関節リウマチの先端的治療に関する研究

文献情報

文献番号
200200805A
報告書区分
総括
研究課題名
関節リウマチの先端的治療に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
西岡 久寿樹(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岩倉洋一郎(東京大学医科学研究所ヒト疾患モデル研究センター)
  • 尾崎承一(聖マリアンナ医科大学リウマチ・膠原病アレルギー内科)
  • 高柳広(東京大学大学院医学系研究科免疫学)
  • 妻木範行(大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学)
  • 戸山芳昭(慶応義塾大学医学部整形外科学教室)
  • 中島利博(聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター)
  • 開祐司(京都大学再生医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
825,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
リウマチ性疾患の病態の首座である関節を構成する滑膜、骨・軟骨の病変に関与する遺伝子の転写機能及びタンパクを網羅的に解析する一方、これらを制御する種々のサイトカインの探索的研究を通して、関節リウマチ及びその周辺疾患に対する先端的治療に関する研究を目的とした。また、生物製剤の普及に伴う医療費のコストのシミュレーションの結果により、結果的にはTNFαなどのいわゆる生物製剤にかわる低分子合成化合物の開発とその臨床応用に向けた研究を開始した。
研究方法
リウマチ性疾患の病変に主体的役割を形成する滑膜、軟骨、破骨細胞の役割を、ゲノム解析プロテオームのレベルから次のような方法で解析を試みた。
〈滑膜〉
・ 新規アポトーシス誘導タンパクによる臨床的応用及びTNFα低分子化合物の探索(西岡)
・ 滑膜ライブラリーにより、治療標的となる核内因子の同定をCREBに結合するタンパクをグローブとしてYeast 2 hybrid screeningを施行した。(中島)
・ 軟骨細胞の変性、アポトーシスに関与する分子をヒト患者免疫プロテオームの手法を用いて解析。(西岡、加藤)
・ 軟骨発生に関与するシグナルネットワークに基づき、軟骨再生の制御分子基盤の確立をラットの軟骨欠損モデルとして検討。(開)
・ Swad6を強制的に発現させたマウスを用い、骨芽細胞におけるSmadとシグナルの伝達を検討。(妻木)
・ RANKLによる破骨細胞の活性化とその制御について、各種サイトカイン、インターフェロン、BMPなどの検討。(高柳、妻木)
〈サイトカイン〉
・ 骨・関節、骨破壊に関与するサイトカインネットワークのうち、動物モデル、及び培養細胞を用いてIL-1、IL-R、IL-17、IL-18の役割を解析し、病期の進展に対応するサイトカインプロフィールの確立を検討した。(岩倉、西岡)
・ 臨床的に既に欧米で広く用いられているTNFα製剤の本邦への適応に対応するためのクリニカルパスの確立とその予測的なコスト計算。(尾崎)
・ 疾病負担と現状の医療をベースに、リウマチ性疾患に対する費用効果について検討を加えた。(吉田)
結果と考察
〈新規創薬開発〉
① リウマチの滑膜細胞では、CBPと結合する29個のクローンがNotch-1であり、そのシグナルはTNFαに活性化プロセスが存在することが解明された。
② 企業との共同研究によりキメラ型1gem抗体であるFas/APO-1(DEL098)に強力なリウマチ滑膜細胞のアポトーシスを誘導する機能があり、その臨床応用にめどがついて来た。さらに合成TNFα抑制製剤(DE096)の開発と臨床適応の検討を開始。
③ 免疫プロテオームの手法を用いて網羅的に解析した結果、70個近い分子が患者血清と反応し、主として解糖系酵素由来のタンパクと反応する分子群が明らかにされた。このうちTPI等、幾つかの分子を標的分子として特許申請した。
〈骨、軟骨破壊の分子制御〉
④ 欠損部への移植軟骨は、4週目に本来の軟骨組織の構築が得られた。
⑤ BMPシグナルの不活性により、軟骨の形成を阻害した。
⑥ RANKLは破骨前駆細胞においてNTA1clという転写因子を特異的に誘導した。
⑦ IL-1/IL-8,IL-8は軟骨破壊に、逆にIL-17は関節炎の発症を制御し、この成績に基づいてIL-17分子を標的分子として探索。
〈サイトカイン制御〉
⑧ インフリキシマブ、エタナーセプトの臨床応用に備え、クリニカルパスを検討した結果、これらの適応症例についてのモニターリングを確立した。
⑨ 各種サイトカインのうち、リウマチ病変形成に関するサイトカインはTNFαを中心とし、IL-1/IL-1R,IL-6/IL-6R,IL-8,IL-17,IL-18などのいわゆるサイトカインネットワークの役割を明確化し、病変への進展とサイトカインプロフィールが密接な関連を有することを明らかにした。
今回我々の研究班は、本年度新しくスタートした班であるが、種々の病因から構成されているリウマチ性疾患は極めて多様性のある疾患である。しかしながらその主病変は、滑膜・軟骨・骨であり、これらに共通する項目に的を絞って新規治療の研究創薬を目指した。まず滑膜細胞では、その増殖に関わる幾つかの標的分子が明らかにされ、さらに動物モデル等で得られた網羅的な遺伝子、転写標的分子が創薬の新たな候補として浮上して来た。企業との協同研究より推進しているDE098,DE096等の画期的な新薬、今後臨床的応用のめどをつけつつある。一方、軟骨の破壊、及び修復新規創薬についても相次いで新規分子が単離にされて来ており、軟骨破壊に対する創薬研究の手がかりになっている。一方、臨床的には日本では近い将来臨床的装用が見込まれる抗TNFα抗体の治療に関するプロトコール、その費用対効果比などが検討される一方、効果の多様性についても病因モデル等を用いたサイトカインプロファイル、及び遺伝子多型性の検討がなされており、SNPs等によりその効果予測が可能と考えられる。
結論
今回我々の研究班は新しく本年度スタートしたばかりであるが、次の点が明らかにされた。
① 増殖滑膜、滑膜細胞の抑制のための候補標的遺伝子が滑膜細胞ライブラリーより網羅的に明らか
にされた。
② 軟骨の変性及びアポトーシスを抑制するための候補分子が数多く同定され、今後2年間で幾つか
の研究機関と協同で画期的創薬の開発へつながると考えられる。
③ 骨破壊の治療には特異的に破骨細胞の活性を制御する分子が明らかにされ、そのひとつがγインターフェロン抑制剤などであり、その臨床応用は期待が大きい。
④ 関節炎進展に伴ってサイトカインプロフィールが解明され、サイトカイン療法の効果予測等に新たな手法が見出されつつある。
⑤ 生物製剤を中心とした抗サイトカイン療法にかわる新薬を開発することを目的として、生物製剤にかわる低分子化合物の開発を目指したい。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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