文献情報
文献番号
200200926A
報告書区分
総括
研究課題名
食品企業における健康危機管理に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
玉木 武(社団法人 日本食品衛生協会)
研究分担者(所属機関)
- 師岡 孝次(東海大学)
- 宮城島 一明(京都大学大学院)
- 小沼 博隆(東海大学)
- 斎藤 行生((社)日本食品衛生協会食品衛生研究所)
- 西田 茂樹(国立保健医療科学院)
- 難波 吉雄(東京大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品・化学物質安全総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
主任研究者研究=食中毒の疫学と因果関係および危機管理対応
分担研究者及び研究テーマ=分担研究1:師岡 孝次(東海大学)=企業における食品の安全に関する危機管理の実態解明とその手法に関する研究、分担研究2:宮城島 一明(京都大学大学院)=諸外国におけるトレーサアビリティの状況と日本におけるトレーサビリティの適用に関する研究、分担研究3:小沼 博隆(東海大学)=総合衛生管理製造過程による衛生管理対象外の食品企業におけるHACCPに関する研究、分担研究4:斎藤 行生((社)日本食品衛生協会食品衛生研究所)=微生物等による健康被害の防止とその危機管理に関する研究、分担研究5:西田 茂樹(国立保健医療科学院)=食中毒様疾患の危機管理及び疫学に関する研究、分担研究6:難波 吉雄(東京大学大学院)=食品事故事例の危機管理の実態及び改善すべき諸問題に関する研究
研究目的
主任研究者 :本研究の今年度における目的は、岡山市・岡山県の職員を対象にこれまでの研修・実習プログラムを全面的に改定し、新しい時代の食品衛生調査に対応するカリキュラムに作り替えることである。これまでの研修においては、北海道から鹿児島県まで広範囲な自治体から派遣された職員が参加してきており、参加者から好評を得ている。アウトブレイク調査を実際のアウトブレイクで迅速に機能させるには、調査に関与する保健衛生従事者の大半が原因究明調査の具体的内容を熟知している必要がある。さらに、これまで築いてきた集団食中毒事件におけるCDCなどの調査方法を実践できる自治体のネットワークを用いて、わが国の保健所の現場で起きてきた様々な集団食中毒事件に関して、海外および国内に広くその事件の内容を伝えるべき事件を選び出し、日本語もしくは英語でもって論文化する体制の確立を目指す。しかし、これまでわが国における大規模な集団食中毒事件は、各自治体の報告書にとどまり、世界各国がその情報を共有できる体制になっていない。この点に関しては、海外の研究者も指摘しており、我々は、国際的なそのような要求に応えてゆく必要があると思われる。また、アウトブレイク事件は集団食中毒事件に限らず、感染症やバイオテロ、化学テロ、職業病などの形態をとることもあるので、そのような食中毒事件以外の健康危機管理への対応もできるように応用面を強化する。
分担研究1:対象とする食品の安全に関する危機管理の基本的なデ-タが実際に調査されていない現実を配慮して、まず実際に関連のシステムについて最も基本的なペリルやハザ-ド、リスクを調査して、危機管理体制の基礎を確立する。
従来、日本の危機管理は主として、金融分野のシステムが対象とされ、危機管理学会などの発表も生産システムに関するものが研究対象として取り上げられなかったきらいがある。特に食品の安全性などについてはほとんど検討されなかったので、最近の事故が多発している現状から、この分野の基礎研究が最も必要性にせまられておりまた期待もされているわけである。
実際に特定の対象に対して、危機管理学上必要な基礎デ-タが調査されて、そのデ-タに基づいた危機管理システムが把握されるならば、実践的なシステムの事例として、他の分野の危機管理システムにも非常に貴重な示唆を与えることであろう。
分担研究2:近年、食品流通、とりわけ遺伝子組換え食品や牛肉の分野において、トレーサビリティ(可追溯性)の概念が導入されようとしている。しかし、その目的、対象食品、方法・手段、他の類似概念との関係などは十分に明らかにされておらず、国際的に合意された解釈は確立していない。この研究では、可追溯性および関連する概念を整理した上で、消費者の健康保護の観点から可追溯性が担うべき役割と実施可能性を検討し、食品衛生の制度的枠組みにおいて可追溯性が占めるべき位置および新たな行政施策を展開する必要の有無を明らかにすることにより、食品保健行政の推進に資するものと期待される。
分担研究3:食中毒発生の大部分は、魚介類、複合調理食品、仕出し弁当・惣菜および会席料理などである。これらの食品の多くはヒトや食材と接触したり、あるいはかき混ぜられたりして調理、加工されているため、原因食材の特定が難しく、防止対策をとるのがむずかしい。同時に、これらの食品は製造基準が馴染まなず、かつ食中毒事例数が多いため、各地方自治体では独自で指導基準なるものを設定し、食中毒防止を図ってきたのが現状である。
そこで、HACCPシステムの導入が難しいとされてきた総合衛生管理製造過程承認対象外の食品の調理、製造、加工、流通及び販売に至る過程に本システムを導入することができるか否か、また、導入を可能にするためには、どのような事項を取り入れなければならないのかを調査・研究し、小規模施設(2~3人)でも遵守できるようなHACCPシステム構築を目指す。
HACCPシステムの導入が難しいとされてきた総合衛生管理製造過程承認対象外の食品および小規模施設に本システムを導入することによって、食品取扱者が原材料特有の病原菌に対する保管温度と時間の関係を熟知するようになるため、食中毒事例が減少すると同時に記録簿の整備が進むため、効率的な衛生監視が可能となる。
