総合的な地域保健サービスの提供体制に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201111A
報告書区分
総括
研究課題名
総合的な地域保健サービスの提供体制に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
北川 定謙(埼玉県立大学)
研究分担者(所属機関)
  • 正宗弘道(埼玉県狭山保健所)
  • 雑賀博子(和歌山県高野口保健所)
  • 岩間真人(静岡県中部健康福祉センター)
  • 仲宗根正(沖縄県北部福祉保健所)
  • 宇治光治(福岡県嘉穂保健所)
  • 岡田尚久(島根県出雲保健所)
  • 熊谷仁人(兵庫県和田山保健所)
  • 惠上博文(山口県柳井環境保健所)
  • 圓山誓信(大阪府吹田保健所)
  • 藤田稔(熊本県天草地域振興局保健福祉環境部)
  • 藤田信(静岡県志太榛原健康福祉センター)
  • 内野英幸(長野県木曽保健所)
  • 平野かよ子(国立公衆衛生院公衆衛生看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
31,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、これらの具体的な問題点を分析整理し、各保健所等における事業推進及び人的資源の配置等のための参考に資することを目的としている。
研究方法
「地域保健モデル事業」(下記(1)~(12))では、12府県の分担研究者(主として保健所長)が、それぞれのモデル地域(原則として医療圏をベース)を選定し、地域保健に関する特定の課題を定め、その解決のための体制を構築し、具体的に事業を実施し、問題点を明らかにするものである。また、「保健婦の活動及び配置の在り方」(下記(13))では、地域保健対策を担う人的資源の中で、特に保健婦・士について、平成14年度に市町村にサービスの一部が委譲される予定である精神保健福祉対策に焦点をあて、市町村と保健所の役割と連携の方策について検討し、具体的な保健婦・士の活動と配置の在り方を明らかにするものである。
結果と考察
本研究は、具体的なシステムづくりを指向しており、各分担研究の概要については以下のとおりである。
(1)小児救急医療確保のための管内各市及び民間医療施設を包括する連携システムに関するモデル事業:小児科の医療資源が極めて少ない都市型医療圏をモデルとして、核となる二次救急医療機能確保の方法を確立し、実際に整備を行い、より有効な小児科救急医療の整備を行うモデルを確立した。詳細で正確な地域医療情報は関係者を説得する上で役立った。病院の機能分担と地域開業医による当直医確保は、極めて限られた医療資源の効果的活用を可能にした。
(2)小児難病の保健・医療・福祉の総合的ケアシステムの構築を目指したモデル事業:小児難病に対する保健・医療・福祉を含めた総合的なサービスを目指し、小児難病の地域ケアシステムの構築を図った。ボランティア活動への協力についての調査では、過去に小児慢性特定疾患医療を受給した子どもの保護者より現在受給中の子どもの保護者の方が回答率が高く、協力希望者も多かった。現在受給中の子どもの保護者は、今、療養の真っ只中にあり支援を必要とする厳しい状況にあることからこそボランティア活動に対する関心が高く、協力的な回答が多かったと思われる。家族交流会や研修事業等については継続していくことが大きな支援の力となると思われた。
(3)災害時における難病患者支援ネットワーク整備モデル事業:災害時における難病患者支援のために、患者・家族の会、消防、警察、保健所、市町村が一体となったネットワークを構築し、災害時における難病患者支援マニュアルの作成を行った。県健康福祉センター(保健所)がリーダーシップを取り平常時から保健、医療、福祉、難病連、防災関係者が情報交換をしておく事は非常に重要である。災害時における難病患者視線のためには、県健康福祉センター(保健所)がリーダーシップを取り地域難病対策のコーディネータとして活動するべきである。この研究事業で当センター地域難病ケアシステムを構築しリーダーシップを発揮するとともに、調整役としての存在を医師会・病院等の医療関係者、自主防災会等の防災関係者、保健委員等地域住民に印象づけた事は非常に大きい。
