脱臭機、空気清浄機、コピー機からのオゾン発生機構に関する研究

文献情報

文献番号
200201121A
報告書区分
総括
研究課題名
脱臭機、空気清浄機、コピー機からのオゾン発生機構に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
野﨑 淳夫(東北文化学園大学)
研究分担者(所属機関)
  • 吉野 博(東北大学)
  • 清澤 裕美(東京美装興業株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度は以下の三点を主たる研究目的とした。
①事務機器からの化学物質の発生に関して
オゾンのみならずVOCの機器発生量を求めるための理論的検討を行い、事務機器(コピー機、レーザプリンタ、インクジェットプリンタ等)からの当該物質発生特性及び発生量を実験的に明らかにすること、また、これらの機器を有する室内におけるVOC濃度予測に関する理論的検討を行い、室内濃度予測式の提案を行うことを目的とした。
②オゾン利用品におけるオゾン発生とVOC除去に関して
1)オゾン利用品(脱臭機及び空気清浄機)からのオゾン発生量、2)オゾン利用機器による室内化学物質(VOC)の低減効果、3)オゾン利用機器における二次生成物(本研究ではホルムアルデヒド等のアルデヒド類をその対象とした。)を明らかにすることを目的とした。
③オゾン利用技術に関する国内外の動向について
オゾンによる空気汚染問題に関する文献調査を行い、オゾン利用技術の現状や今後の動向を調査した。
研究方法
①事務機器からの化学物質の発生に関して
平成12、13年度においては、温度、湿度、換気量の制御できる環境制御チェンバーを作製し、各種オゾン発生源の発生量・特性を明らかにし、同時に発生源を有する室内のオゾン濃度予測法を確立した。
本年度においては、前年度に得られた知見を基に、更なる実験的研究を展開し、各種発生源からのオゾンとVOCの発生特性を明らかにするものである。また、室内濃度構成メカニズムについての検討を行い、VOC発生機器を有する室内のVOC濃度予測式を提案した。
②オゾン利用品におけるオゾン発生とVOC除去に関して
平成12年度においては、1)各種オゾン発生源の発生量を定量的に把握し、次に、2)脱臭装置における室内臭気物質の濃度低減効果とその限界を実験的に明らかにした。
平成13年度においては、1)オゾン利用脱臭機について、その有効性を検討するため、環境制御チェンバーにVOCガスを導入し、機器運転に伴うチェンバー内濃度を測定することにより、その除去特性を明らかにした。
本年度においては、これまでの研究で得られた知見を基に、環境制御チェンバーと固相吸着GC/MS法を用いた実験的研究を行い、より詳細な機器のVOC除去特性、および二次生成物の有無を確認するものである。
③オゾン利用技術に関する国内外の動向について
文献調査をもって行った。海外の室内空気質研究における専門的な雑誌(「Indoor Air」、「Indoor Built Environment」)を中心に、オゾンによる室内空気汚染と室内化学反応などに関する文献を翻訳・整理して、その動向等を調査した。
結果と考察
結果
①事務機器からの化学物質の発生に関して
事務機器からのVOC発生量を求めるために、気積4.98m3の環境制御チェンバーを用いて実験を行った。事務機器はコピー機とレーザプリンタを対象とした。
コピー機に関しては、環境制御チェンバーで、n(1/h)=0.50の換気条件のもと、PC-1は運転後60分、PC-2は運転後約100分でほぼVOCが定常濃度に達した。各機器のVOC定常濃度は、PC-1で約31000(μg/m3)、PC-2で約10500(μg/m3)である。機器のVOC発生量は、1枚印刷あたりPC-1で48.4(μg/枚)、PC-2で15.1(μg/枚)である。オゾン濃度に関しては、両機種共に運転後約50分で定常濃度に達した。