分担研究4:微生物による健康被害の防止と健康危機管理を行うために以下の3点からのアプローチを試みる。i.食中毒の危険因子を抽出する ii.食品に付着・汚染する真菌の調査研究 iii.微生物検査の精度管理方法論
分担研究5:食中毒は「食中毒統計」に届け出られる患者以外に、医師を未受診のため届け出されない患者が相当数発生していると推測される。これらの患者が新たな食中毒発生の感染源となっている可能性もあり、特に食品企業の従業員の場合には大きな問題を含んでおり、食中毒様症状が発症した場合の行動の管理はきわめて重要である。そこで、本調査を実施し、問題行動が認められた場合には改善の提言を行うことにより、わが国の食中毒発生の予防対策に貢献することを目的とする。
分担研究6:近年、食生活の多様化による輸入食品、加工・冷凍食品の増加等に伴い、食品の製造、流通形態が大きく変化している。また、最近では新興感染症病因物質等による食中毒のみならず食品企業に内包される多くの諸問題により、食品事故事例が多発しており、国としても生命、健康の安全を脅かすこれらの事態に迅速・的確に対応することが求められている。本研究では、食品事故事例について総合的にレビューを行うとともに、企業等当事者へのヒアリングも実施し、食品企業における健康危機管理に有用なプロトコールを作成することを目的とする。
分担研究者及び研究テーマ=分担研究1:師岡 孝次(東海大学)=企業における食品の安全に関する危機管理の実態解明とその手法に関する研究、分担研究2:宮城島 一明(京都大学大学院)=諸外国におけるトレーサアビリティの状況と日本におけるトレーサビリティの適用に関する研究、分担研究3:小沼 博隆(東海大学)=総合衛生管理製造過程による衛生管理対象外の食品企業におけるHACCPに関する研究、分担研究4:斎藤 行生((社)日本食品衛生協会食品衛生研究所)=微生物等による健康被害の防止とその危機管理に関する研究、分担研究5:西田 茂樹(国立保健医療科学院)=食中毒様疾患の危機管理及び疫学に関する研究、分担研究6:難波 吉雄(東京大学大学院)=食品事故事例の危機管理の実態及び改善すべき諸問題に関する研究
研究目的
主任研究者 :本研究の今年度における目的は、岡山市・岡山県の職員を対象にこれまでの研修・実習プログラムを全面的に改定し、新しい時代の食品衛生調査に対応するカリキュラムに作り替えることである。これまでの研修においては、北海道から鹿児島県まで広範囲な自治体から派遣された職員が参加してきており、参加者から好評を得ている。アウトブレイク調査を実際のアウトブレイクで迅速に機能させるには、調査に関与する保健衛生従事者の大半が原因究明調査の具体的内容を熟知している必要がある。さらに、これまで築いてきた集団食中毒事件におけるCDCなどの調査方法を実践できる自治体のネットワークを用いて、わが国の保健所の現場で起きてきた様々な集団食中毒事件に関して、海外および国内に広くその事件の内容を伝えるべき事件を選び出し、日本語もしくは英語でもって論文化する体制の確立を目指す。しかし、これまでわが国における大規模な集団食中毒事件は、各自治体の報告書にとどまり、世界各国がその情報を共有できる体制になっていない。この点に関しては、海外の研究者も指摘しており、我々は、国際的なそのような要求に応えてゆく必要があると思われる。また、アウトブレイク事件は集団食中毒事件に限らず、感染症やバイオテロ、化学テロ、職業病などの形態をとることもあるので、そのような食中毒事件以外の健康危機管理への対応もできるように応用面を強化する。
分担研究1:対象とする食品の安全に関する危機管理の基本的なデ-タが実際に調査されていない現実を配慮して、まず実際に関連のシステムについて最も基本的なペリルやハザ-ド、リスクを調査して、危機管理体制の基礎を確立する。
従来、日本の危機管理は主として、金融分野のシステムが対象とされ、危機管理学会などの発表も生産システムに関するものが研究対象として取り上げられなかったきらいがある。特に食品の安全性などについてはほとんど検討されなかったので、最近の事故が多発している現状から、この分野の基礎研究が最も必要性にせまられておりまた期待もされているわけである。
実際に特定の対象に対して、危機管理学上必要な基礎デ-タが調査されて、そのデ-タに基づいた危機管理システムが把握されるならば、実践的なシステムの事例として、他の分野の危機管理システムにも非常に貴重な示唆を与えることであろう。
分担研究2:近年、食品流通、とりわけ遺伝子組換え食品や牛肉の分野において、トレーサビリティ(可追溯性)の概念が導入されようとしている。しかし、その目的、対象食品、方法・手段、他の類似概念との関係などは十分に明らかにされておらず、国際的に合意された解釈は確立していない。この研究では、可追溯性および関連する概念を整理した上で、消費者の健康保護の観点から可追溯性が担うべき役割と実施可能性を検討し、食品衛生の制度的枠組みにおいて可追溯性が占めるべき位置および新たな行政施策を展開する必要の有無を明らかにすることにより、食品保健行政の推進に資するものと期待される。
分担研究3:食中毒発生の大部分は、魚介類、複合調理食品、仕出し弁当・惣菜および会席料理などである。これらの食品の多くはヒトや食材と接触したり、あるいはかき混ぜられたりして調理、加工されているため、原因食材の特定が難しく、防止対策をとるのがむずかしい。同時に、これらの食品は製造基準が馴染まなず、かつ食中毒事例数が多いため、各地方自治体では独自で指導基準なるものを設定し、食中毒防止を図ってきたのが現状である。
そこで、HACCPシステムの導入が難しいとされてきた総合衛生管理製造過程承認対象外の食品の調理、製造、加工、流通及び販売に至る過程に本システムを導入することができるか否か、また、導入を可能にするためには、どのような事項を取り入れなければならないのかを調査・研究し、小規模施設(2~3人)でも遵守できるようなHACCPシステム構築を目指す。
