ナノチューブ、ナノ微粒子、マイクロ微粒子の組織反応性とバイオ応用(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200770A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノチューブ、ナノ微粒子、マイクロ微粒子の組織反応性とバイオ応用(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
亘理 文夫(北海道大学大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大森守(東北大学金属材料研究所 附属新素材設計開発施設)
  • 田路和幸(東北大学大学院工学研究科)
  • 橋田俊之(東北大学大学院工学研究科 附属破壊制御システム研究施設)
  • 戸塚靖則(北海道大学大学院歯学研究科)
  • 川崎貴生(北海道大学大学院歯学研究科)
  • 野方文雄(岐阜大学工学部)
  • 羽田紘一(石巻専修大学理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究(ナノメディシン分野)
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
88,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
チタンは通常生体親和性を示すが摩耗粉のような微粒子になると為害性を惹起し、その程度はサイズに依存する。マクロサイズでの親和性に対しミクロな微粒子が為害性を示すことは生体に対する作用機序が一様でないことを示唆する。マクロとミクロの境界となる臨界径、生体適合性のサイズ依存性、その作用機序を解明するために、サイトカイン検出など生化学的細胞機能性試験に基づく材料の評価法を導入し、動物実験による組織反応の病理学的検索と比較した。摩耗粉に対する対策として高硬度の窒化チタンに注目し、引っかき硬さ、摩耗試験を含む機械的特性試験とバルク体/微粒子の動物実験を行い耐摩耗性表面窒化チタンインプラントの開発研究を行った。次にカーボンナノチューブ、ナノ/マイクロ微粒子のバイオ応用を図るために、まず光触媒二酸化チタンに可視光応答性を付与し抗菌性と歯牙漂白への応用研究を行った。またアモルファスカ-ボン、金属触媒が混在し、粒子どうしが凝集する現状のナノチューブに対し、バイオ応用に必要な試料作製・表面改質法を開発し、遺伝子導入のキャリアー、組織再生時のスカフォールド等、ミクロ単体としての応用を図った。またインプラント、人工臓器用材料等、マクロサイズのバイオマテリアルへの応用に向け、放電プラズマ法により焼結体を作製し機械的特性と生体適合性を調べた。さらにナノチューブのDNA高分解能電顕観察用支持体への応用、ナノ磁性微粒子の生成と特性、アクチュエータ用ナノ分子構造制御高分子ゲルの強化研究を行った。
研究方法
Ti、Fe、Ni、TiO2、ナノロッド・単層/多層カ-ボンナノチューブ等の微粒子について粒度の調整、ICP元素分析による溶出試験を行った後、ヒト好中球の細胞生存率、LDH、活性酸素、サイトカイン産生量の測定、細胞形態のSEM観察の細胞機能性試験および動物実験を行った。耐摩耗性改善のためにJIS1種純チタンを1気圧窒素雰囲気下、850゜C、7時間の条件で表面窒化し、ビッカ―ス硬さ、マルテンス引っかき硬さ、超音波スケーラー摩耗試験、および棒状インプラント、粒径1μmの微粒子の動物実験を行った。光触媒に可視光応答性を付与するために、粒径300nmと6nmのアナターゼに希釈原子吸光用標準液中で365nmの紫外光照射し各種金属イオンを光析出させた。光触媒能を470nmをピ―クとする歯科用光重合器照射時のメチレンブルー溶液の色素分解能から評価し、その応用として齲蝕原生菌streptococcus mutansに対する抗菌性試験とヒト抜去歯牙の漂白試験を行った。バイオ用ナノチューブとしてア―ク放電による大量合成、加熱焼却・酸処理による精製高純度化、イオン基付加による可溶・単離・分散化、剪断加工・強酸処理による切断・サイズ制御を行い、また遺伝子/糖鎖チップ等の結合のためビオチン化、ポリスチレンスルホン酸、インターカレーター等による表面修飾を行った。高分解能電顕による合成、単離、形状の確認とともに、触媒金属周囲のEXAFS構造解析を行った。
結果と考察
チタン微粒子に対する細胞生存率、LDH、活性酸素、サイトカイン放出量、細胞の形態変化等の細胞機能性試験では100μm以下になるとサイズ依存性が顕現化し、特に細胞よりも小さな10μm以下では貪食を誘発し顕著な細胞毒性を発現した。ICP元素分析ではイオン溶出
