文献情報
文献番号
200200761A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノ制御表面の創生とその血管内手術デバイスへの展開(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 博夫(京都大学再生医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 中山泰秀(国立循環器病センター研究所生体工学部)
- 池内 健(京都大学再生医科学研究所)
- 滝 和郎(三重大学・医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究(ナノメディシン分野)
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
28,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
血管内手術をより安全に行えるようにデバイス(ステント、コイル、カテーテル等)の設計、その作製に必要な材料と加工技術、さらに、手術法などを含めた総合的な研究・開発を進める。開発を目指したデバイスは、脳動脈瘤の治療に用いる器質化促進コイル、頭蓋内血管に適用できる柔軟性にとみ、かつ、X線透視下で視認性も高いステント、さらに、動脈瘤を血管内から封鎖するカバードステントである。
本年度は最終年度であるため、試作デバイスの有効性の実証を目的に、主に動物実験による評価を行った。
本年度は最終年度であるため、試作デバイスの有効性の実証を目的に、主に動物実験による評価を行った。
研究方法
ラット頚動脈動脈瘤モデル:左総頚動脈を露出させ、内頚動脈と外頚動脈の分岐部を縫合糸で結紮した。結紮部より10mm程度心臓側の総頚動脈をシュバルツで固定し、一時的に血流を遮断した。結紮部より1mm程度心臓側の総頚動脈の血管壁に穴を開け、滅菌した多糖類コーティングコイルまたはPt-Wストレートコイルを留置した。留置後、コイルを挿入した穴よりも1mm程度心臓側を縫合糸で結紮すると同時にシュバルツを取り外し、血流を回復させた。
犬in vivo金ステント操作性評価:麻酔下でビーグル犬大腿動脈へ6Frシースを挿入し、引き続き6Frガイディングカテーテルを椎骨動脈へ配置した。ヘパリン(100IU/kg)を静注投与後、血管造影を行った。血管造影後、0.014"のガイドワイヤを椎骨動脈へ挿入し、ガイドワイヤに沿って金ステントをマウントした拡張時径3.0mm、拡張時長さ20mmのバルーンを有するモノレール型PTCA用バルーンカテーテルを椎骨動脈に配置した。バルーンを4atmで30秒間加圧し金ステントを拡張、留置した。血管造影を行った。
犬動脈瘤モデル:犬頸部の静脈片の一端を縛り、他端を動脈の切開創に縫合することで動脈に袋状の枝を作製し、これを実験的な動脈瘤とした。バーステントを犬大腿動脈の切開創から挿入し、頚部の動脈瘤開口部に誘導した。開口部を塞ぐようにバルーンを拡張させ、ステントを留置した。
犬in vivo金ステント操作性評価:麻酔下でビーグル犬大腿動脈へ6Frシースを挿入し、引き続き6Frガイディングカテーテルを椎骨動脈へ配置した。ヘパリン(100IU/kg)を静注投与後、血管造影を行った。血管造影後、0.014"のガイドワイヤを椎骨動脈へ挿入し、ガイドワイヤに沿って金ステントをマウントした拡張時径3.0mm、拡張時長さ20mmのバルーンを有するモノレール型PTCA用バルーンカテーテルを椎骨動脈に配置した。バルーンを4atmで30秒間加圧し金ステントを拡張、留置した。血管造影を行った。
犬動脈瘤モデル:犬頸部の静脈片の一端を縛り、他端を動脈の切開創に縫合することで動脈に袋状の枝を作製し、これを実験的な動脈瘤とした。バーステントを犬大腿動脈の切開創から挿入し、頚部の動脈瘤開口部に誘導した。開口部を塞ぐようにバルーンを拡張させ、ステントを留置した。
結果と考察
研究結果=ラット頚動脈動脈瘤モデルを用いた多糖類コーティングコイルの器質化評価を行った。いずれの留置期間においても、コイルを留置した血管の破裂に伴う出血や血腫の形成などの合併症は認められなかった。留置2週間後では、多糖類をコーティングしたコイルにおいて顕著に炎症性細胞の遊走や増殖が認められ、瘤内の器質化が進行していることが確認された。sham operationでは器質化の進行は全く認められなかったこと、Pt-Wストレートコイルでは比較的器質化の進行が軽度であることから、コーティングした多糖類の効果により器質化が進行したことが強く示唆された。キトサンとカードランはsham operationならびに白金コイルより有意に高い器質化性能を示すことを明らかになった。
