保健福祉従事者に対する国及び地方自治体での教育研修のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200201062A
報告書区分
総括
研究課題名
保健福祉従事者に対する国及び地方自治体での教育研修のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
岩永 俊博(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 平野かよ子
  • 曽根智史(国立保健医療科学院)
  • 大井田 隆(日本大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
5,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
少子高齢化や生活習慣病の増加、さらに新興再興感染症発生の多様化や広域化などの社会状況の変化を背景に、保健、福祉を取り巻く状況は急激に変化し、それを受けて我が国では地域保健法の制定をはじめとする制度の充実や「健康日本21」「健やか親子21」などの健康政策が打ち出された。このような流れを背景に、地域での保健福祉活動において、実践はもとより計画や評価など、中心的役割を果たす人材の育成がますます重要になってきている。保健所ではその重要な機能として研修が位置づけられており、都道府県ではそれを支援するための体制が整えられつつある。国レベルの教育研修機関の役割としては、修了者へのフォローアップの一環として、地方自治体で行われる研修に対する支援も求められる。これまで国レベルでの保健、福祉関係の従事者に対する卒後の教育研修は、国立公衆衛生院を中心として行われてきた。しかし、昨今では、京都大学及び九州大学において公衆衛生大学院が設置されるなど、教育体制も変化する中、国立公衆衛生院も、国立病院管理研究所などと統合再編となり、新年度より新たな機関がその役割を果たすことになった。そこで、本研究では、これまで国立公衆衛生院が国内外の研修生に対して行ってきた教育効果や派遣元の地方自治体での研修教育との連携を見直し、新たな機関での時代に即した教育研修のあり方を検討することを目的とした。
研究方法
①平成14年度に国立公衆衛生院の専門、専攻課程および特別課程の修了者に対して研修効果や国レベルでの研修に対して期待することに関する郵送調査②国立保健医療科学院の職員に対するこれまでの教育研修の問題点、今後の課題及び公衆衛生などに関してフォーカスグループインタビュー③インターネット上に公開されている情報に基づき諸外国の公衆衛生大学院の教育に関する調査④大学等の教育研修機関での卒後教育(大学院教育)との連携のあり方の検討
結果と考察
1.修了生に対する郵送調査を行った。その結果、受講しやすい研修の形態は、職場としてはブロック別の研修、自分としては科学院の研修と答えたものが多かった。期間としては1週間未満が受けやすいとした者が多く、長期の研修を実施するためにはその期間を要する必然性や期待される能力などを明確にする必要があると思われた。学びたい内容は、現場で即活用出来る知識や最新情報などをあげたものが多かったが、長期課程では「他職種とともに学ぶ機会」、短期課程でも受講者間の情報交換やネットワークづくりなどをあげたものも多く、受講者間の交流の機会を積極的に取り入れることも検討する必要があると考えられる。また、長期課程では、論文のまとめかた研究的視点などを期待する意見もあった。さらに、研修期間中に論議の深まりや計画の策定から評価までの一連の流れなど、長期的な研修であることを生かした工夫の必要性も示唆された。また、公衆栄養コース修了者について分析した結果、8割の受講生は、研修後に報告会をおこなっていたが、より踏み込んだ市町村栄養士支援には、サポートしあえる仲間のや、講師の補助を必要としており、今後の課題と考えられた。2.これまでの教育研修の問題点、今後の課題及び公衆衛生などに関してけんとうした。その結果、問題点として、①研修体系として、研究組織体制と現任教育機関としての教育研修体制との連動、教育研修体系の評価体系、②教育方法と教育内容として、公衆衛生従事者に共通する基本的な資質の獲得目標、教授する科目及び教育内容と全体理念・使命との関連、長期課程と短期課程等の連携や役割分担、国際課程の位置