は認められず、溶解イオンによる化学的効果とは異なる物理的サイズに由来する細胞毒性効果である。炎症性サイトカインIL-1βは典型的な単調増加を示すのに対し、TNF-αは3μm以下で急激な増加を示し顕微鏡下で観察される貪食作用に伴い特異的に放出される。動物埋入試験では150μm粒子は各粒子ごとに線維性結合組織で被包化され巨視的サイズのチタンと同様な親和性を示したが、粒径が小さくなるにつれ炎症性細胞浸潤が亢進し、3μm粒子では巨食細胞によって貪食され長期間炎症性反応が継続した。およそ100μm、10μmを臨界径とする物理的サイズ効果はin vitro、in vivoの結果とも定量的によく一致した。ともに生体親和性だが不溶性のTiと溶出性のFeはよく似たサイズ依存性を示した。Niは細胞生存率が低く、LDH放出量は高かったが、活性酸素、サイトカイン放出量は低下し、顕微鏡では細胞の破壊が観察された。摩耗粉への対策としてチタンの表面窒化により、硬さ、引っかき硬さ、耐摩耗性とも約10倍増大し耐摩耗性が著しく改善され、動物実験ではバルク体の生体親和性、微粒子の為害性ともチタンとほぼ同等であった。従来チタンインプラントのアバットメント部の超音波スケーラーによる歯石除去には、傷をつけないためにプラスチック製チップを用いていたが、表面窒化チタンではステンレス製チップを用いても研磨傷を形成せず除去作業が可能で、生体親和性と耐摩耗性を兼備するインプラントとして期待される。金属イオン修飾した可視光応答型光触媒二酸化チタンは、歯科用光照射器でs.mutansに対し85%以上の抗菌効果を示し、また従来35%過酸化水素水を用い様々なリスクがあった歯牙漂白も過酸化水素水なしに20分の照射で十分な漂白効果が得られた。ナノチューブのバイオ応用の一つとして、過塩素酸水溶液により精製し両性イオンミセルにより可溶化後、インターカレーター付加によりプラスミドを結合したナノロッドを担体としてリン酸カルシウム法による遺伝子導入を試みたが、発現が認められなかった。これは至適サイズ200nmに対し、形状が直径200nm長さ2μmと長大なためであると考えられる。またナノロッド添加に対しマウス頭蓋骨由来骨芽細胞株MC3T3-E1細胞とヒト骨肉腫由来骨芽細胞様細胞株MG-63細胞の培養後の生細胞数は増殖促進、抑制と相異なる傾向を示した。さらにヒトマクロファージ系細胞株THP-1細胞はToll-like receptor 2を介してナノロッドを認識し、転写因子NF-κBが活性化することによりTNF-α産生が誘導される細胞認識・サイトカイン放出機序を明らかにした。放電プラズマ法で作製したナノチューブ焼結体は最大荷重示現後、破断までの変位が大きな準脆性的な挙動を示し、セラミックスとしては特異的な高破壊靭性を示した。ラット腹部皮下埋入試験では線維性結合組織に被包化され、集塊内粒子間にもコラーゲン線維の産生が多数認められた。DNA繊維の高分解能電顕観察のためにグリッド孔が0.1μm程度の観察用支持体としてナノチューブを応用した。液相反応法により作製したFe304ナノ微粒子の磁気特性は粒径に依存して変化しその特異磁性は表面磁気異方性の影響を受けることがシミュレーション計算から示唆された。高分子ゲルのNafionは積層構造化により電界下における発生力を通常の3倍まで増大させ、塩基性環境下で分解しやすいポリアクリロニトリルゲルは高温加熱処理により耐久性を著しく向上できた。
結論
材料の生体適合性はおよそ100μm以上のマクロサイズでは主としてイオン溶出による化学的効果に依存する。しかし100μm以下ではin vitroとin vivo試験ともにサイズの縮小につれ細胞刺激性が亢進しサイズ・形状等の物理的効果が顕在化する。特に細胞よりも小さな10μm以下では貪食を誘発し顕著な細胞毒性を発現させ、この傾向はμmからnm領域まで続いている。摩耗粉が為害性を惹起するチタンへの対策としては生体親和性がほぼ同等で耐摩耗性が著しく高い表面窒化チタンインプラントが有効である。また可視光応答型二酸化チタン光触媒を開発し、現在の歯科用光照射器で十分な抗菌効果と歯牙漂白効果を得ることができた。カーボンナノ
チューブの大量合成、精製高純度化、可溶・単離・分散化、切断・サイズ制御、表面修飾方法を開発し、細胞による認識・サイトカイン放出機序の解析、遺伝子導入用担体としての試用を行った。放電プラズマ法で作製したバルク焼結体は準脆性的な挙動を示し、セラミックスとしては特異的な高破壊靭性を示した。

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