臭素化ダイオキシン類に係る労働現場のリスク評価研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200943A
報告書区分
総括
研究課題名
臭素化ダイオキシン類に係る労働現場のリスク評価研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 治彦(中央労働災害防止協会)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤光弘(中央労働災害防止協会)
  • 山田 周(中央労働災害防止協会)
  • 神山信彦(産業医学総合研究所)
  • 小川康恭(産業医学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品・化学物質安全総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
88,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
プラスチック製品製造、リサイクル処理工場、廃棄物処理工場等で作業に従事する労働者を対象とした本物質によるばく露評価及び健康影響評価、そしてばく露評価に有効な血液濃度の高感度分析法の開発及びその測定法の簡易化等を行うことにより、労働者への健康影響を未然に防止するのためのリスク評価法を確立することを目的とする。
研究方法
14年度には、6箇所の廃棄物焼却施設を対象として臭素化・臭素系ダイオキシン類及び塩素化ダイオキシン類の作業環境の実態について調査を行い、またこれらの施設で焼却作業に従事する労働者を対象として、血液中臭素化及び塩素化ダイオキシン類の分析のための血液サンプルの採取を行った。焼却に伴う職場環境空気中の臭素化・臭素系ダイオキシン類、塩素化ダイオキシン類濃度及び血液中ダイオキシン類濃度の関係等について統計的に解析を行い、職域でのばく露の実態について評価を行う。臭素化ダイオキシン類の高感度分析法の開発については、動物血液を用いて、微量分析及び精度の確立について検討した。①文献調査により血中臭素化ダイオキシン類のモデル測定法およびそれに必要な血液量の推算を行った。②血中臭素化ダイオキシン類濃度のモデル測定法を検討した。サンプリングから前処理、濃縮、分析までの上記のモデル測定法を、標準血液試料(臭素化ダイオキシン類の既知量を動物の血液に混入して作製したもの)に応用して臭素化ダイオキシン類の回収率を調べ、同時に定量下限値の目安と精度を検討した。③同モデル測定方法を臭素化ダイオキシン類を投与したラットの臓器に応用、その結果からモデル測定法によって動物組織中の臭素ダイオキシン類測定が可能か、可能であれば組織中の臭素化ダイオキシン類は経時的にどの様に減衰していくかを検討した。
結果と考察
6箇所の廃棄物焼却施設を対象として臭素化・臭素系ダイオキシン類及び塩素化ダイオキシン類の作業環境の実態について調査を行い、またこれらの施設で焼却作業に従事する労働者を対象として、血液中臭素化及び塩素化ダイオキシン類の分析のための血液サンプルの採取を行った。測定結果は一部解析中であり、データの収集完了後の解析をまとめる予定である。その際、焼却に伴う職場環境空気中の臭素化・臭素系ダイオキシン類、塩素化ダイオキシン類濃度及び血液中ダイオキシン類濃度の関係等について統計的に解析を行い、職域でのばく露の実態について評価を行う予定である。なおこの他、臭素化ダイオキシン類生成の主要原因物質と考えられ、かつそのもの自体による人体汚染が懸念されているポリ臭素化ジフェニルエーテル等の臭素系難燃剤を含む素材を扱う2ヵ所の事業場について、今後の健康調査の可能性を検討するために事前調査を行った。この結果については解析中である。臭素化ダイオキシン類の高感度分析法の開発については、動物血液を用いて、微量分析及び精度の確立について検討を行い、初年度には以下の結果を得た。今後ヒト血液に対し応用し、労働者の臭素化ダイオキシン類ばく露のリスク評価に活用することとしている。①文献調査により血中臭素化ダイオキシン類のモデル測定法およびそれに必要な血液量の推算を行った。血中あるいは母乳中の臭素化ダイオキシン類濃度の測定値について実験手順の詳細が記載されている従来の文献と最近の分析機器等の進歩を考慮して、モデル測定法を考案した。それによって、当面の検出目標を塩素化ダイオキシン類と同等の5pg/g lipidとすれば、人の必要血液量は25g~91gになる
と推算された。②血中臭素化ダイオキシン類濃度のモデル測定法を検討した。サンプリングから前処理、濃縮、分析までの上記のモデル測定法を、標準血液試料(臭素化ダイオキシン類の既知量を動物の血液に混入して作製したもの)に応用して臭素化ダイオキシン類の回収率を調べ、同時に定量下限値の目安と精度を検討した。③同モデル測定方法を臭素化ダイオキシン類を投与したラットの臓器に応用した。その結果からモデル測定法によって動物組織中の臭素ダイオキシン類測定が可能か、可能であれば組織中の臭素化ダイオキシン類は経時的にどの様に減衰していくか、を検討中である。ポリ臭素化ジフェニルエーテル等の臭素系難燃剤については、現在のところ臭素系ダイオキシン類としては扱われないものの、環境・人体への蓄積が世界的な関心を集めていることや、塩素系ダイオキシン類についても後にコプラナーPCBが対象物質と扱われるようになった事情等を考慮し、今後も積極的に調査の対象としてゆく予定である。なお、本研究においては臭素化ダイオキシン類等の生体における濃度が極めて低く、人間では一検体あたり101mlを越える血液が必要と考えられることから、疫学的にリスク評価を行う場合の曝露評価の指標として生体試料中の濃度を用いることが困難と考えられた。しかしながら、疫学研究手法について広く検索を行ったところ、複数の検体をプーリングしても、ばく露-非ばく露群間におけるオッズ比の算出が可能であることが明らかとなり、データの解析においてはこうした手法を駆使しながらリスク評価を行う予定である。
結論
6箇所の廃棄物焼却施設を対象として臭素化・臭素系ダイオキシン類及び塩素化ダイオキシン類の作業環境の実態について調査を行い、またこれらの施設で焼却作業に従事する労働者を対象として、血液中臭素化及び塩素化ダイオキシン類の分析のための血液サンプルの採取を行った。測定結果は一部解析中であり、データの収集完了後に解析をまとめる予定である。臭素化ダイオキシン類の高感度分析法の開発については、文献調査によりモデル測定法を考案した。それによって、当面の検出目標を塩素化ダイオキシン類と同等の5pg/g lipidとすれば、人の必要血液量は25g~91gになると推算した。動物血液を用いて、微量分析及び精度の確立について検討を行い、サンプリングから前処理、濃縮、分析までの上記のモデル測定法を、標準血液試料(臭素化ダイオキシン類の既知量を動物の血液に混入して作製したもの)に応用して臭素化ダイオキシン類の回収率を調べ、同時に定量下限値の目安と精度を推定した。また臭素化ダイオキシン類等の生体における濃度が極めて低く、人間では一検体あたり100mlを越える血液が必要と考えられることから、疫学的にリスク評価を行う場合の曝露評価の指標として生体試料中の濃度を用いることが困難と考えられたが、疫学研究手法について広く検索を行ったところ、複数の検体をプーリングしても、ばく露-非ばく露群間におけるオッズ比の算出が可能であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-