生活用品、対策品からの化学物質の発生と除去特性に関する研究

文献情報

文献番号
200200966A
報告書区分
総括
研究課題名
生活用品、対策品からの化学物質の発生と除去特性に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
野﨑 淳夫(東北文化学園大学)
研究分担者(所属機関)
  • 池田耕一(国立公衆衛生院)
  • 松村年郎(東京顕微鏡院)
  • 堀 雅宏(横浜国立大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品・化学物質安全総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
29,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、1)生活用品、汚染低減対策品・技術に関わる適切な試験・評価法を確立し、2)生活用品の化学物質発生量、発生特性を把握し、3)対策品・技術の化学物質除去効果とその限界について実験的に明らかにするものである。次に、4)化学物質の各種ガイドライン値(案)と照合して総括的な室内濃度予測法、換気設計法を提案するものである。
本年度の研究内容は、1)日用汚染低策対策品に関する基礎的な試験・評価法を提案し、これに準じた実験システムを構築した。次に、2)生活用品の化学物質発生量、及び発生特性、3)各種対策品や対策技術の化学物質除去効果について実験室実験、実大実験により明らかにした。
研究方法
生活用品、対策品からの化学物質発生量、発生特性を求めるために室内環境条件(温度、湿度、気流、換気量)を制御できる実験システムを構築した。生活用品(造作家具、家電製品、事務機器、塗料、接着剤、開放型燃焼器具等)を実験チェンバーに挿入し、化学物質の発生量、発生特性を把握した。さらに、日用汚染低減対策品に関する試験・評価法を提案し、次に対策品・技術(日用汚染低減対策品、封止系塗料、光触媒、畳床、空気清浄機、床下換気システム)の効果について、実験室実験、実大実験により明らかにした。
結果と考察
1)フタル酸エステル類の測定法
室内におけるフタル酸エステル類の実態究明を目的として、フタル酸エステル類をフィルタで捕集し、溶媒抽出-GC/MSによる分析方法を確立した。更に、フタル酸エステル類の形態別(ガス状、粒子状)の測定を行い、粒径分布の実態も明らかとなった。
2)日用汚染低減対策品の汚染物質除去特性に関する試験・評価法の新たな提案
精密試験の実施前に行う簡易手法の提案を行った。すなわち、化学物質の汚染低減効果を把握するためのスクリーニング試験法を提案した。精密試験については、対策品は長期にわたる効果の持続性が求められるため、短期精密試験法と併せて長期精密試験法を提案した。
3)造作家具(洗面台)からの化学物質の発生
キッチン、洗面化粧台、浴槽からスチレンが検出された。不飽和ポリエステルの原料にスチレンが用いられていることから、スチレンの発生源は、造作家具の構成部材に用いられている不飽和ポリエステルと考えられる。
4)家電製品からの化学物質の発生
家電製品からの化学物質の発生等に関する科学的知見を得るために、電気敷毛布、コタツ等からのホルムアルデヒドとVOCの発生について明らかにすることを目的とした。電気敷毛布からは、p-ジクロロベンゼン等が検出された。
5)事務機器からの化学物質の発生
実験チェンバー内に事務機器を設置し、印刷時におけるVOC発生量を求めた。また、印刷時のオゾンと水蒸気の発生が確認され、オゾンとVOCとの化学反応や、熱転写時の用紙からの水蒸気発生を検討した室内濃度予測法の確立が必要であることが判明した。
6)自然塗料、天然接着剤からの化学物質の発生
自然塗料、天然接着剤と在来の塗料、接着剤からのVOC発生について比較検討を行った。自然塗料、天然接着剤からのエステル類、アルコール類、ハロゲン類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類の発生は小さく、在来の塗料、接着剤からのVOC発生量は大きいことが明らかとなった。
7)開放型燃焼器具からの化学物質の発生
開放型燃焼器具から発生するVOCについて、ある室内環境条件における室内濃度の上昇特性と燃焼単位重量当りの器具発生量を明らかにした。
8)家庭用空気清浄機の化学物質除去特性
フィルタ濾過式家庭用空気清浄機は、フィルタ部の吸着剤使用量に依存した除去効果が確認され、相当換気量(Qeq)は11.5~22.4[m3/h]であった。ビル管法における必要換気量(20~30[m3/h・人])に近い値を示したフィルタ濾過式空気清浄機もあり、このような空気清浄機は、室内空気環境の改善に寄与できるものと考えられる。
9)家庭用空気清浄機の浮遊粒子状物質除去特性
家庭用空気清浄機の花粉除去性能について、除去指標である相当換気量Qeq(m3/h)を用いて評価した。対象粒径が0.3(μm)~1(μm)までは、Qeqは31~33(m3/h)であり、2(μm)の粒径では、Qeqで44(m3/h)程度の除去効果を示した。
10)換気システム、空気清浄機による室内化学物質濃度低減効果と塗装面の室内化学物質濃度に及ぼす影響
室内、床下、天井懐、壁体内等の化学物質低減対策として、実大実験により新たに開発し、実験住宅に設置した床下換気装置、及び床下下地材の改修による床下、天井懐、壁体内等の化学物質汚染低減効果について明らかにした。次に、空気清浄機の化学物質汚染低減効果を求めた。さらに、塗装面の室内化学物質濃度に及ぼす影響について明らかにした。
11)日用汚染低減対策品の化学物質除去特性
日用汚染低減対策品の化学物質除去効果に関する判定基準を提案した。今後は、対象汚染物質の濃度依存性、低減効果の持続性等を取り入れた長期精密試験法を検討する必要がある。
12)畳床による床下移流化学物質の吸着効果
床下から室内に移流する化学物質が問題となっている。そこで、天然素材である稲わらの畳床における床下移流化学物質の吸着効果について、実験室実験により把握した。稲わらの畳床における吸着効果が大きいことが明らかとなった。また、インシュレーションボード等の畳床からのVOC発生が確認された。
13)封止系塗料による発生源制御に関する総論
封止系塗料によるホルムアルデヒド発生源制御について検討を行った。TEA-Dish濾紙捕集/AHMT吸光光度法を用いて、部位別(床、壁等)のホルムアルデヒド発生量を求め、実大実験(対策室及び無対策室)による値との比較検討を行った。
14)光触媒による化学物質除去特性に関する研究
文献調査により研究対象を洗剤に絞り、洗浄時の皿洗い器と洗浄後の食器からの発生量を定量化するための試験方法を検討した。また、対策品として光触媒タイルを用い、それによる濃度低減効果の評価方法も検討した。
結論
本研究では、以下の知見が得られた。
1)フタル酸エステル類の室内濃度測定法を確立した。
2)日用汚染低減対策品に関する試験・評価法を提案した。
3)造作家具、家電製品、事務機器、自然塗料、天然接着剤、開放型燃焼器具からの化学物質発生量、発生特性について実験室実験により明らかにした。
4)空気清浄機、床下換気システム、日用汚染低減対策品、畳床、封止系塗料、光触媒による化学物質除去特性について実験室実験、実大実験により明らかにした。

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