(4)障害児の総合的な保健・福祉サービスの実態と今後の在り方に関するモデル事業:地域療育のあり方を関係者や当事者(保護者)を含めて検討し、新しい療育システムづくりを行うために、調査事業・普及啓発事業・地域連携事業を展開した。乳幼児健診の事後管理や障害児(者)に対する発達支援、生活支援は市町村が実施主体であるが、離島や小規模町村において独自に専門的な相談・指導体制を作ることは困難である。また療育事業では医療的な訓練の要素とともに家庭生活や保育所、学校における日常活動を通した支援が重要である。これらの課題に対し二次保健医療(福祉)圏を活動範囲とする保健所と生活支援センターが連携し、障害児(者)と日常的に関わる市町村の保健師や保育士、福祉担当者等地域の関係者に対する支援体制をつくることによって各市町村における療育システムが築かれた。また、対象者の年齢に関わらず柔軟に対応できる生活支援事業の利点が発揮されることによって、従来世代によってとぎれがちであった支援が乳幼児期、学齢期、成人期の各ライフステージにおいて継続したサービスを受けられるようになった。さらに、支援事業を介した保健・医療・福祉、保育・教育・就労支援の分野をまたがる連携が広がった。
(5)心身障害児の療育システムに関するモデル事業:心身障害児に対する療育の拠点がない管内における療育システムのネットワークを構築し、その評価と定着化を図った。研修会参加状況をみると、初年度の意識調査で表れていたように、研修会に対する需要は大きかったと推測できる。このことは、関係機関の職員が日々、子ども達の対応に追われ苦慮していることや専門的な研修を受講するチャンスが少ないことの現れではないかと考える。3年次の研修会アンケート結果でも、地域療育の困難な理由は自分自身の知識不足と答えた人が多く、このことからも研修の需要の大きさが伺える。また、相談先が増えたということは、関係機関に対して情報の発信を行ってきた結果、連携が少しずつ広がっているのではないかと考える。さらに関係者が現場に赴いてケースバイケースで対応する事例検討会は、療育に直接携わる人たちにとって、非常に有益であったと思われる。しかし、必要するケースの数とスタッフのマンパワーとの関係上、実施回数が限られてくる。今後も療育に携わる関係者への専門的な研修とともに、困ったときに相談できる体制づくり、情報の提供を行っていくことで、地域での療育支援体制が整っていくと考えられる。また一方では、研修会開催、報告書、療育情報誌について必要な情報が伝わりにくい現状がわかった。各研修会は、公文書だけでなく、チラシなどを作成し配布したが、情報を伝える手段の限界を痛感した。しかし、療育情報誌のアンケート結果では、肯定的な意見が多く、情報がきちんと伝われば対象者のニーズに応える事が出来ると思われる。また、「子育て体験記」では、管内の親の会を中心とした家族の協力が得られたことで、保護者や関係者が待望していたものに近いものができあがった。このような家族との協力関係は、今後の療育を支援していく上で大きな力となると考えられる。
(6)長期入院患者(社会的入院)の在宅支援推進モデル事業:精神障害者対策は入院中心ケアから地域社会でのケアという流れになっているが、長期入院患者の割合は減少しておらず、社会的入院患者を在宅に帰するために、地域での在宅支援ネットワークの構築を図った。実態及び意向調査からは、①長期入院者の半数以上が退院を希望、②半数以上が帰ることが出来る自宅がある、③退院希望者の半数以上が退院先として「自宅等」を希望、④病院としては退院可能と判断されたのは半数であり、なおかつ退院先としては約2/3が「老人福祉施設等」を想定していた。上記より、本人希望と医療機関の判断のかい離は未だ大きいことが確認できた。また、精神障害者社会復帰施設以外にも、老人福祉施設との連携が必要となっていることを確認した。施設の新規利用者を対象とした調査からは、①施設利用につながった場合において、家族、特に親の存在が大きいと考えられる。②現在、施設利用者は入院期間が短いあるいは入院の既往のない場合が多く、長期入院からの施設利用については少なかった。③施設サービス利用後は症状の再燃はあるものの短期間の入院で回復していることが確認された。