HACCPシステムの導入が難しいとされてきた総合衛生管理製造過程承認対象外の食品および小規模施設に本システムを導入することによって、食品取扱者が原材料特有の病原菌に対する保管温度と時間の関係を熟知するようになるため、食中毒事例が減少すると同時に記録簿の整備が進むため、効率的な衛生監視が可能となる。
分担研究4:微生物による健康被害の防止と健康危機管理を行うために以下の3点からのアプローチを試みる。i.食中毒の危険因子を抽出する ii.食品に付着・汚染する真菌の調査研究 iii.微生物検査の精度管理方法論
分担研究5:食中毒は「食中毒統計」に届け出られる患者以外に、医師を未受診のため届け出されない患者が相当数発生していると推測される。これらの患者が新たな食中毒発生の感染源となっている可能性もあり、特に食品企業の従業員の場合には大きな問題を含んでおり、食中毒様症状が発症した場合の行動の管理はきわめて重要である。そこで、本調査を実施し、問題行動が認められた場合には改善の提言を行うことにより、わが国の食中毒発生の予防対策に貢献することを目的とする。
分担研究6:近年、食生活の多様化による輸入食品、加工・冷凍食品の増加等に伴い、食品の製造、流通形態が大きく変化している。また、最近では新興感染症病因物質等による食中毒のみならず食品企業に内包される多くの諸問題により、食品事故事例が多発しており、国としても生命、健康の安全を脅かすこれらの事態に迅速・的確に対応することが求められている。本研究では、食品事故事例について総合的にレビューを行うとともに、企業等当事者へのヒアリングも実施し、食品企業における健康危機管理に有用なプロトコールを作成することを目的とする。
研究方法
主任研究者:主任研究者ならびに研究協力者らは、全国の自治体の食品保健の担当職員を対象に、集団食中毒事件・感染症のアウトブレイクの際の原因究明のための疫学調査および健康危機管理に関する研修を企画した。研修会のカリキュラムは、米国疾病管理予防センター(CDC)の教材の日本語訳、海外の医学雑誌に掲載されたアウトブレイク調査に関する報告論文、わが国における集団食中毒事件等の報告書などを元に作成された演習問題等を行い討論することと、またデータベースをエクセルで解析ソフトをCDCのEpiInfoを用いた分析実習を行うこととから構成される。研修レベルは、初級研修・上級研修に分けて構成される。
分担研究1:まず実際の食品の安全に関連するシステムを対象にプロジェクトチ-ムを編成して、そのチ-ムを中心に研究調査を推進していく、実態調査はチ-ムメンバ-と関連システムに従事するメンバ-の参画によるペリルに関する調査から開始し、創造的発想法の解説と実際に適用して、必要な情報の収集を行う。
また各種方法は、研究調査の進行とともに、その段階で必要な方法の解説と実施を進める。KJ法、NM法などすでに採用実施の経験者がいる場合は、経験者を中心にグル-プスタディの形式を取っていく。問題解決のアプロ-チで特に設計的アプロ-チに関しては、機能中心の考え方を基本にして、機能展開を実際のシステムを対象にメンバ-全員で行い、それらの機能を満たす理想システムの開発も体験的に行う、したがって、理論と実践を体験でき、危機管理の理論だけでなく、実際のシステム構築を行うように配慮する。
分担研究2:研究初年度においては、欧州連合が実施している牛および牛肉の個体認識システムおよび遺伝子組換え食品に関わる可追溯性を調査する。研究第二年度においては、食品業者等の協力を得て、我が国の食品流通における可追溯性の適用の可能性と必要性を検討する。研究最終年度においては、食品保健の分野における可追溯性の意義と適用条件を明らかにし、必要に応じ、行政的に応用可能な提言を行う。
分担研究3:初年度は、魚介類の生食(寿司)、複合調理食品、仕出し弁当・惣菜および会席料理などの実態を調査し、システム工学や人間工学の立場から衛生管理を見直す。
2年度は、初年度の成果を基に代表的な3製品(刺身、サラダ、惣菜、漬け物の内から選択)のHACCPプランを作成する。同時に当該施設の各工程のふき取り調査ならびに製品検査を実施する。
3年度は、2年度に作成したHACCPプランを基に実際に製品を製造し、2年度の当該施設の各工程のふき取り調査ならびに製品検査結果と比較する。
分担研究4:i.我が国における発生頻度の高い腸炎ビブリオ及びサルモネラ食中毒について、衛生研究所や、保健所の協力を得て個々の食中毒の宿主要因、環境要因要に関するデータを収集する。そのデータを用いて、症例―対照研究を行ないオッズ比を算出し、危険因子の抽出を行なう。ii.衛生研究所、環境保険センター、及び保健所へ寄せられた「真菌汚染による苦情・事故食品とその喫食による健康被害調査」結果を利用する。iii.精度管理の一般ガイドライン(平成9年4月)を参考として独自に調製した管理試料の応用を考慮し、日常の検査簡便に利用できる精度管理方法を実験的に検討した。
分担研究5:未届け、未受診を含む食中毒の発生状況を把握するための調査方法を開発することを目的に、食中毒様症状の実態調査のパイロット・スタディを実施した。任意抽出した者に、調査内容等について文書で説明し、調査協力の了承の得られた者を対象とした。対象者に1週間単位で毎日の下痢の有無、下痢があった場合には、下痢等の症状、臥床、欠勤・欠席、医療機関受診の有無、同一食事摂取で下痢をした人の有無、原因として思い当たる食品の有無について聞いた。調査は郵送法で実施した。
分担研究6:国内外に存在する事件事故事例のデータベースを検索するとともに、それらの内容について検討を加えた。
分担研究1:まず実際の食品の安全に関連するシステムを対象にプロジェクトチ-ムを編成して、そのチ-ムを中心に研究調査を推進していく、実態調査はチ-ムメンバ-と関連システムに従事するメンバ-の参画によるペリルに関する調査から開始し、創造的発想法の解説と実際に適用して、必要な情報の収集を行う。
