電子診療録の医療連携への応用と実用化における問題点の検討(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201256A
報告書区分
総括
研究課題名
電子診療録の医療連携への応用と実用化における問題点の検討(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 昌範(国立国際医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 辰巳治之(札幌医科大学教授)
  • 三原一郎(三原皮膚科院長)
  • 根東義明(東北大学大学院医学研究科医学情報学教授)
  • 平山愛山(千葉県立東金病院院長)
  • 中山健児(中山クリニック院長、新宿区医師会医療情報委員会委員長)
  • 武田裕(大阪大学大学院医学系研究科生体情報医学教授)
  • 原量宏(香川医科大学付属病院医療情報部教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
システムを運用する際に、地域医療支援病院(かかりつけ医)の連係が重要であるが、円滑に運用するためには、運用組織作りや患者のプライバシー保護のためのガイドライン作成や安全なネットワーク技術を確立することが重要である。本研究により、各地域で運営される地域医療機関連係、統合型医療情報システムが、病院、診療所の連係による医療の分業、一般病院と長期療養型病院の連係による医療・福祉の一貫性の確保、2次医療圏におけるにおける患者カルテの共有化(1患者/1カルテ/1地域)をどのように実現しているかを調査し、かかりつけ医制度の普及、同一地域での医療の重複を省くことによる医療費の抑制、同時併用薬の相互作用による薬害の予防、1患者/1カルテ/1地域の実現による患者の利便性の向上、情報の一元化による災害時の医療行為の円滑化がいかにはかられたかが明白となる。また、地域での1患者1カルテを実現する方法の比較検討を行うことで、地域医療機関連係、統合型医療情報システムの標準モデルが策定可能となる。この標準モデルは、2次医療圏における患者カルテの共有化(1患者/1カルテ/1地域)を実現することを前提として、相互連係することで全国的な患者カルテの共有化を実現することになる。したがって、患者はどの病院にかかっても、自分の病歴を参照でき、全国規模で継続性のある適切な診療が受けられることになる。従来、異なる施設間での処方情報の交換が出来なかったために薬剤の相互作用による薬害が見られたが、これを予防できる。また、検査の重複を防止することで、被爆量の減少、採血量の減少、医療費の抑制効果が期待できる。また、ネットワークを通じて拠点病院等の一般の医師が専門医の意見、いわゆるセカンドオピニオンを聞くことも可能になる。東京都新宿区を加え、地域医療機関連係、統合型医療情報システムが全国各所で運営されているが、本研究で各地における特色を行かしたシステムから地域医療機関連係、統合型医療情報システムの標準モデル化を行う。
研究方法
本研究では、①患者のプライバシー保護のためのネットワークや情報技術や運用面を中心に検討するセキュリティ研究。②利用者の立場からの利便性の検討に分担される。
① 患者のプライバシー保護のためのセキュリティに関する検討:各フィールドの地域医療機関連係、統合型医療情報システムは、参加する地域医療支援病院や医師会診療所、病院の間の連携にさまざまな形態のネットワークを利用している。アプリケーション、ネットワーク、運用を含めた総合的な観点から、それぞれのフィールドの患者のプライバシー保護のためのセキュリティについて検討を加える。初年度は、各フィールドのセキュリティに関する比較を行い、地域ネットワークのセキュリティの標準形を検討した。次年度には、その結果を踏まえて各地域間の連係医のためのセキュリティの検討を行う。さらに、医療の情報化に普遍的に寄与できるインターネット上で、セキュリティを保持した情報基盤技術の確立を目指すものとする。これは、すでにNORTHのProjectで行っているIPv6の実検を、IPv4と相互乗り入れすることによりVPNの形成が可能か否かの実験を行う予定である。また、実際の運用面では、実地臨床に利用する際の汎用的な運用指針の作成を目指す。
②利用者の立場からの利便性や運用面での検討:①の検討は利用者ではなく、専門家集団による技術的及び運用面での研究を行うが、実際に利用する医療従事者たちから見た問題点や改善点を検討する必要がある。初年度では各地の現状を調査し、特に継続できているかどうかの検証を行った。次年度は、技術的及び運用面での検討を受けて、利用者の立場からの検討も行い、導入後に定着するための組織面での検討も加え、普及・啓蒙活動へと広げる。
(倫理面への配慮)
本事業では実証実験や立ち上げ途中のシステムを扱うが、全症例とも文章によるインフォームドコンセントを取って行い、実験にあたり個人が判別できるようなデータが一般の目に触れるようなことは原則としてないようにしている。また、全国規模の実証実験においては、医療情報ネットワークにおける患者基本情報などの個人情報の通信が含まれることから、これらの通信の取扱には十分注意し、外部への漏洩や途中改ざんなどが起こらないようにするためのシステム構築も研究課題の一つとして扱う。但し、セキュリティが十分に確保されていると判断できるまでのデータについては仮想的なデータを用いる。
結果と考察
すでに全国の地域での調査研究の段階で、延べ80機関から85名の参加協力を得た。その成果として、①データセンター化による経済メリットの検討、②ユーザサポートの重要性と体制作り、NPO化の検討、③ASP化を行うためのネットワークインフラの改善点、IPv6化の貢献の検討、④薬剤師や訪問看護師との連係を進める等が明らかになった。また、分担研究者担当地区の現状調査より、医師のみよりも、薬剤師や訪問看護師、保険師など、医師以外が参加している地域の活用が盛んに行われていることがわかった。
先進的IT活用による電子カルテを中心とした地域医療情報化に取り組んでいるフィールドにおいて・運用組織作り・患者のプライバシ保護のためのガイドライン作成・安全ネットワーク技術などの観点から追跡調査を行った。
各フィールドにおいてはそれぞれセキュリティ、プライバシ保護などの対策は取られているものの、そのレベルや運用方法は個別のポリシーで行われている。従って、今後フィールド感での診療情報交換、データ交換、相互利用を進めて行くためにはさらなる検討が必要になることが分かった。2次医療圏における患者カルテの共有化(1患者/1カルテ/1地域)を実現することを前提として、相互連係を行う環境を構築するためにも、初年度の研究においてこの問題点のについて検討を進め、実証を行った。本研究により薬剤師や訪問看護師、保険師など医師以外が参加している地域での活用が盛んであったことから、継続運用や費用対効果の点で参加職種の拡大が有効であることが示唆された。したがって、今後の活用として全国的な医療機関連係のモデル模索を行い患者がどの病院にかかっても、自分の病歴を参照でき、全国規模で継続性のある適切な診療が受けられるようなインフラの構築を目指す。
結論
本研究では2次医療圏における患者カルテの共有化(1患者/1カルテ/1地域)を実現するための ①患者のプライバシー保護のためのネットワークや情報技術や運用面を中心に検討するためのポイントを明らかにし、②利用者の立場からの利便性を高めるためにも職種を広めた連係が重要なことがわかり、今後の研究を重ねることにより継続運用や、費用対効果の改善に有効な研究である。

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