骨髄由来の間葉系細胞と生分解性ポリマーを用いた細胞移植(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200830A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄由来の間葉系細胞と生分解性ポリマーを用いた細胞移植(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
梅澤 明弘(国立成育医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 清野 透(国立がんセンター研究所)
  • 大串 始(独立行政法人産業技術総合研究所)
  • 戸口田淳也(京都大学再生医科学研究所)
  • 牛田多加志(東京大学大学院工学系研究科)
  • 渡辺 研(国立療養所中部病院長寿医療研究センター)
  • 大川 広行((株)中外製薬)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
96,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ヒト間葉系細胞の寿命を延長することにより細胞を増殖させ、生分解性ポリマーの足場を併用し広範な骨欠損、全身性の骨形成能低下状態の患者に対する新たな細胞治療法を開発することである。具体的には、ヒト骨髄間質細胞の分離培養、細胞のプロファイルの確定後、遺伝子導入による細胞寿命の延長の検討を行う。それらの細胞を生分解性ポリマーの足場と併用し自家、及び他家移植モデルを作成する。これらの結果に基づき、細胞、及び足場の製剤化の検討、臨床への探索的研究へ着手する。
研究方法
Bone tissue engineeringの有用な細胞源である骨髄間質細胞の寿命は有限であり、出来得る骨組織量もおのずと制限される。遺伝子導入による細胞の寿命延長は大量の細胞を得るひとつの可能性を持った手法と考えられる。我々は90歳の患者骨髄より確立した骨髄間質細胞をクローニングし得られた細胞に遺伝子操作による細胞寿命延長を行い、この細胞の骨再生能力についてin vitroおよび collagen hybrid PLGA meshを用いた免疫不全マウス移植8週における組織像の検討を行った。
結果と考察
in vitroでの骨分化誘導では導入遺伝子の種類による差異は見られるもののvon Kossa染色性細胞の出現、マーカー遺伝子の発現が確認された。In vivoにおいてβTCP及びBMP-4の複合化により新生骨の形成を認めた。この短期間においては細胞の腫瘍性増殖は確認されなかった。
1988年Maniatopoulusらは、デキサメタゾン等を含む培地でのラット骨髄細胞を培養することにより骨様組織が形成されることを報告した。本研究の共同研究者である大串らは、同組織に細胞外マトリックス産生、骨芽細胞活性を同定した。さらに大串らは、無機人工骨とともに骨髄間質細胞を培養することにより人工骨内の多孔質内に培養骨が形成され、動物実験においても移植後1週間で有意な骨形成を生ずることを明らかにとした。ヒト骨髄間葉系細胞においても同様にヌードマウスへの移植において同様の骨形成能が検証されている.しかしながらヒト骨髄間葉系細胞は、現在までの方法では必要な量の細胞数を得るには至らず、広範な欠損に対する再建や骨粗鬆症、慢性関節リウマチに代表される自己の骨再生能の低下した患者に対する治療法としての限界があった。
本研究の推進により、①ヒト骨髄間葉系細胞および生分解性ポリマーの足場を用いた骨再生法の確立 ②骨再生能力低下のある患者に対する同種他家細胞を用いた骨再生法の確立 ③ヒト骨髄間葉系細胞の寿命延長、増殖法の研究から得られる結果に基づくバイオインフォマティクスからの情報の蓄積、それらの方法の安全性、科学性、倫理性の確立することが可能となる。
本研究の分担研究者である清野らにより発見された遺伝子を導入することによって、従来、困難であった腫瘍化を伴わないヒト細胞の寿命延長、増殖が可能となりつつある。また共同研究者である牛田らの開発した生分解性ポリマーを足場とすることで、より整形性が高くなり、広範な骨欠損を再建することが可能となる。これらの技術を応用することによって、マウスモデルにおける治療効果の評価をするとともに、さらなる改善策、新たなプロトコールの考案をはかり、治療モデルとしての科学性、倫理性を確保し、臨床応用を図る。
結論
寿命延長骨髄間質細胞がin vivoにおいて骨分化能を保持していることが確認された。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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