地理情報システムを用いた水道原水の保全に関する研究

文献情報

文献番号
200201080A
報告書区分
総括
研究課題名
地理情報システムを用いた水道原水の保全に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
国包 章一(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 津野 洋(京都大学大学院工学研究科)
  • 森 一晃(国立保健医療科学院)
  • 伊藤 雅喜(国立保健医療科学院)
  • 秋葉 道宏(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水域における水利用の中でも水道水源としての利用は最も重要なものの一つと位置付けられている。しかしながら、水質事故や異臭味の発生に見られるような水道原水汚染の進行が危惧されている。水域の管理手法については、環境分野において、閉鎖性水域の流域の総合管理を目的とした、地理情報システム(GIS)を利用した研究が行われてきている。GISは、地図上に多種多様な位置情報や空間情報を付加・統合することができるので、流域環境を綜合的に把握し、水道原水保全のため活用することが期待される。このため、本研究では、地理情報システムを水道原水保全のための流域の水環境情報の把握や原水保全計画に活用するための技術上の課題を整理するとともに、特定の水域環境について、ケース・スタディを実施し、水道原水保全施策支援のための手法を検討する。
研究方法
以下の1)から3)までのテーマをそれぞれ3ヶ年計画で実行する。1)地理情報システムを用いた水道原水保全のために必要とされる流域環境情報のデータ構造及び属性データの調査と研究:水道原水保全のために必要とされる流域環境のデータ構造の調査と分析及び、水道原水保全のために必要とされる流域環境の属性情報の調査と分析を行う。2) 水道原水保全のために必要と考えられる流域管理計画を策定する上での地理情報システムに必要とされる解析手法・付加価値機能に関する調査・研究:水道原水保全のための流域管理計画支援上必要とされる情報の活用方法を調査、分析し、水道原水取水地点での水量・水質の予知、定常的なモニタリング位置の選定などにあたっての地理情報システムを用いるために必要とされる解析手法・付加価値機能を検討する。3)特定の流域をケース・スタディとして、地理情報システムを適用した、水道原水保全のための流域管理計画を策定し、本手法の有効性を明らかにするための調査・研究:1)、2)の調査・研究と平行し、地理情報システムを作成し、その有効性を確認すると共に技術的な課題を検討するため特定の水域を選定し、本システムを活用し、流域内の水環境特性把握や水質・水量予測・解析を行う。
結果と考察
1)水道原水保全のため必要とするデータについて、その種類、所在、及び管理形態を調査した。さらに、それぞれの収集の容易性、及び更新の頻度を明らかにした。また、データの種類を図形の形態に合わせ、ベクターフォーマット(ポイントデータ、ラインデータ、ポリゴンデータ)、ラスタフォーマットに分類し、その特徴を明らかにした。2) 水道原水に及ぼす要因について有害化学物質、消毒副生成物などの汚染物質の具体的な内容を、水質事故対策、富栄養防止対策、浄水処理技術などの具体的な対策と関連付けて検討し、GISシステムを用いて、解析・評価するために必要とされる水文解析手法や物質の移流解析手法を明らかにした。また、地理情報システムの主要機能である地図上への表示、情報の重ね合わせ、グリッド内の属性を利用した計算・加工の機能に着目しその活用方法を明らかにした。3)汚濁負荷解析などのシミュレーション手法とその必要データを具体的に検討するため、荒川上流域を対象として、水文、取排水情報等を収集・整理し、データ収集、データ管理の容易性を検討するとともに、雨天時流出負荷の推計等を行った。
結論
流域環境のデータを収集・整理し、本研究に必要とするデータの種類、管理形態等を明らかにした。さらに、それぞれのデータ構造の内容を明らかにした。流域環境の属性情報を検討し、水道原水に影響を及ぼす要因を水質リスクの観点か
ら具体的に明らかにした。さらに、ケーススタディを実施し、GISを水道原水保全に活用するための基本的な概念や技術的課題を明らかに出来た。恒常的なリスク軽減、定常的なモニタリング位置の決定、雨天時流出負荷の算定、水質事故等の短期的リスク対応などの観点から、地理情報システムを適用するための技術的対応等を明らかにする調査・研究を継続する必要がある。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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