(7)広域的障害児(者)ケアシステムの構築:障害児(者)のケア施設等の少ない西南但馬地域における新たなケア施設等の設置とケア資源の連携を目的とし、広域的な心身障害児ケアシステム(小児リハビリテーションシステム)及び精神障害者社会復帰支援システムの稼働の試みを行った。①心身障害児地域ケアシステム:平成14年度に障害児通園事業施設が開設された。その開設前には療育施設整備委員会、ニーズ調査、療育内容検討委員会、療育人材の育成といった各種の事業が大きな役割を占めた。開設後は障害児通園事業施設の運営、心身障害児療育連絡会が中心になりケアシステムとして稼働した。障害児通園事業施設は地域ケアの場の一つであり今後はその運営、療育の充実が重要である。また関係機関との連携、通園児への支援を行ううえで心身障害児療育連絡会も重要な役割を占めると考えられる。そして施設運営、療育連絡会、療育集団指導事業でのそれぞれの役割を通して、継続してネットワークに参加することが健康福祉事務所には重要と考えられた。②精神障害者社会復帰支援システム:3年間で作業所の運営主体が決定し15年度の法内施設化が予定されている。精神障害者の社会復帰支援の課題や取り組み方を明らかにして、管内の関係者で取り組んでいけるような合意形成をするためには、ニーズ調査、精神障害者社会復帰支援ネットワーク会議が大きな役割を占めた。しかし社会復帰を支えるためには、当面作業所の安定運営のための活動が中心であり、まだ社会復帰支援システムが充分機能しているとはいいがたい。そのためには今後も精神障害者社会復帰施設整備検討委員会を中心としたハード面の充実と、精神保健福祉従事者研修会や啓発事業を中心としたソフト面からの支援が重要と考えられる。
(8)地域リハビリテーション連携システムの整備支援モデル事業:在宅医療・介護の推進及び医療・介護保険の安定的な運営に資するため、全国一高齢化町を抱える管内において、地域リハビリサービスの連携システム整備のため、普及啓発(研修会等)を行った。①連携システムのあり方:利用者が痴呆・独居等である場合の町保健師との地域連携、難病、精神等である場合の保健所と保健師との専門連携、さらに訪問介護員等との同訪問に加え、保健所の企画・調整機能の役割を明らかにした連携システムを提言した。②訪問リハビリ連携促進事業の提言:訪問リハビリサービスの奏功した事例では、同行訪問を定例化していることが大半であったことから、訪問リハビリの補完及び介護リハビリの質の向上を図るため、理学療法士・作業療法士と訪問介護員、訪問看護師等との同行訪問のシステムづくりの整備するため、訪問リハビリ連携促進事業を提言した。③情報連携課題の継続検討訪問リハビリサービスに関する効果的・効率的な情報連携システムのあり方を検討してきたが、システムのメッリットの顕在化、インターネットを利用できる職員の少ないことシステム帳票とサービス管理台帳との二重入力の負担、システムの運営機関の不十分な体制等が明らかになったので、来年度以降もそのあり方及び対応について継続検討することにした。④地域リハビリテーション支援体制整備推進事業の着手:本事業の成果の定着及び課題の対応を図っていくとともに、地域リハビリテーションシステムにおける他のリハビリテーションのシステム化に反映させるため、本年度から地域リハビリテーション支援体制整備推進事業に着手している。
(9)保健所の企画調整機能の評価に関するモデル事業 ~地域づくりと地域リハビリテーションシステムの構築を目指して~: 健康づくり施策や地域リハビリテーションシステム事業等を通して、保健所における企画調整機能の評価を行った。本研究から今後保健所の企画調整機能を強化するには、次のような点に取り組むべきである。①収集した情報を、保健所としての戦略に結びつける②広域調整機能を強化する。③保健所の予算の仕組みを改善する。④評価項目の見直しを行い、評価表を充実する必要がある。