インクジェットプリンタに関しては、n(1/h)=0.04の換気条件のもと、運転後約160分でほぼVOCが定常濃度に達した。このときのVOC定常濃度は約1500(μg/m3)である。機器のVOC発生量は1枚印刷あたり0.277(μg/枚)である。オゾンに関しては、前年度の報告と同様に機器発生は確認できなかった。
レーザプリンタに関しては、n(1/h)=0.04の換気条件のもと、運転後約60分でほぼVOCが定常濃度に達した。このときのVOC定常濃度は約3300(μg/m3)である。機器のVOC発生量は0.174(μg/枚)である。
②オゾン利用品におけるオゾン発生とVOC除去に関して
オゾン触媒式空気清浄機と脱臭機を実験対象とし、各機器の運転に伴うチェンバー内のオゾンとVOC濃度を測定した。
結果として、オゾン触媒式空気清浄機では、オゾンの室内への放出は確認できなかったが、機器の比較的大きなVOC除去効果が認められた。すなわち、機器運転後30分までは、大きなVOC濃度減衰が示され、機器運転後15分で平均して約5000(μg/m3)の濃度減衰が見られた。
ただし、これらの現象は、機器オゾン発生部の後流側に設置されている、触媒フィルターによるものと考えられる。
脱臭機では、室内へ大量のオゾンの放出が確認されたが、VOC濃度の顕著な変化は確認できなかった。オゾン利用脱臭機には、大きなVOC除去効果は期待できないものと考えられる。
オゾン利用機器の運転に伴う二次生成物の検証を行った。オゾン触媒式空気清浄機の運転に伴い、機器運転15分後からアルデヒド濃度の顕著な上昇が見られたケースがあった。オゾン発生量の大きなオゾン利用脱臭機では、アルデヒド類(ホルムアルデヒドとアセトアルデヒド)の生成が顕著であった。
生成オゾンと室内VOCが反応したことでTVOC濃度が減少したものの、アルデヒド類の発生現象が確認された。
③オゾン利用技術に関する国内外の動向等
室内オゾン濃度が高くなるにつれ、他の汚染物質との酸化反応が進行しやすくなる。テルペンや他のアルカンとオゾンの反応速度が十分に速いため、それらの物質濃度が高いほどオゾンとの反応が生じる。気相で生じる化学反応は、換気量が少ないほど生じやすいが、これは化合物の反応が、通常の換気により除去されるよりも長い時間が要するからである。湿度が高いと加水分解反応が促進され、温度が高いと室内における大部分の化学反応発生率が増加する。また、室内表面が汚れているほど、室内の有効面積が増え、ある種の不均一反応が生じる。
室内化学反応は人間の汚染物質への曝露に関与する(Weschler, 2002)。反応生成物の室内濃度は屋外よりもはるかに高い状態にある。また、室内環境におけるそのような化学反応は、寿命が短く、反応性の高い化合物の主要な発生原因である。室内化学反応による生成物が、健康と快適さに影響を及ぼすことを示す報告は非常に多いが、これらの影響の程度と発生頻度については未だ未解明な点が残されている。
結論
① 環境制御チェンバー内で事務機器運転に伴うVOC濃度の挙動を明らかにできた。発生するVOCの定常濃度を実験的に再現することができた。これにより、前年度の研究成果を加えると事務機器のオゾン発生量とVOC発生量が明らかになった。また、事務機器を有する室内におけるVOC濃度予測に関する理論的検討を行い、高精度の室内濃度予測式が提案できた。
② オゾン利用空気清浄機と脱臭機のVOC除去特性が、機器非運転時と機器運転時のTVOC濃度減衰勾配の比較により明らかになった。また、機器運転に伴う二次生成物の発生が確認された。すなわち、アルデヒド類の発生に関する基礎的データが得られた。
③ 室内環境中のオゾンに関する研究の動向としては、オゾンの強酸化作用を用いて、室内の多くの揮発性有機化合物などの汚染物質と反応させ、それらの濃度を低減させる研究と、オゾンによる室内空気の殺菌効果に関する研究の大きな2つの流れが認められた。

公開日・更新日

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