空間分煙と禁煙サポートからなる包括的な喫煙対策の有効性の検討と優れた喫煙対策プログラムの普及に関する研究

文献情報

文献番号
200201069A
報告書区分
総括
研究課題名
空間分煙と禁煙サポートからなる包括的な喫煙対策の有効性の検討と優れた喫煙対策プログラムの普及に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
大和 浩(産業医科大学産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 田中勇武(産業医科大学産業生態科学研究所)
  • 大神 明(産業医科大学産業生態科学研究所)
  • 大藪貴子(産業医科大学産業生態科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肺がんにより毎年5万人が死亡し、その8割はタバコが原因であることが推定されている。また、受動喫煙によっても毎年約1000名が肺がんに罹患していることも報告されており、日本国民全体の健康の保持増進に、喫煙対策は欠かすことの出来ない対策である。「健康日本21」においても、喫煙対策に関して、分煙の徹底、禁煙サポートの整備、未成年者に対する喫煙防止教育が盛り込まれている。しかし、「効果の高い分煙についての知識の普及」についてはまだまだ不十分であり、一酸化炭素などのガス状物質の除去ができない対策機器である空気清浄機の普及し始めたことは、憂慮すべき事態である。一般に、喫煙対策などの介入研究は、人員の移動が少なく、広報・指揮系統が確立されている職域が適していると考えられる。特に、専属産業医を雇用している事業所では、産業医が職域の保健方針に決定に大きな役割を果たすため、産業保健スタッフ主導で喫煙対策を推進した場合には地域における対策よりも大きな効果が得られることが期待される。申請者は排気装置を用いた有効な空間分煙の導入と健康診断を通じての禁煙勧奨により、3年間で男性の喫煙率が約10%低下した事例を経験した。この包括的な喫煙対策を職域に普及させ、さらに社会全体の喫煙率を低下させることを最終目標とする。研究の趣旨に賛同する事業所(対策介入群9事業所、比較対照群1事業所)について、包括的な喫煙対策を実施する。また、同時に排気装置を用いた対策と空気清浄機を用いた対策の環境測定結果を蓄積することにより、非喫煙者の健康を守るための有効な分煙手段の普及についても事例を蓄積し、リーフレットとして公表する。
研究方法
分煙実態の調査は、喫煙場所内の粉じん濃度、喫煙室からの漏れの有無、禁煙区域での違反喫煙の有無、について記録装置を内蔵したレーザー粉じん計により、粉じん濃度の経時変化として評価する。表計算ソフトにて24時間の測定結果としてグラフ化した後、それぞれの喫煙場所に対して、煙を漏らさず、かつ、喫煙場所内も良好な空気環境に保つための改善提案をおこなう。また、職場での受動喫煙の有無、喫煙率、禁煙希望に関するベースライン調査としてアンケートを実施する。今後、2年半の対策期間に、分煙状況の改善と健康診断を通じての禁煙勧奨、禁煙希望者への個別禁煙サポートをおこない、定期的に喫煙率と禁煙希望の度合いについてアンケート調査をおこなう。
結果と考察
研究班として対策介入群として9社、また、比較対照群として1社の参加を得た。本研究に介入群として参加する事業所とアンケート調査の人数は以下の通りである。読売新聞本社(373名)、朝日新聞西部本社(429名)、エクソンモービル川崎事業所(1098名)、日立金属真岡工場(438名)、三菱電機福岡事業所(2205名)、三井化学大牟田工場(1751名)、三菱重工名古屋事業所(2622名)、トヨタ自動車九州(約1000名)、九州電力本社(約1500名)。対照群として日立金属安来工場(約3000名)にアンケートのみ実施した。3分の2の事業所については単純集計が終了しており、残り3分の1の集計が済み次第、全体集計、クロス集計をおこなう予定である。分煙については、9事業所の全喫煙場所を視察し、煙の漏れない分煙の指導をおこなった。また、1事業所あたり5?11カ所の喫煙場所について粉じん濃度測定をおこなった。申請者からの改善提案に基づいて、3事業所において合計5カ所の改善工事がすでに実施された。うち1カ所については、分煙改善後
のデータ測定も実施され、理論通りの改善結果が得られている。今後は、初回の巡視の際に撮影した喫煙場所の写真をもとに、産業医・衛生担当者との間で分煙の改善提案を電子メールでおこない、改善が実施された場合には適宜、再訪問もしくは粉じん計を郵送し、改善後の評価をおこなう予定である。各事業所に申請者が年に1?2回は出向き、分煙の指導とアセスメントをおこなう予定である。また、平成15年2月7日、申請者が嘱託産業医として勤務している日立金属若松工場の協力を得て、全事業所より産業医、保健師、衛生管理者の3名が参加する第1回班会議を兼ねて喫煙対策講習会をおこなった。さらに、平成15年3月26日より申請者と各班員との間の情報交換をリアルタイムでおこなえるメイリングリストの運用が開始された。お互いの進捗状況を交換することによって喫煙対策の進捗状況は加速されることが期待される。
結論
包括的な喫煙対策を介入する9事業所、比較対照とする1事業所で合計14000人を対照とする研究事業が開始され、ベースラインとなるデータの収集が終了した。2年目は分煙状況の改善、健康診断を利用した積極的な禁煙サポートをおこないつつ、ベースラインデータの解析を進める。

公開日・更新日

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