犬を用いてin vivo金ステント操作性評価を行った。2頭のビーグル犬の両側の椎骨動脈に合計11個の金ステント(金メッキ時間60分間)を留置した。いずれのステントとも椎骨動脈への導入、留置は大きな問題なく可能だった。留置2週間後の血管造影から、ステントの変形の程度はステントと頚椎の位置関係により異なること、頚椎の真上に位置する部分ではほとんど変形がなく、頚椎と頚椎の間の真上に位置する部分では比較的大きい変形が認められることが示された。これは、術後のビーグル犬の首の曲げ運動等により留置したステントに大きな外力が加わり、ステントに塑性変形が生じたと考えられる。脳動脈瘤治療用ステントとして金ステントを使用する場合、留置部位は頭蓋内であるためステントに外力はほとんど加わらないため、ここで観察された外力によるステントの塑性変形は大きな問題にはならないと推定される。金ステント留置血管の染色切片から、軽度の新生内膜の形成とストラット周囲への炎症性細胞の顕著な浸潤が認められた。組織反応が大きかった原因は不明であるが、可能性のある一つの原因として、金ステント作製時に使用した銅の残存が挙げられる。
動脈瘤閉塞用ステントの開発を行った。作製したヘパリン化カバーステントを動脈内の動脈瘤開口部に留置すると、数分内に瘤内への血液の流入は完全に遮断され、瘤内は完全に封鎖された。1週間ほどで開口部上のフィルム内腔面はほぼ完全に内皮化された。3ヶ月までの観察期間内での血管造影では全てにおいて動脈瘤内の完全器質化を認め、再瘤化は皆無であった。内膜肥厚は軽度で開存性には全く問題なかった。コイル塞栓術では対応困難であった大きな開口や瘤径を有する頭蓋外症例に対して有用な新規治療法を提供できると言える。
犬を用いてin vivo金ステント操作性評価を行った。2頭のビーグル犬の両側の椎骨動脈に合計11個の金ステント(金メッキ時間60分間)を留置した。いずれのステントとも椎骨動脈への導入、留置は大きな問題なく可能だった。留置2週間後の血管造影から、ステントの変形の程度はステントと頚椎の位置関係により異なること、頚椎の真上に位置する部分ではほとんど変形がなく、頚椎と頚椎の間の真上に位置する部分では比較的大きい変形が認められることが示された。これは、術後のビーグル犬の首の曲げ運動等により留置したステントに大きな外力が加わり、ステントに塑性変形が生じたと考えられる。脳動脈瘤治療用ステントとして金ステントを使用する場合、留置部位は頭蓋内であるためステントに外力はほとんど加わらないため、ここで観察された外力によるステントの塑性変形は大きな問題にはならないと推定される。金ステント留置血管の染色切片から、軽度の新生内膜の形成とストラット周囲への炎症性細胞の顕著な浸潤が認められた。組織反応が大きかった原因は不明であるが、可能性のある一つの原因として、金ステント作製時に使用した銅の残存が挙げられる。
動脈瘤閉塞用ステントの開発を行った。作製したヘパリン化カバーステントを動脈内の動脈瘤開口部に留置すると、数分内に瘤内への血液の流入は完全に遮断され、瘤内は完全に封鎖された。1週間ほどで開口部上のフィルム内腔面はほぼ完全に内皮化された。3ヶ月までの観察期間内での血管造影では全てにおいて動脈瘤内の完全器質化を認め、再瘤化は皆無であった。内膜肥厚は軽度で開存性には全く問題なかった。コイル塞栓術では対応困難であった大きな開口や瘤径を有する頭蓋外症例に対して有用な新規治療法を提供できると言える。
結論
脳血管内手術をより安全に行えるようにデバイス(ステント、コイル、カテーテル等)の設計、その作製に必要な材料と加工技術、さらに、手術法などを含めた総合的な研究・開発を進めてきた。離脱式コイルによる脳動脈瘤の治療を確実にするために、留置後の瘤内器質化を促進させるコイル(器質化コイル)の開発を進めた。キチン、キトサン、カードランの3種類の多糖類コーティングしたコイルを試作し、器質化性能をin vivoで評価したところ、キトサンとカードランはsham operationならびに白金コイルより有意に高い器質化性能を示すことを明らかにした。wide-neck型脳動脈瘤からのコイルの逸脱を防止するのに用いるステントの開発を進め、金を素材として用いたステントは柔軟性が高く、また、X線透視下で視認性も高く、頭蓋内血管に用いることができることを明らかにした。動脈瘤を血管内から封鎖するカバードステントの開発を行った。作製したヘパリン化カバーステントを動脈内の開口部に留置すると、数分内に瘤内への血液の流入は完全に遮断され、瘤内は完全に封鎖された。1週間ほどで開口部上のフィルム内腔面はほぼ完全に内皮化された。以上のように、それぞれの開発目標を順調に達成し、近い将来臨床使用可能なデバイスの開発を行えたと考える。
公開日・更新日
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