また各種方法は、研究調査の進行とともに、その段階で必要な方法の解説と実施を進める。KJ法、NM法などすでに採用実施の経験者がいる場合は、経験者を中心にグル-プスタディの形式を取っていく。問題解決のアプロ-チで特に設計的アプロ-チに関しては、機能中心の考え方を基本にして、機能展開を実際のシステムを対象にメンバ-全員で行い、それらの機能を満たす理想システムの開発も体験的に行う、したがって、理論と実践を体験でき、危機管理の理論だけでなく、実際のシステム構築を行うように配慮する。
分担研究2:研究初年度においては、欧州連合が実施している牛および牛肉の個体認識システムおよび遺伝子組換え食品に関わる可追溯性を調査する。研究第二年度においては、食品業者等の協力を得て、我が国の食品流通における可追溯性の適用の可能性と必要性を検討する。研究最終年度においては、食品保健の分野における可追溯性の意義と適用条件を明らかにし、必要に応じ、行政的に応用可能な提言を行う。
分担研究3:初年度は、魚介類の生食(寿司)、複合調理食品、仕出し弁当・惣菜および会席料理などの実態を調査し、システム工学や人間工学の立場から衛生管理を見直す。
2年度は、初年度の成果を基に代表的な3製品(刺身、サラダ、惣菜、漬け物の内から選択)のHACCPプランを作成する。同時に当該施設の各工程のふき取り調査ならびに製品検査を実施する。
3年度は、2年度に作成したHACCPプランを基に実際に製品を製造し、2年度の当該施設の各工程のふき取り調査ならびに製品検査結果と比較する。
分担研究4:i.我が国における発生頻度の高い腸炎ビブリオ及びサルモネラ食中毒について、衛生研究所や、保健所の協力を得て個々の食中毒の宿主要因、環境要因要に関するデータを収集する。そのデータを用いて、症例―対照研究を行ないオッズ比を算出し、危険因子の抽出を行なう。ii.衛生研究所、環境保険センター、及び保健所へ寄せられた「真菌汚染による苦情・事故食品とその喫食による健康被害調査」結果を利用する。iii.精度管理の一般ガイドライン(平成9年4月)を参考として独自に調製した管理試料の応用を考慮し、日常の検査簡便に利用できる精度管理方法を実験的に検討した。
分担研究5:未届け、未受診を含む食中毒の発生状況を把握するための調査方法を開発することを目的に、食中毒様症状の実態調査のパイロット・スタディを実施した。任意抽出した者に、調査内容等について文書で説明し、調査協力の了承の得られた者を対象とした。対象者に1週間単位で毎日の下痢の有無、下痢があった場合には、下痢等の症状、臥床、欠勤・欠席、医療機関受診の有無、同一食事摂取で下痢をした人の有無、原因として思い当たる食品の有無について聞いた。調査は郵送法で実施した。
分担研究6:国内外に存在する事件事故事例のデータベースを検索するとともに、それらの内容について検討を加えた。
結果と考察
主任研究者:アウトブレイク調査を実際のアウトブレイクで迅速に機能させるには、調査に関与する保健衛生従事者の大半が原因究明調査の具体的内容を熟知している必要があると我々は考えている。また、次第次第に参加希望者が増加してゆく状況の中で、参加者に対してより効果的な実習内容を提供してゆく必要が生じてきている。本研究では、さらに大規模に効率的に研修を行うための研修方法、教材の開発のための研究であり内外からさらに多くの教材を収集し平成14年度版を開発した。
分担研究1:当初の研究計画に基づき、食品事故によってもたらされる企業活動を阻害する要因の分析とその事例選択として「雪印乳業食中毒事件」の2000年6月から2001年7月までの新聞やマスコミ報道の記事を分析、その内容から危機管理対応の問題点を抽出した。1)食中毒の発生に「症例が少ない」との発言から事故発生に対しハインリッヒの法則の認識がない。2)「私も寝てない」発言は消費者に悪い印象をもたらし巨大なネットワークによって不買運動が進み製品の撤去となった。3)消費者に迅速な対応をするためにはPL保険の適用が必要であつた。4)HACCPによるハザード分析が問題解決型の対応を優先し、リスクアセスメントによるペリルの探索で問題発生型の「食品安全の有るべき姿」が想定できない。5)工場間の情報管理とその開示、説明責任が明確でない。企業統治と株主の対応が遅い。6)原材料や製品の抜き取り検査がなく製品管理がずさん。7)HACCPの管理マニュアルが現場で実施されてない。8)リスク(損失)からクライシス(危機)への発展段階の認識が全国製品の撤去やR&Iの株式が監視銘柄についての認識が経営者や管理者にない。
したがつて、この研究は食品事故によってもたらされた1)企業統治とCSの問題2)安全管理とHACCPの認識3)リスクアセスメントと品質保証4)コンティンジェンシー・プランの策定など4つの側面から食品企業の危機管理を論じた
分担研究2:本年度に行った実態調査の範囲では、食品に関する製品固有情報の管理は、製造される食品の種類に大きく左右されることが明らかになった。また、企業の規模による違いとしては、大企業、とりわけ総合衛生管理製造過程の認証工場において、情報の管理と記録が徹底している傾向も見られたが、業態・商品による差も大きく、小規模の製造工場であっても、使用する原料の種類と取引先が限られている場合には、トレーサビリティの担保が必ずしも困難であるとは限らないことが示唆された。
特定の製品について追溯を行う場合に重要な鍵となるのは、ロット番号である。ところが、ロット番号管理については、一日一ロットとしている工場から、時刻刻印をするところまで、様々であった。また、包装食品などでは、食品賞味期限あるいは消費期限の表示がロット番号の役割を果たしている場合もあった。
