選んで受験する。受験者はStep3だけでなく、さまざまな試験が行なわれている。
5)試験問題の内容
試験問題は480問のMCQと9問のCase simulationからなる。試験の評価はまず各サイトから結果をISDNを介してダイヤルインでUSMLEセンターに送り、これを専門家が評価する。採点・評価に4週間を要する。
6)不合格者
実際に年間に300名の受験者が失敗する。彼らは60日後から再受験が可能で、これは年に3回まで許可される。受験生の1%は最終的に合格していない。
7)問題の作成
問題の作成には40名の医師、310名のNBMEの職員、400名のボランティアを容する。USMLEに関与するのはNBMEとFASBであるが、FASBは各州での医師免許の発行などに関与しており、問題作成の作業は全てNBMEが行なっている。
8)国際的な動向
NBMEはこのシステムをパナマ、中国に売り込むことに成功し、さらにフランスやアイルランドと交渉中である。
結論
①問題の選択配布と解答結果の解析を連動させるCAT法の検討。
国家試験に対するCAT、CBTの実施については受験者の慣れ、時代の変化に合わせて利用する時期が近いが、実施方法については更に検討を行なう必要があると考えられる。
②一般問題作成のためのデーターベース構築とその利用法の具体的検討。
医師国家試験のうち、一般問題に限定されてはいるが、今回開発した手法は国家試験問題プールの維持管理を効率的に行え、未試験問題の精度・難易度評価、選択肢数設定等の点において、完成問題のプールを維持するより、有効な方法論であると考えられた。
③米国の実状
米国のNBMEの現状を視察し、USMLEの各Stepの問題についての要項を入手し、わが国での利用について検討した。

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