食品用器具・容器包装等の安全性確保に関する調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200983A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用器具・容器包装等の安全性確保に関する調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
河村 葉子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 鎌田国広(東京都立衛生研究所)
  • 外海泰秀(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 高野忠夫(化学技術推進戦略機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品・化学物質安全総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の器具・容器包装の規格基準及び安全性確保のためのシステムについて、欧米との比較を行い相違を明らかにするとともに、各項目についてハーモナイゼーションを踏まえた今後の方向性を検討する。また、再生プラスチックの食品用途への使用には安全性の確保が不可欠であることから、欧米等におけるリサイクル包装材の安全性確保のための承認システムやガイドライン等の調査を行い、我が国においてリサイクル材を食品用途に使用するための、安全性確保の基本的な考え方やそれを保証するためのシステム等を検討する。食品衛生法の器具・容器包装の規格試験には、有害試薬を使用しているものや分析精度に問題があるものなどがある。そこで、より安全で精度の高い代替試験法を開発する。一方、器具・容器包装による食品の汚染については、器具・容器包装の側からの調査では予期し難い場合がある。そこで食品について汚染物の調査を行い、器具・容器包装由来と思われる化学物質を検索しその由来を明らかにする。さらに、国際標準化機構(ISO)の玩具の安全性規格について、有害な8元素の溶出規制の内容及び試験法の検討、流通玩具への適用試験を行い、我が国における規格の導入の可能性について検討する。
研究方法
論文、出版物、インターネット、直接の情報交換等により諸外国及び我が国の情報を収集するとともに、問題点や今後の方向性等を検討した。また、規格試験法については、試験法の改良または代替試験法の開発を行い、食品汚染物については病院給食中のプラスチック可塑剤をGC/MSにより測定した。また、玩具ISO規格については、試験法の操作性、安定性、定量限界の検討及び玩具の調査を行った。
結果と考察
1) 器具・容器包装の規格基準のハーモナイゼーションにおいては、昨年度の研究で諸外国との大きな差異が存在すると指摘された項目のうち、ポジティブリスト及び溶出試験法について検討した。合成樹脂製器具・容器包装の製造原料及び添加剤のポジティブリストは、欧米では国の法規制として制定されており、器具・容器包装の安全性を保証するための根幹となっているが、我が国にはそのような制度がない。そこで、我が国においても規格基準または行政指導基準などの法的な拘束力をもつポジティブリストを制定することが望ましい。さらに、その基盤となる安全性評価基準についても、欧米のように国がガイドラインを設定して明文化する必要があろう。一方、合成樹脂製器具・容器包装の溶出試験法のうち食品分類については、食品の特性にあわせて細分化するとともに、脂肪性食品については脂肪含量が20%以下でもその範疇に含めることが適当であろう。また食品擬似溶媒については、アルコール含量が高い酒類には同濃度のエタノール溶液を用い、油脂及び脂肪性食品に対しては、油脂と同等以上の溶出力を持つことが証明されるならば、n-ヘプタンのほかに、50%エタノール、95%エタノールなどの採用も可能であろう。なお、食品衛生法の器具の溶出試験では、4%酢酸による試験のみを課しているが、容器包装と同様に使用する食品に応じた擬似溶媒を使用する必要があろう。2) リサイクル包装材の食品用途への使用について、米国ではガイダンスを公表しそれをもとにオピニオンレターによる個別承認を行っており、ドイツでは推奨基準の中で、再生プラスチックに対する見解やPETボトルの再生についての基準を示している。欧州連合では再生プラスチックに関する特別指令を審議中であるが、個別承認制度、チャレンジ試験、品質管理試験などが盛り込まれる
予定である。これらをもとに、我が国における再生プラスチックの食品用途への使用に関して、以下のような基本的な考え方をまとめた。原料となる使用済み合成樹脂は原則として食品用途の製品を分別収集したものであること。誤用などにより汚染が生じても有害な物質が食品に移行しないことを、代理汚染物質の除去試験などにより保証すること。最終製品について品質管理が行われていること。食品衛生法の規格基準に合致していること。これらの再生プラスチック及びその製品の承認方法は、個別にその安全性を確認する方式が適当と考えられる。3) 食品衛生法の器具・容器包装に関する規格試験法のうち、ジブチルスズ化合物は塩酸酸性下でアセトン及びn-ヘキサンの混液により抽出し、テトラエチルホウ酸ナトリウムによりエチル化を行った後ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)で定量し、アンチモン及びゲルマニウムは、4%酢酸溶出液を直接試験溶液としてフレームレス原子吸光光度計、高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP)及びICP-MSで測定することにより、安全で高精度の試験法を開発することができた。エピクロルヒドリンは、キャピラリーカラムによるGC及びGC/MSを用いることにより高感度分析が可能となり、現行の変則的な溶出試験を行うことなく基準値の1/10以下を測定出来た。フェノール試験法は、対象とする試料によって4-アミノアンチピリン法とトリブロモ法が規定されているが、これらはすべて4-アミノアンチピリン法を用いて問題なかった。また、溶解性に問題がある4-アミノアンチピリン法の緩衝液についても検討した。4) 新潟・愛知・大阪の3病院の給食(各一週間分)を試料として、器具・容器包装に由来すると考えられるアジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)及びO-アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)による汚染実態を調査した。検出濃度は、DEHAは 3病院で大差が無かったが、DINA及びATBCはそれぞれ1病院で数十倍以上と高濃度であった。それらの病院は、各々ポリ塩化ビニル製及びポリ塩化ビニリデン製ラップフィルムを使用しており、DINA及びATBCはこれらに起因すると考えられた。各可塑剤の一日当たりの摂取量はいずれもEUの暫定的な基準に照らして問題となる量ではなかった。4) 玩具に関するISO規格は、6歳児以下の幼児用玩具を対象として、有害性の高いアンチモン(Sb)、ヒ素(As)、バリウム(Ba)、カドミウム(Cd)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、水銀(Hg)及びセレン(Se)の8元素について溶出基準を定め、玩具別の検体の作成法や溶出試験法等を定めている。試験法の検討を行ったところ、ICPにより同時分析が可能であったが、定量限界はヒ素は基準値の1/5、その他は1/10以下であった。測定したすべての玩具で、材質からバリウムが検出されたが、含有量と溶出量には相関がみられなかった。流通品(373検体)の顔料等について試験を行ったところ、不適になったものは2検体(鉛及びクロム)、また基準値以下ではあるが3検体からバリウムの溶出が認められた。なお、アンチモン、ヒ素、カドミウム、水銀及びセレンは全ての検体で溶出が認められなかった。
結論
器具・容器包装の規格基準のハーモナイゼーション、リサイクル包装材の安全性確保、規格試験法の安全性と精度向上、器具・容器包装由来の食品汚染物、及び玩具の安全性に関わるISO規格について研究を行い、器具・容器包装及び玩具の安全性確保の上で重要な知見を得ることができた。これらの問題について今後さらに研究を続けるとともに、厚生労働行政の施策に反映されることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-