製品の追溯が困難になるのは、製造業においては、多くの異なる原料ロットを混ぜ合わせる工程がある場合で、とりわけ、原材料の「つぎ足し」が行われる場合であると考えられた。一方、流通業においては、製造業ほどに情報の綿密な記録が行われておらず、追溯が不可能になったり、追溯に多くの時間が必要となったりすることが示唆された。
製品追溯に必要な情報は、その大部分が納品・出荷伝票か、あるいは、段ボール表面への直接記入あるいは書類貼付によっており、電子情報の利用は現時点では限定的であることが示された。
食品に関する事故などの発生時に、消費者の手に渡る製品情報(法令に準拠した食品表示)から出発して、多くの場合、時間をかければ、輸入者・製造者が通常保有しているかなり詳細な情報にたどりつける。但し、製造設備上の制限や作業体制上、サブロット等との厳密な照合は不可能である。また、場合によっては、表示義務のない情報が重要な役割を担っている場合もあることが分かった。
今後、可追溯性を担保するために必要な情報の記録を改善するためには、例えば、次のような取り組みを行うことが考えられる。
1)製造者は、仮に消費者等によって外装が廃棄されても、内容物を使い切るまで、製品追溯に利用できる情報がその内容物容器面に残っているような商品開発が望まれる。
2)容器面には、可能な限り、ロット、サブロット等の識別情報を取り込むことが望まれる。
3)流通の段階ごとにその送り状等に賞味期限、ロット記号等、可追溯性に不可欠な情報を盛り込むことが望まれる。
4)生産から消費にいたる各段階において食品業者が自ら記録し保存する情報、および、製品自体に添付される識別情報の最適な組み合わせが行政によって示されることが望ましい。
5)製品自体に添付される情報の媒体としてICチップの利用が盛んになることが想定されることから、その電子的な記録様式の統一を行政が考慮・検討することが望ましい。
6)食品の過半を外国からの輸入に依存する我が国においては、海外における可追溯性の動向を常に把握しておくことが望ましい。
今年度の調査では、食品流通業と食品添加物の製造・流通業を含めなかった。
分担研究3:これらの調査結果を踏まえ、中小規模の施設でも遵守できるようなHACCPシステム構築を目指すために、高度な衛生管理を可能にする施設設備および一般的衛生管理プログラムのあり方を業種ごと、生産方式ごとに整理した。また、作業中の記録取りに関しては、作業中でも簡単に記録することができ、しかも小規模施設でも遵守できるように、冷凍庫・冷蔵庫の温度管理記録はセコム方式で管理、また種々の衛生管理ポイントについては、音声合成・音声認識の技術を取り入れた音声ガイドに従って音声で入力し記録するシステムの設計を行った。なお、これら一連の調査研究には、ヒトと生産現場を一つの単位と考えるシステム工学や,ヒトに対する安全、快適、高率性ならびにヒトは必ず過ちを犯すというヒュ-マンエラ-をも念頭に入れた人間工学の手法を導入して作業を進めているが、今年度は人間工学の概要、特にヒューマン・マシン・インタフェース(Human Machine Interface)の5側面、人間-機械系の役割分担(割当)およびユーザリクアイアメント等をとりまとめた。
分担研究4:上記3点とも現在進行中であるが事前調査では各機関に持ちこまれた真菌による苦情事故の件数は0~100件/年であり、各機関の対応は52%の機関は真菌検査を実施すると答えている。時々実施している機関が33%であり、他は実施していないと答えている。微生物精度管理方法に関する調査及び実験的検討の結果では基本的には文献例示の方法で統計学的な処理が可能であると考えられた。
分担研究5:調査総数は5,572人日、15.27人年であった。この間に163件の下痢が発生していた。これは平均で1人あたり年間10.68回下痢を発症していることになる。また、同一食を食べ同様に下痢を発症した人が存在する例は163件中3件認められた。下痢発症の原因としての食品をあげた例は19件認められたが、推測原因食品及び症状と合わせて検討した結果、食中毒と明確に判断される例は認められなかった。今回の対象者は成人に限定されており、また無作為抽出ではないため、今回の結果を日本人全体に適用することには無理がある。しかし敢えて適用すると、日本全体で年間13億6千万件の下痢が発生していると推定され、この内1.81%(163件中同一食による下痢発症3件の割合)が食物起因であるとすると、日本全体で年間2,500万件の食中毒が発生していることになり、また全下痢の内0.1%が食物起因と仮定すると約140万件の食中毒が発生していることになる。これらの推計方法は日本全体の食中毒の発生数の推計にはなっていないが、発生している食中毒の最低限の見込み値の推計にはなっていると考えられる。
分担研究6:わが国における食品事故のデータベースとして、インターネット上では
食品産業センターの食品事故Q&Aがある。このデータベースでは、製品分類(乳・乳加工品、食肉加工品、水産加工品、パン類、菓子類、漬物類、飲料、冷凍食品、惣菜、弁当調理パン、麺類、豆腐・納豆類、瓶詰めレトルトその他等)とトラブル現象(異味・異臭、かび、危害異物<金属、石、ガラス)>、包装不良、変質、変敗、昆虫、その他の異物、その他異物<夾雑物>、その他)で検索が可能である(http://www.shokusan.or.jp/jikoqa/jikodb.html)。
しかしながら、これらの情報は個別に詳細に検討することはできない。米国では、動物肉、鶏肉、卵を農務省、それ以外を食品医薬品局が所管しているが、食品事故情報がFDAの情報サイトからすべて検索である。
今後、FDA同様製品の回収基準を策定したり、また食品事故対応ガイドラインを検討していく場合、食品事故データベースのあり方について検討する必要があると思われた。
