コプラナーPCBの非ダイオキシン毒性の識別によるダイオキシン耐容摂取量の設定のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200200945A
報告書区分
総括
研究課題名
コプラナーPCBの非ダイオキシン毒性の識別によるダイオキシン耐容摂取量の設定のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
遠山 千春(独立行政法人・国立環境研究所環境健康研究領域)
研究分担者(所属機関)
  • 山本雅之(筑波大学)
  • 前田秀一郎(山梨大学)
  • 宮本薫(福井医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品・化学物質安全総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
36,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類(ダイオキシン、ジベンゾフラン及びコプラナーPCB)の耐容一日摂取量は、2,3,7,8-四塩素化ジベンゾパラジオキシン(以下、TCDDと略す)特有の毒性の観点から29種類の異性体を対象に設定されている。このうち、12種類のコプラナーPCBの各異性体には、TCDDの毒性を1としたときに、相対毒性として、0.1 から 0.00001までの値(毒性等価係数)が付与されている。これら PCB は、TCDD 毒性に加えて、非 TCDD としての毒性を併せもっているが、これら異性体の非 TCDD 毒性にはこれまで十分な注意が払われてこなかった。本研究は、コプラナーPCBが有するTCDD 毒性と非 TCDD 毒性を動物実験により、識別することにより、ダイオキシン類とPCBの毒性の基本的知見の充実のみならず、ダイオキシン類の耐容摂取量の設定のための情報の獲得を目的としている。
研究方法
TCDD毒性は、Ah受容体(AhR)を介した毒性であることが広く認められている。従って、AhR欠損マウスにおいて観察される毒性は、コプラナーPCBが有する非TCDD毒性とみなすことができる。AhRの構造が違うためにTCDD感受性が異なるマウスやヒト型AhRをノックインしたマウスを比較検討に用いることにより、非 TCDD 毒性がより明確に観察される。本研究においては、これらのマウスの作成を行い、さらに生殖機能、甲状腺ホルモン、レチノイド代謝、免疫系、脳行動に対する影響を指標として、TCDD毒性と非TCDD毒性とを識別する。そして、特定指標を規定する遺伝子レベルでのメカニズムを遺伝子の網羅的解析を行うことにより明らかにする。
結果と考察
ヒト型AhRノックインマウスは、口蓋裂と水腎症を指標とした時に、TCDDに低感受性の系統であるDBA/2のマウスに近い反応性を示したことから、AhRの親和性の違いが個体の反応性を規定していることが明らかになった。さらに、TCDD やPCB126とは異なり、PCB77 やPCB153を投与したマウスでは、AhR 応答遺伝子の誘導が見られず、甲状腺ホルモンレベルや肝臓中レチノイド代謝が、AhR非依存性に影響を受けた。PCB169の免疫系の一次免疫に対する作用は、TCDDの毒性よりもかなり低いことも明らかとなった。
結論
TCDDによる催奇形性に対して、ヒト型AhRは、低感受性のマウスと同様の作用を有することが判明した。TCDD、コプラナーPCB及び非コプラナーPCBの異性体を用いたin vivoの実験により、TCDD毒性を基準としたTEFに基づく毒性の評価指標は、甲状腺ホルモン系、レチノイド代謝、及び一次免疫系の特定の影響指標を用いた場合には、適用できないことが明らかとなった。

公開日・更新日

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