保健サービスを利用した生活習慣介入による2型糖尿病の予防に関する研究

文献情報

文献番号
200201094A
報告書区分
総括
研究課題名
保健サービスを利用した生活習慣介入による2型糖尿病の予防に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
葛谷 英嗣(国立京都病院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤茂秋(神戸大学医学部衛生学)
  • 鎌江伊三夫(神戸大学都市安全研究センター)
  • 佐藤祐造(名古屋大学総合保健体育科学センター)
  • 佐藤寿一(名古屋大学医学部付属病院総合診療部)
  • 富永真琴(山形大学医学部臨床検査医学)
  • 河津捷二(埼玉医科大学総合医療センター)
  • 辻井悟(天理よろづ相談所病院)
  • 吉田俊秀(京都府立医科大学第1内科)
  • 清原裕(九州大学医学部第2内科)
  • 津下一代(愛知県総合保健センター)
  • 坂根直樹(神戸大学医学部衛生学)
  • 臼井健(国立京都病院臨床研究部)
  • 小谷和彦(鳥取大学医学部臨床検査医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
23,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
耐糖能異常者(IGT)を対象に生活習慣への介入が2型糖尿病の発症予防に及ぼす影響について検証する多施設共同大規模介入研究である。(1) 生活習慣を改善することにより2型糖尿病を予防できるのか、(2) 効果的な介入方法は何か、を明かにし、さらに、(3) 糖尿病一次予防のための保健サービスの在り方と体制づくりについて研究することを目的とする。
研究方法
「協力施設」全国の保健所、市町村保健センター、事業所、人間ドックを有する医療機関から協力施設を募集する。「対象者」健診で見い出されたIGTで30歳以上60歳未満の者を対象とする。対象者は原則として個人ごとの無作為割り付けによって強力介入群, 普通介入群(対照群)の2群に分ける。「研修会」介入方法の標準化、介入担当の保健従事者のトレーニングのため、全国および地区レベルで研修会やワークショップを開く。「介入プロトコール」①適正な体重(BMI 22)の達成(過体重・肥満者にあっては7%以上の減量)、②運動習慣の獲得、および③それらを継続させることを目標とする。motivationを高め維持するために、強力介入群にたいしては、保健従事者が研究班で作成したマニュアルと教材を用いて、集団指導のかたちでおこない、その後個別あるいは小グループカウンセリングを定期的に行う。最初の6ヵ月間は強力介入期として、この間に集約的に目標を達成させ、後の期間は維時期と位置づける。普通介入群には糖尿病についての一般的な知識及び運動や食事について留意すべき事を集団指導により説明する。観察期間は6年とし、エンドポイントの主評価項目は糖尿病の発症(GTTで判定)とする。検査はデータ精度管理が水準以上である同一検査機関での集中測定とする。「研究組織」精度の高いデータを確保するために、対象者の登録、強力介入群・普通介入群への割り付け、検査・調査記録表の記載点検等のデータ管理および分析は管理センターで行う。
結果と考察
結果=平成14年度の研究結果の概要は以下のごとくである。
1) 協力施設数と対象者数
平成15年1月現在における協力施設数は32施設で、登録対象者(耐糖能異常者、IGT)数は302名に達した。対象者は中央の管理センターで無作為に、強力介入群(151名)と普通介入群(151名)に割付られた。
2) 介入効果の中間解析
脱落率:平成14年11月の時点で強力介入群の33名、普通介入群の28名が脱落例となった。自己都合による脱落が最も多く、強力介入群で19名、普通介入群で14名あった。その他、施設の脱落による脱落が、それぞれ、8名と5名、ベースラインにおいて除外規定に該当(既に運動を十分している等)したため脱落とされたものが3名と6名あった。
身体計測値の変化:2年目を経過した182名(強力介入群86名、普通介入群96名)の中間解析では、強力介入群では体重(1.4kgの減、2.2%の減に相当)、BMI(0.6の減)、体脂肪率(0.7%の減)、ウエスト(1.2cmの減)ともベースラインに比し有意に減少した。普通介入群では、体重(0.9kgの減、1.4%の減に相当)、BMI(0.3の減)とも軽度に減少したが、体脂肪率、ウエストの変化は有意でなかった。
3年間における糖尿病への移行:ブドウ糖負荷試験は開始時、6ヶ月後、1年後、2年後、3 年後に行い、2回続けて糖尿病型を呈したものを糖尿病発症例とした。3年を経過した112名についてみると、59名の普通介入群のうち11名が糖尿病を発症したのに対し、53名の強力介入群で糖尿病を発症したのは1名であった。
3) 平成13年度研修会の開催
平成14年11月22日- 23日にわたって、愛知健康プラザで、介入担当者のスキルの向上と情報交換を目的に研修会を開催した。24の協力施設から34名(保健師24名、管理栄養士6名、看護師2名、運動指導士1名、臨床検査技師1名)が参加した。内容はグループワーク(運動指導、個人面談、食事指導)を中心とした。その他に、①本研究の進捗状況、②米国糖尿病予防研究(DPP)におけるライフスタイル介入の実際、③遺伝子を調べてなにがわかるの? ④糖尿病診療苦労ばなし、⑤保健指導者のQOL等の講演を行った。
4) 保健指導者を対象とした調査
保健指導者の指導能力や本研究に対するモチベーションのちがいによって研究成果が左右される可能性がある。そこで協力施設の保健指導者を対象にアンケートによる本研究に対する意識調査、各施設の指導体制についての調査を行った。結果については現在解析中である。
5) 社会経済的評価研究
今回のランダム化介入試験の結果(強化介入群、普通介入群で3年目のGTTで糖尿病型を呈したものの割合)に基づき、糖尿病予防の社会経済的評価を費用効果分析と費用効用分析を用いて行った。またハイリスク者(IGT)に対する保健サービスとしての運動・食事等の生活習慣への介入が対象者の生活の質に与える影響を、効用値測定に基づく評価により検討した。
6) DNAの採取と保管
インフォームドコンセントを得て、2型糖尿病に関連した疾患感受性遺伝子の検索のためのDNAを保管する。インフォームドコンセントは介入研究参加のためと遺伝子検索のための二段階でとる。遺伝子検索のためのサンプルは無名化し、事務局でのみ名前との対応が可能とする。このことについては主任研究者の所属機関における倫理委員会において承認を得た。平成14年度の研修会で協力施設の保健指導者にその目的・意義を十分に説明し、対象者への説明、同意の取得、検体の採取について協力を依頼した。検体は個人情報を特定不可能なかたちに匿名化してDNAを抽出、国立京都病院臨床研究部に保管する。
考察=今回は2年目を経過した182名(強力介入群86名、普通介入群96名)の身体計測値の変化、3年目を経過した112名(強力介入群53名、普通介入群59名)について糖尿病発症した割合の中間解析をおこなった。中間解析では強力介入群において、体重(ベースラインより2.2%の減少)、体脂肪率、ウエストの減少を認めた。また糖尿病への移行が普通介入群よりすくないことが示された。この点は今後も引き続いて追跡し確認していく。また一次予防には、運動がよいのか、体重減少がより重要であるのか、何が効果に結びついているかも明らかにしていく。
結論
介入開始3年目の成績をまとめた

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