(10)痴呆対策を主眼としたサービスの提供体制に関するモデル事業:県内でも最も高齢化が著しい地域おいて、痴呆予防のための疫学研究と事業の効果測定を通して、痴呆に対する総合的なサービスの提供体制の構築を図るための管内町村への普及システム構築のために痴呆予防事業のモデル市町への主体的実施を行った。痴呆予防・健康づくりに関するアンケートの調査結果から、健康意識や痴呆予防意識の高い人をいかにして実践行動につなげていくかが課題として残った。特に平成12年度と比較して、健康づくりの実践については、40代から60代、痴呆予防の実践については50代から70代の人の割合が減少していることから、若い世代からの健康づくり活動と中年期を対象にした痴呆予防活動が必要であり、特に住民の実践活動につながるような働きかけの方法が検討課題である。また、痴呆性高齢者数の脳血管疾患や糖尿病等痴呆性高齢者の要因疾患と言われている疾患の治療状況等と今回の調査結果をもとに、各市町での痴呆対策の取り組みを推進していく必要がある。天草元気島計画の事業を優先的にモデル3町で実施してきたことにより、住民の痴呆予防に関する知識や実践行動の割合は他市町より高かったことから計画的に事業を進めてきた効果はあったのではないかと思われる。現在、各市町が実施している健康づくり事業や介護予防事業が痴呆対策の一貫として市町の保健計画等の中に体系的に位置付けられる必要がある。天草元気島計画では、痴呆性高齢者の介護対策として痴呆性高齢者の早期対応の理解と支援体制づくりをめざしてきたがどちらも不十分であった。痴呆性高齢者の早期対応のためには、家族や身近な人がまず初期の症状を認識し、適切な行動が取れるような教育の機会や情報提供の方法の検討が今後も必要である。また、痴呆性高齢者の支援体制を構築していくためには、情報を一元化するための痴呆の総合相談窓口の設置や、関係機関が情報を早めにキャッチし共有化できる場を設置するなどの検討も必要である。
(11)児童・生徒の防煙対策の焦点を明らかにするモデル事業:管内の学校と共催し、「ライフスキル形成を視野に入れた防煙教育」の実施、並びに、児童・生徒に対するアンケート調査を行い本研究事業の評価を行った。平成12年度調査と今年度調査を比較してみると、喫煙経験率、現在の喫煙状況は、調査実施校が同一で、被験者のすべてが同一ではないが、いずれも減少傾向があった。研究協力校は、全小学校・中学校103校の内19校であるが、前年度の「ライフ・スキル教育研修会」は、数校を除いて所属職員が受講しており、統一した指導書と教材は協力校に限られているものの平成12年度の管内の小・中学校に関する喫煙行動の実態調査結果の情報提供とあいまって、全体的に防煙教育への取り組み意欲と考え方のレベルの上がっていることが考えられた。また、禁煙外来を児童・生徒が日中に受診することは目立つのではないかと考え、安心して受診できる条件を探ったところ、小学生と中学生に共通した結果として、受診時の付き添いは「一人で」と「父母」が比較的多く、診察医は顔を見知っているか、かかりつけの近くの医師が最も多く、受診希望日時は日曜・祝日と夏休みなどの長期休業時が比較的多かった。また、外来受診時の条件として、「学校名が知られないこと」「診察室は他と別にすること」を上げる者が多かった。さらに、喫煙と禁煙の保護者への告知が可能と回答した者の割合は、小学生6割超、中学生では4割超であった。
(12)思春期の望まぬ妊娠・性感染症予防のためのモデルプログラム開発と評価に関するモデル事業:21世紀を担う若者が思春期の時期に望まぬ妊娠・性感染症を予防するための行動に繋がるような教育のあり方を考えるため、関係者間のネットワーク強化と性教育・予防教育技法の開発を行った。また、性行動リスク予防教育プログラムを評価し、普遍的なモデルを確立した。①有効な予防教育:性教育は、近年、若者へのエイズ・性感染症の流行や10代の望まない妊娠、人工妊娠中絶の急増など探刻な事態を受けて、モラルや人間教育の視点だけではなく健康・病気との関連で保健の立場から取り組まれるようになってきた。つまり、性教育の中に病気の予防から健康増進、さらにはリハビリテーションの概念を取り入れた公衆衛生的な性教育の導入である。そして予防教育としての性教育を評価するために様々なプログラムが立案、実施され最終的な健康指標であるリスク行動の低減につながったか、効果判定(公衆衛生的な成果の根拠)も求められるようになっている。したがって、性教育の評価は、知識の習得度から判定するだけではなく、実際の行動を変えることが出来たかどうかに重きを置いた行勒科学的な評価に基づいてなされるようになってきた。人の行動を変えるには社会文化的環境(相手との人間関係・力関係、コミュニティの規範、仲間からのプレッシャーなど)や構造的環境(政治、経済等)に強く影響を受けているので、人の行動変容を助ける社会環境づくりが同時に推進されねばならない。