熱媒体の人体影響とその治療方法に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200970A
報告書区分
総括
研究課題名
熱媒体の人体影響とその治療方法に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
福岡県 
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品・化学物質安全総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昭和43年に発生したカネミライスオイルによる中毒患者(以下「患者」という)に対する治療方法は今なお解明しておらず、症状が完全に治癒していない状況を鑑み、油症の治療法に関する基礎的な研究を行うとともに、患者の検診及び追跡調査を実施し、油症の有効な治療法を解明することを目的とする。
研究方法
従来同様、九州大学、福岡大学医学部、産業医科大学医学部、荒尾中央病院の医師を中心として検診班を組織し、久留米、福岡及び北九州の3地域において、県内の患者を対象に一斉検診を実施し、その検診結果に基づき健康管理指導を実施した。検診に先立ち、受診希望者を対象に自覚症状調査を実施した。検診医師が油症患者データベースを活用できるよう、検診室にパソコンを配備した。
結果と考察
平成14年度は一斉検診を3会場延べ4日間実施し、患者118名が受診した。検診科目は内科(腹部超音波画像診断を含む)、皮膚科、眼科、歯科を実施した。検診時には今年度の自覚症状調査結果を検診医師へ提供するとともに、検診室にパソコンを設置し検診医師がデータベース(患者の過去の検診結果及び自覚症状調査結果)を利用して患者へ、より適切なアドバイスが出来るようにした。また、例年の受診者に比べ今年度の受診者は約1.5倍と大幅に増加したため、時間を要する検診科目については検診医を増員したり、検診時間を延長するなどした。受診患者急増の背景には、昨年度に、カネミ油症は「PCBとそれに関連するPCDF等関連化合物の複合中毒による症候群」であると再認識されたことにより、健康不安が生じたためと推察する。検診後、医師の所見や臨床検査値を集約し、それに基づき患者個々に健康管理指導を行った。今後とも、自覚症状や検診、臨床検査値結果等の変化に注意し、患者の健康管理を行うとともに、得られた情報のデータベース化を継続していくことが重要である。
結論
事件発生から30年以上を経過した今日、若干の減少傾向はみられるものの、依然として患者は様々な症状を訴え、肉体的、精神的に苦しんでいる。本件のような事件は国内では唯一であり、世界的にも稀であることから、有用な臨床データが蓄積されておらず、未だ、治療法の解明に至っていない。この状況を鑑み、本研究を継続することは、患者の健康管理だけでなく、臨床基礎データの収集・蓄積・解析を可能とし、治療法解明のために重要である。今後とも、より良い検診のあり方を検討していき、治療法解明のためにより多くのデータが収集、蓄積できるよう、また、患者においては健康管理の一助として役立つようにしたい。

公開日・更新日

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