づけ、③受講者と受講案内として、受講者の範囲、ホームページ等のメディアからの研修情報、④教育に対する職員の意識の違いなどがあげられた。検討課題としては、①院としての「公衆衛生教育の方向性」の明確化、②ミッションを実現させるための教育研修カリキュラムの検討、③教育研修カリキュラムの検討体制の整備、④本院の研修終了者に与えられる「認定」の検討などがあげられた。課題を解決するための検討事項として、①コアカリキュラムの提示、②長期課程のあり方、③教育研修の評価体制の整備などカリキュラムの課題や受講者個々への支援体制、職員の教育研修への関心と教育資質、卒業生のフォローアップなどが整理された。高度な実践家養成のための専門職大学院の構想も示されてきており、これらの状況を受け、国立保健医療科学院が新たな教育研修を展開するためには、院内での検討推進体制を設置し、これまでに検討を重ねてきた教育研修の改善検討報告及び本稿で整理された点を参考として、再編された国立保健医療科学院としての教育研修の理念を明確にし教育研修体系の構築が検討課題であった。3.外国における公衆衛生大学院における教育の現状について検討した。公衆衛生のコア領域とされる分野については、生物統計、疫学、環境保健科学、保健政策、健康教育・行動科学などが大多数の大学院においてカバーされており、国際保健、母子保健、栄養学が多くの大学院でプログラムエリアとされている。その他のエリアについては、大学院ごとの多様性に富んでいた。取得できる学位等については各大学院で取得できる学位はMaster of Public Health(MPH)を授与することを基幹としているが、専門能力の獲得を中心とするMPHの課程と、研究論文作成を課程の中心におくMaster of Science を分けているところも少なくない。このような区分は博士の学位授与でも同様である。また、いくつかの大学のMPH課程の内容では、保健分野の一定の知識経験を前提としつつ、課程にフルタイムで専従する場合には1年で学位を取得し、パートタイムで修学する場合は3年程度までで修了する、というのが代表的である。遠隔教育の内容は大学により様々で、MPHなどの長期課程に使用しているところもあれば、短期課程研修のCertificate授与もあるが、、一定水準以上の保健業務従事経験のある者を対象とすることを前提と、スクーリング、夏季集中セミナーなどの対面教育を併用していることが共通の特徴である。4.国立保健医療科学院と看護系大学院における公衆衛生看護教育の互換性について検討した。その結果、互換性について課題として①今後の保健師教育制度の変化や単位互換に関する制度的な対応②両機関の教育内容・研究指導の調整等の教育システムの確立③関連領域も含めた積極的な教育内容の情報提供と人材交流などが考えられるが、今後は保健師教育の動向を見極めながら、両機関双方のより積極的な情報提供や人材交流などを通し、その可能性を探ることが必要である。
結論
今後の保健、福祉関係の従事者に対する国レベルでの卒後の教育研修のあり方を検討するために、これまで国立公衆衛生院が国内外の研修生に対して行ってきた教育効果や派遣元の地方自治体での研修教育との連携などを見直した。その結果、長期の研修の期間を要する必然性や期待される能力などを明確にすることや受講者間の交流の機会を積極的に取り入れることを検討する必要があると考えられた。また、論文のまとめかた研究的視点、研修期間中の論議の深まりなど、長期的な研修の利点を生かした内容の工夫の必要性や地方自治体レベルでの研修のあり方を検討する必要性が示唆された。また、旧国立公衆衛生院の教育研修の改善方策として、公衆衛生従事者に共通して求められる資質の向上を図り、かつ受講者のニーズ及び今日の健康課題に対応できる力量を向上させるカリキュラムの開発、新しい教育研修体制の検討等の必要性が示された。 米国の公衆衛生大学院の状況としては、生物統計、疫学、環境保健科学、保健政策、健康教育・行動科学の5分野については大部分で、国際保健、母子保健、栄養学等の分
野が多くで行われているものの、大学によってカバーする範囲に多様性がみられた。課程については、Master of Public Health(MPH)課程あるいはDoctor of Public Health(DrPH)課程を基幹において、研究論文作成を中心とする課程とは別に構成するという特徴がみられた。遠隔教育については、現場の公衆衛生従事者を主な対象とするということから、積極的に活用されている。次年度は、さらに具体的なあり方について検討を加える予定である。

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