分担研究1:当初の研究計画に基づき、食品事故によってもたらされる企業活動を阻害する要因の分析とその事例選択として「雪印乳業食中毒事件」の2000年6月から2001年7月までの新聞やマスコミ報道の記事を分析、その内容から危機管理対応の問題点を抽出した。1)食中毒の発生に「症例が少ない」との発言から事故発生に対しハインリッヒの法則の認識がない。2)「私も寝てない」発言は消費者に悪い印象をもたらし巨大なネットワークによって不買運動が進み製品の撤去となった。3)消費者に迅速な対応をするためにはPL保険の適用が必要であつた。4)HACCPによるハザード分析が問題解決型の対応を優先し、リスクアセスメントによるペリルの探索で問題発生型の「食品安全の有るべき姿」が想定できない。5)工場間の情報管理とその開示、説明責任が明確でない。企業統治と株主の対応が遅い。6)原材料や製品の抜き取り検査がなく製品管理がずさん。7)HACCPの管理マニュアルが現場で実施されてない。8)リスク(損失)からクライシス(危機)への発展段階の認識が全国製品の撤去やR&Iの株式が監視銘柄についての認識が経営者や管理者にない。
したがつて、この研究は食品事故によってもたらされた1)企業統治とCSの問題2)安全管理とHACCPの認識3)リスクアセスメントと品質保証4)コンティンジェンシー・プランの策定など4つの側面から食品企業の危機管理を論じた
分担研究2:本年度に行った実態調査の範囲では、食品に関する製品固有情報の管理は、製造される食品の種類に大きく左右されることが明らかになった。また、企業の規模による違いとしては、大企業、とりわけ総合衛生管理製造過程の認証工場において、情報の管理と記録が徹底している傾向も見られたが、業態・商品による差も大きく、小規模の製造工場であっても、使用する原料の種類と取引先が限られている場合には、トレーサビリティの担保が必ずしも困難であるとは限らないことが示唆された。
特定の製品について追溯を行う場合に重要な鍵となるのは、ロット番号である。ところが、ロット番号管理については、一日一ロットとしている工場から、時刻刻印をするところまで、様々であった。また、包装食品などでは、食品賞味期限あるいは消費期限の表示がロット番号の役割を果たしている場合もあった。
製品の追溯が困難になるのは、製造業においては、多くの異なる原料ロットを混ぜ合わせる工程がある場合で、とりわけ、原材料の「つぎ足し」が行われる場合であると考えられた。一方、流通業においては、製造業ほどに情報の綿密な記録が行われておらず、追溯が不可能になったり、追溯に多くの時間が必要となったりすることが示唆された。
製品追溯に必要な情報は、その大部分が納品・出荷伝票か、あるいは、段ボール表面への直接記入あるいは書類貼付によっており、電子情報の利用は現時点では限定的であることが示された。
食品に関する事故などの発生時に、消費者の手に渡る製品情報(法令に準拠した食品表示)から出発して、多くの場合、時間をかければ、輸入者・製造者が通常保有しているかなり詳細な情報にたどりつける。但し、製造設備上の制限や作業体制上、サブロット等との厳密な照合は不可能である。また、場合によっては、表示義務のない情報が重要な役割を担っている場合もあることが分かった。
今後、可追溯性を担保するために必要な情報の記録を改善するためには、例えば、次のような取り組みを行うことが考えられる。
1)製造者は、仮に消費者等によって外装が廃棄されても、内容物を使い切るまで、製品追溯に利用できる情報がその内容物容器面に残っているような商品開発が望まれる。
2)容器面には、可能な限り、ロット、サブロット等の識別情報を取り込むことが望まれる。
3)流通の段階ごとにその送り状等に賞味期限、ロット記号等、可追溯性に不可欠な情報を盛り込むことが望まれる。
4)生産から消費にいたる各段階において食品業者が自ら記録し保存する情報、および、製品自体に添付される識別情報の最適な組み合わせが行政によって示されることが望ましい。
5)製品自体に添付される情報の媒体としてICチップの利用が盛んになることが想定されることから、その電子的な記録様式の統一を行政が考慮・検討することが望ましい。
6)食品の過半を外国からの輸入に依存する我が国においては、海外における可追溯性の動向を常に把握しておくことが望ましい。
今年度の調査では、食品流通業と食品添加物の製造・流通業を含めなかった。
分担研究3:これらの調査結果を踏まえ、中小規模の施設でも遵守できるようなHACCPシステム構築を目指すために、高度な衛生管理を可能にする施設設備および一般的衛生管理プログラムのあり方を業種ごと、生産方式ごとに整理した。また、作業中の記録取りに関しては、作業中でも簡単に記録することができ、しかも小規模施設でも遵守できるように、冷凍庫・冷蔵庫の温度管理記録はセコム方式で管理、また種々の衛生管理ポイントについては、音声合成・音声認識の技術を取り入れた音声ガイドに従って音声で入力し記録するシステムの設計を行った。なお、これら一連の調査研究には、ヒトと生産現場を一つの単位と考えるシステム工学や,ヒトに対する安全、快適、高率性ならびにヒトは必ず過ちを犯すというヒュ-マンエラ-をも念頭に入れた人間工学の手法を導入して作業を進めているが、今年度は人間工学の概要、特にヒューマン・マシン・インタフェース(Human Machine Interface)の5側面、人間-機械系の役割分担(割当)およびユーザリクアイアメント等をとりまとめた。
分担研究4:上記3点とも現在進行中であるが事前調査では各機関に持ちこまれた真菌による苦情事故の件数は0~100件/年であり、各機関の対応は52%の機関は真菌検査を実施すると答えている。時々実施している機関が33%であり、他は実施していないと答えている。微生物精度管理方法に関する調査及び実験的検討の結果では基本的には文献例示の方法で統計学的な処理が可能であると考えられた。