わが国でも木原や本研究でも高校生に予防介入の評価を試みているが短中期に見ても明らかな効果判定は困難であった。比較的効果を霞めている高校生1年生女子に対して、性行動が急激な変化を来す夏休み直前に予防教育の介入を行うなど、対象と時期を絞った対策も必要である。②地域モデルとその評価:地域で思春期のセクシャル・ヘルス(性と健康)に取り組む場合には、関係者・関係機関の共通認識と役割分担が不可欠である。また、思春期の若者のニーズを受け止めた支援が求められる。このためには、地域でリーダーシップを発揮しコーディネーター役を果たす機関・キーパーソンが明確化されておくことが肝心である。この役割は、保健所、教育機関、市町村などの各自治体、自助グループなどが地域の実情に応じて想定される。掲げる理念や共通認識は、セクシャル・ヘルスに限定したテーマにするか、広く思春期保健の中にセクシャル・ヘルスを組み入れるか、さらには人間教育として取り上げるか、いろいろと考えられる。もっとも難しいのはこれらの取り組みの評価であろう。対象が主に学校の中の子どもたちであり、内容が性に関することでもあり、実態調査を行う際にも様々な障壁が存在する。加えて、評価の仕方も一様ではない。個人や特定集団の行動変容を目指した効果的プログラムの開発と評価だけでも試行錯誤の連続であろう。さらには社会レベルで対策を評価することが求められる。評価に関しては質的かつ量的な評価を行うことにより事業モデルのレベルアップと継続性が可能となる。③性の公衆衛生と思春期保健:健康(ヘルス)の中に性を取り入れて健康増進を推進する動きが出てきた。思春期保健のテーマとしては薬物濫用、喫煙、精神保健などが挙げられるが、これらのテーマは思春期の性と相互に関連しあっている。地域で思春期保健としてセクシャル・ヘルスを推進していく拠点としては、地域保健の立場から市町村や保健所が最適であろう。今日までわが国では若者の性と健康を守る公的責任の具体的戦略は極めて少なかった。その要因は思春期の性に対する認識や理解のなさでもあり、性に対する価値観の違いや多様性にあった。したがって、思春期の性に家庭や学校、行政機関、医療機関などを巻き込んで進めていくには性の公衆衛生の専門家の育成が強く望まれる。
(13)これからの地域保健福祉対策に従事する保健師の活動の在り方に関する研究:地域精神保健福祉活動における保健所と市町村との連携の実態と、都道府県の今後の地域精神保健活動の方針について明らかにするために調査・検討を行った。精神保健福祉法の改正に伴う、地域精神保健福祉活動における保健所と市町村との連携の実態と、都道府県の今後の地域精神保健活動の方針について明らかにするために、保健所と都道府県の精神保健福祉主管課を対象とした質問紙調査を行った。その結果、以下の点が明らかとなった。1.保健所の市町村支援及び保健所との共同事業は管内の市数の多い都市型の方が比較的多く実施している。2.保健所が主催する連携会議はほとんどの保健所で行われ、地域精神保健福祉対策に反映されている。3市町村支援の判断基準としては、市町村の活動の充実度とマンパワーが重視されている。4.保健所は居宅支援サービスの充実やネットワーク構築に働きかけを行い、従来の保健所業務を市町村主体で実施する方針でいるところが多く、都道府県の方針としても、精神保健に関する相談や事業も市町村で実施する考えが主流である。5.都道府県は平成14年度から精神保健福祉センターの職員数を増員し、本庁と保健所の担当職員を減員し、今後、統合失調症に関連する事業実施は市町村とし、とじこもりや虐待等の業務は保健所で実施すると考えており、少数であるが「デイケア」や「ソーシャルクラブ」は民間への移行も考慮している。6.精神障害者対策は他の障害者対策と区別する必要があると半数の都道府県では考えられている。
結論
本年度で最終年度となる本研究事業は、具体的な事業展開とその評価を加え、分担研究者ごとに事業を進めるとともに、各研究者の情報共有化を図った。また、研究班会議を必要に応じて開くことにより総合的な地域保健のモデル事業として発展をさせていく計画である。

公開日・更新日

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