文献情報
文献番号
200200816A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子情報に基づいた抗脂質メディエーター薬適正投与の検討(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
浅野 浩一郎(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
- 山口佳寿博(慶應義塾大学医学部)
- 石坂彰敏(東京電力病院)
- 石井聡(東京大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書（概要版）
研究目的
ロイコトリエン、トロンボキサンなどの脂質メディエーターの作用を抑制する薬剤(抗脂質メディエーター薬)は強力かつ安全な喘息治療薬であり喘息治療の選択肢を拡げた。しかしこれらの薬剤を使用する上での最大の問題点は薬剤の効果に個体差があるにもかかわらず、どの薬剤がどの患者に奏功するのかを事前に予測する有効な手段が存在しないことである。本研究では患者の遺伝子情報に基づいた適切な抗脂質メディエーター薬の選択を可能とするための基礎的、臨床的検討を行うことを目的としている。抗脂質メディエーター薬の効果の個体差を規定する因子は薬物の吸収・代謝などの薬物動態規定因子と、生体の薬剤感受性を規定する脂質メディエーターの産生・代謝酵素、および受容体機能が重要と考えられる。平成14年度はcysLT1拮抗薬の薬物動態規定因子、ロイコトリエン産生酵素、およびロイコトリエン代謝酵素の個体差に関する遺伝的素因に関して基礎的、臨床的検討を行う。
研究方法
日本人中等量喘息患者50名にcysLT1拮抗薬プランルカスト(450 mg/day)を4週間投与し、投与前後での一秒量改善率をプランルカストの臨床効果の指標とした。ロイコトリエン産生酵素の5リポキシゲナーゼ、ロイコトリエンC4合成酵素、ロイコトリエン分解酵素のγロイコトリエナーゼ、ジペプチダーゼの遺伝子多型に注目し、遺伝子多型とプランルカストの臨床効果の関連を単変量解析および多変量解析により検討した。
健常成人8名および日本人中等症喘息患者37名にプランルカスト(オノンカプセル)225 mgを朝食30分後に服用させ、服薬5-11時間後に採血を行った。プランルカスト血中濃度を高速液体クロマトグラフィー・タンデムマススペクトリー法により測定し、さらに喘息患者についてはプランルカスト長期投与時のの一秒量改善率との関連を検討した。ロイコトリエンC4低感受性のC57BL/6Jと高感受性の129マウス株からCysLT1とCysLT2受容体遺伝子のクローニングを行い、両遺伝子の塩基配列やmRNAの発現について、二つのマウス株間で比較を行った。また、CysLT1とCysLT2受容体を培養動物細胞で発現させ、細胞内シグナル伝達機構を解析した。
健常成人8名および日本人中等症喘息患者37名にプランルカスト(オノンカプセル)225 mgを朝食30分後に服用させ、服薬5-11時間後に採血を行った。プランルカスト血中濃度を高速液体クロマトグラフィー・タンデムマススペクトリー法により測定し、さらに喘息患者についてはプランルカスト長期投与時のの一秒量改善率との関連を検討した。ロイコトリエンC4低感受性のC57BL/6Jと高感受性の129マウス株からCysLT1とCysLT2受容体遺伝子のクローニングを行い、両遺伝子の塩基配列やmRNAの発現について、二つのマウス株間で比較を行った。また、CysLT1とCysLT2受容体を培養動物細胞で発現させ、細胞内シグナル伝達機構を解析した。
結果と考察
ロイコトリエン代謝酵素であるγグルタミルロイコトリエナーゼ遺伝子のT459C多型あるいはA989G多型の有無がロイコトリエン受容体拮抗薬プランルカストの肺機能改善効果と相関していた。特にT459C多型は昨年度の研究でプランルカスト反応性との相関が認められたロイコトリエンC4合成酵素遺伝子A(-444)C多型と組み合わせることによりさらに薬剤反応性の良い指標となりうることが示唆された。
プランルカストに対する反応性と薬物動態の個体差との関連を検討した結果、97%の症例では十分な血中濃度が得られており、またプランルカストに対するレスポンダー、ノンレスポンダー間でプランルカスト血中濃度の違いは認められなかったことから、薬物代謝酵素遺伝子の違いによる影響は少ないと考えられた。
システイニルロイコトリエン反応性の異なるC57BL/6Jと129マウスのCysLT1とCysLT2受容体遺伝子を比較した結果129マウスではCysLT2遺伝子内へレトロトランスポゾンが挿入され、発現が低下していた。CysLT2受容体からのシグナルがCysLT1受容体からの炎症性シグナルを減弱ないしは相殺することを示唆するデータも得られ、129マウスでのCysLT2受容体発現低下がロイコトリエン反応性増強をきたした可能性が示唆された。
プランルカストに対する反応性と薬物動態の個体差との関連を検討した結果、97%の症例では十分な血中濃度が得られており、またプランルカストに対するレスポンダー、ノンレスポンダー間でプランルカスト血中濃度の違いは認められなかったことから、薬物代謝酵素遺伝子の違いによる影響は少ないと考えられた。
システイニルロイコトリエン反応性の異なるC57BL/6Jと129マウスのCysLT1とCysLT2受容体遺伝子を比較した結果129マウスではCysLT2遺伝子内へレトロトランスポゾンが挿入され、発現が低下していた。CysLT2受容体からのシグナルがCysLT1受容体からの炎症性シグナルを減弱ないしは相殺することを示唆するデータも得られ、129マウスでのCysLT2受容体発現低下がロイコトリエン反応性増強をきたした可能性が示唆された。
結論
ロイコトリエン産生酵素およびロイコトリエン代謝酵素の遺伝子解析からロイコトリエン受容体拮抗薬の有効性を予測する因子として期待される遺伝子多型が検出された。また、同一の脂質メディエーターに対する複数の受容体の発現バランスが細胞レベルでの脂質メディエーター反応性に影響するという受容体特異的阻害薬を開発、臨床応用する上で重要な基礎データとなるパラダイムが提示された。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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