分担研究5:調査総数は5,572人日、15.27人年であった。この間に163件の下痢が発生していた。これは平均で1人あたり年間10.68回下痢を発症していることになる。また、同一食を食べ同様に下痢を発症した人が存在する例は163件中3件認められた。下痢発症の原因としての食品をあげた例は19件認められたが、推測原因食品及び症状と合わせて検討した結果、食中毒と明確に判断される例は認められなかった。今回の対象者は成人に限定されており、また無作為抽出ではないため、今回の結果を日本人全体に適用することには無理がある。しかし敢えて適用すると、日本全体で年間13億6千万件の下痢が発生していると推定され、この内1.81%(163件中同一食による下痢発症3件の割合)が食物起因であるとすると、日本全体で年間2,500万件の食中毒が発生していることになり、また全下痢の内0.1%が食物起因と仮定すると約140万件の食中毒が発生していることになる。これらの推計方法は日本全体の食中毒の発生数の推計にはなっていないが、発生している食中毒の最低限の見込み値の推計にはなっていると考えられる。
分担研究6:わが国における食品事故のデータベースとして、インターネット上では
食品産業センターの食品事故Q&Aがある。このデータベースでは、製品分類(乳・乳加工品、食肉加工品、水産加工品、パン類、菓子類、漬物類、飲料、冷凍食品、惣菜、弁当調理パン、麺類、豆腐・納豆類、瓶詰めレトルトその他等)とトラブル現象(異味・異臭、かび、危害異物<金属、石、ガラス)>、包装不良、変質、変敗、昆虫、その他の異物、その他異物<夾雑物>、その他)で検索が可能である(http://www.shokusan.or.jp/jikoqa/jikodb.html)。
しかしながら、これらの情報は個別に詳細に検討することはできない。米国では、動物肉、鶏肉、卵を農務省、それ以外を食品医薬品局が所管しているが、食品事故情報がFDAの情報サイトからすべて検索である。
今後、FDA同様製品の回収基準を策定したり、また食品事故対応ガイドラインを検討していく場合、食品事故データベースのあり方について検討する必要があると思われた。
結論
主任研究者:現在、EpiInfo2002の翻訳作業が研究協力者において進行しているが、本年度の研修では翻訳が間に合わなかった。EpiInfo2002の公開が遅れたためである。従ってこの点においても、平成15年度も、本研究を継続する必要がある。このようなCDCの教材の最近の進歩を今後、我々の研修会や研究に取り込んでゆく。また、アウトブレイク事件は集団食中毒事件に限らず、感染症やバイオテロ、化学テロ、職業病などの形態をとることもあるので、そのような食中毒事件以外の健康危機管理への対応もできるように応用面を強化する。
分担研究1:2工場の視察の結果、食品企業のリスク管理のあり方が以下のとおり概観される。
・顧客と消費者の意識が薄い、よって原料、製品のトレーサビィリティが徹底されていない。
・消費者対応の迅速性に欠け、その結果顧客不満足のリスクを誘発する。
・消費者への迅速な対応にあたっては、費用対効果の観点からPL保健の対応が不可欠である。
・市場からの商品の撤去や締め出し、および株価の低下による資金調達不足による財務リスクを招く。
分担研究2:農林水産省が推進しているトレーサビリティを強化する取り組みの目的は、基本的に、製品の付加価値を高めるため(産地表示・有機表示)あるいは製品に関する消費者の主観的な安堵感を増強することにあるものと考えられる。
これに対し、厚生労働省の立場から見た可追溯性ないし製品追遡の意義とは、食品安全上の危険管理に資することである。すなわち、健康上の危害の虞がある食品が流通し、あるいは、消費者に到達した場合、食品の流通・製造経路を遡上し、問題の原材料を迅速かつ正確に同定する。そこから、今度は、同じ原料が使用された全ての製品に向かって遡下していくことにより、効率的な製品回収を進めることができ、健康被害を最小限に抑えることができる。
また、アレルギー源性のある原材料および加工材料については、可追溯性が担保されることにより、初めて正しい食品表示(アレルギー表示)が実現される。
当面の現実的な選択肢としては、ロット番号などをはじめとする適正な食品表示を確保する一方、食品の製造・流通・販売業者に対して、何時、誰からどの原材料を買い、何時、誰に製品を売ったか(最終消費者への販売を除く)を簿上記録に残すようにすることを検討することであろう。
米国や欧州共同体でも一つ風上・一つ風下(One Step Back, One Step Forward)の売買情報記録をもとに可追溯性を担保することが検討されており、可追溯性に関する制度の国際調査にも意を払う必要があろう。
分担研究3:中小規模の施設でも遵守できるようなHACCPシステム構築を目指すための調査研究を行い、以下の成果を得た。
(1)中規模の都市(長崎市、金沢市)で営業している種々の食品製造施設(19施設)を見学し、施設内外の衛生状況ならびにHACCP等に関するアンケ-ト調査を行った結果、いずれの施設においても、衛生管理の必要性や整理・整頓・洗浄・清潔が重要であることを認識していたが、作業中に記録を取ることは不可能であるとの回答を得た。
(2)HACCPシステムを遵守するための効率的で、投資額を抑えた施設・設備のあり方および業種ごとに整理した。
(3)HACCPシステムに耐えうる高度な衛生管理を可能にすることのできる一般的衛生管理プログラムの基礎を築くために『5S』(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ(習慣))考え方を導入するともに、科学的根拠に基づいた洗浄殺菌方法のあり方を整理した。
(4)作業中の記録取りに関しては、作業中でも簡単に記録することができ、しかも小規模施設でも遵守できるように、冷凍庫・冷蔵庫の温度管理記録はセコム方式で管理、また種々の衛生管理ポイントについては、音声合成・音声認識の技術を取り入れた音声ガイドに従って音声で入力し記録するシステムの設計を行った。
(5)ヒトが施設・設備ならびに機械・器具などを有機的に、かつ、安全、快適ならびに効率的に利用できるように、人間工学ならびにシステム手法を導入して作業を進めているが、今年度は人間工学の概要、特にヒューマン・マシン・インタフェース(Human Machine Interface)の5側面、人間-機械系の役割分担(割当)およびユーザリクアイアメント等をとりまとめた。
分担研究4:発生原因食品、季節等、説明変数として用いたこれら5項目により、腸炎ビブリオと他の細菌性食中毒とを81.4%の割合で判別することができた。微生物精度管理には実行上幾つかの問題点があるが、それらを克服して今回5手法を提言することができた。
分担研究5:標本抽出を無作為化すること及び調査票の食中毒推定項目を改良することにより、今回用いた方法で、未届け、未受診を含む食中毒の最低限の発生頻度を推計することが可能と思われる。
分担研究6:本研究により、食品事故データベースの必要性及び必要とされる情報が明らかとなった。今後は、中小企業だけではなく、大企業にもヒアリングを行い、データベースの内容及び食品企業の危機管理プロトコールに資するデータの蓄積が必要であると思われた。
分担研究1:2工場の視察の結果、食品企業のリスク管理のあり方が以下のとおり概観される。
・顧客と消費者の意識が薄い、よって原料、製品のトレーサビィリティが徹底されていない。
・消費者対応の迅速性に欠け、その結果顧客不満足のリスクを誘発する。
・消費者への迅速な対応にあたっては、費用対効果の観点からPL保健の対応が不可欠である。
・市場からの商品の撤去や締め出し、および株価の低下による資金調達不足による財務リスクを招く。
分担研究2:農林水産省が推進しているトレーサビリティを強化する取り組みの目的は、基本的に、製品の付加価値を高めるため(産地表示・有機表示)あるいは製品に関する消費者の主観的な安堵感を増強することにあるものと考えられる。
これに対し、厚生労働省の立場から見た可追溯性ないし製品追遡の意義とは、食品安全上の危険管理に資することである。すなわち、健康上の危害の虞がある食品が流通し、あるいは、消費者に到達した場合、食品の流通・製造経路を遡上し、問題の原材料を迅速かつ正確に同定する。そこから、今度は、同じ原料が使用された全ての製品に向かって遡下していくことにより、効率的な製品回収を進めることができ、健康被害を最小限に抑えることができる。
また、アレルギー源性のある原材料および加工材料については、可追溯性が担保されることにより、初めて正しい食品表示(アレルギー表示)が実現される。
当面の現実的な選択肢としては、ロット番号などをはじめとする適正な食品表示を確保する一方、食品の製造・流通・販売業者に対して、何時、誰からどの原材料を買い、何時、誰に製品を売ったか(最終消費者への販売を除く)を簿上記録に残すようにすることを検討することであろう。
米国や欧州共同体でも一つ風上・一つ風下(One Step Back, One Step Forward)の売買情報記録をもとに可追溯性を担保することが検討されており、可追溯性に関する制度の国際調査にも意を払う必要があろう。
分担研究3:中小規模の施設でも遵守できるようなHACCPシステム構築を目指すための調査研究を行い、以下の成果を得た。
(1)中規模の都市(長崎市、金沢市)で営業している種々の食品製造施設(19施設)を見学し、施設内外の衛生状況ならびにHACCP等に関するアンケ-ト調査を行った結果、いずれの施設においても、衛生管理の必要性や整理・整頓・洗浄・清潔が重要であることを認識していたが、作業中に記録を取ることは不可能であるとの回答を得た。
(2)HACCPシステムを遵守するための効率的で、投資額を抑えた施設・設備のあり方および業種ごとに整理した。
(3)HACCPシステムに耐えうる高度な衛生管理を可能にすることのできる一般的衛生管理プログラムの基礎を築くために『5S』(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ(習慣))考え方を導入するともに、科学的根拠に基づいた洗浄殺菌方法のあり方を整理した。
(4)作業中の記録取りに関しては、作業中でも簡単に記録することができ、しかも小規模施設でも遵守できるように、冷凍庫・冷蔵庫の温度管理記録はセコム方式で管理、また種々の衛生管理ポイントについては、音声合成・音声認識の技術を取り入れた音声ガイドに従って音声で入力し記録するシステムの設計を行った。
(5)ヒトが施設・設備ならびに機械・器具などを有機的に、かつ、安全、快適ならびに効率的に利用できるように、人間工学ならびにシステム手法を導入して作業を進めているが、今年度は人間工学の概要、特にヒューマン・マシン・インタフェース(Human Machine Interface)の5側面、人間-機械系の役割分担(割当)およびユーザリクアイアメント等をとりまとめた。
分担研究4:発生原因食品、季節等、説明変数として用いたこれら5項目により、腸炎ビブリオと他の細菌性食中毒とを81.4%の割合で判別することができた。微生物精度管理には実行上幾つかの問題点があるが、それらを克服して今回5手法を提言することができた。
分担研究5:標本抽出を無作為化すること及び調査票の食中毒推定項目を改良することにより、今回用いた方法で、未届け、未受診を含む食中毒の最低限の発生頻度を推計することが可能と思われる。
分担研究6:本研究により、食品事故データベースの必要性及び必要とされる情報が明らかとなった。今後は、中小企業だけではなく、大企業にもヒアリングを行い、データベースの内容及び食品企業の危機管理プロトコールに資するデータの蓄積が必要であると思われた。
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