自己免疫疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
200200695A
報告書区分
総括
研究課題名
自己免疫疾患に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
小池 隆夫(北海道大学大学院医学研究科分子病態制御学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 宮坂 信之(東京医科歯科大学内科学第一講座)
  • 竹内 勤(埼玉医科大学総合医療センター)
  • 鍔田 武史(東京医科歯科大学難治疾患研究所ウィルス・免疫疾患研究部門)
  • 吉崎 和幸(大阪大学健康体育部健康医学第一部門)
  • 広瀬 幸子(順天堂大学医学部病理学第二講座)
  • 松下 祥(埼玉医科大学免疫学講座)
  • 石津 明洋(北海道大学大学院医学研究科分子病理分野)
  • 江口 勝美(長崎大学医学部附属病院第一内科学教室)
  • 加藤 智啓(聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター)
  • 桑名 正隆(慶応義塾大学医学部先端医科学研究所)
  • 佐々木 毅(東北大学大学院医学系研究科免疫・血液制御分野)
  • 篠原 隆司(京都大学大学院医学研究科う先端領域融合医学研究機構)
  • 菅井 進(金沢医科大学血液免疫内科学)
  • 田中 良哉(産業医科大学医学部第一内科学教室)
  • 徳永 勝士(東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学教室)
  • 西村 孝司(北海道大学遺伝子病制御研究所疾患制御部門・免疫制御分野)
  • 橋本 博史(順天堂大学医学部膠原病内科学講座)
  • 原 まさ子(東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター)
  • 平形 道人(慶応義塾大学医学部内科リウマチ研究室)
  • 松浦 栄次(岡山大学大学院医歯学総合研究科病態制御科学専攻病態機構学講座細胞化学分野)
  • 簑田 清次(自治医科大学アレルギー膠原病学部門)
  • 三村 俊英(埼玉医科大学リウマチ膠原病科)
  • 山崎 雅英(金沢大学医学部附属病院内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 特定疾患対策研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自己免疫疾患の中から研究調査の対象を全身性エリテマトーデス(SLE)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)、Sjogren症候群(SjS)の4疾患に絞り、各々の疾患における免疫系の異常の特徴を明らかにし、疾患特異的治療戦略を構築し、患者のQOLの向上を計り、さらには病気の治癒を目指すために以下の研究を行った。
1. HTLV-I env-pX遺伝子導入ラットにおけるCD25+CD4+ T細胞の機能異常に関する研究。
2. PD-1受容体欠損マウスにおける自己免疫性拡張型心筋症の解析。
3. CD25+CD4+T細胞によるCD4+T細胞の増殖抑制メカニズムの解析。
4. 免疫バランスの自己免疫病における意義。
5. 全身性エリテマトーデス患者T細胞機能異常の分子機序に関する研究
6. クラスII HLA分子を介したシグナル伝達による免疫制御機構に関する研究。
7. 全身性自己免疫疾患における自己抗体産生機構についての研究。
8. 抗リン脂質抗体産生を誘導するβ2-グリコプロテインI分子修飾に関する研究。
9. 抗リン脂質抗体症候群の診断法:酸化LDL・β2-グリコプロテインI複合体(自己抗原)とそれらの免疫複合体の測定意義。
10. 抗リン脂質抗体症候群に対するrituximab(リツキサン)の有用性に関する研究
11. 抗リン脂質抗体症候群の診断における抗プロトロンビン抗体の測定意義について。
12. 膠原病に合併する難治性間質性肺炎に対するタクロリムスの有用性に関する検討。
13. Amyopathic Dermatomyositis患者血清中の140kDa蛋白を認識する自己抗体に関する研究。
14. 実験的自己免疫性筋炎(EAM)の作製と免疫学的解析に関する研究。
15. IL-6阻害による間質性肺炎の治療法の開発に関するに関する研究。
16. シェーグレン症候群唾液腺上皮細胞死におけるFasおよびCD40の役割に関する研究。
17. シェーグレン症候群の発症および進展機序に関する研究。
18. C1q遺伝子多型がC1q産生ならびにループス腎炎におよぼす影響。
19. SLEをはじめとするリウマチ性疾患感受性遺伝子に関する研究。
20. SLEにおける多剤抵抗性遺伝子発現とその制御に関する研究。
21. 膠原病におけるIL-15の検討:難治性病態との関連
22. 臓器障害性抗DNA抗体の惹起因子の研究。
23. 全身性自己免疫疾患における自己抗体の網羅的検索に関する研究。
24. スタチン類の自己免疫疾患に対する治療に関する研究。
研究方法
結果と考察
自己免疫疾患を発症するenv-pXラット(ヒトT細胞白血病ウイルスHTLV-Iのenv-pX遺伝子を導入したトランスジェニックラット)について、末梢CD25+CD4+ T細胞の量的ならびに質的異常を検討しこの細胞ではCTLA-4やFoxp3の発現低下があり、これらの分子異常と細胞機能の異常が関連している可能性が示唆された。
PD-1遺伝子は免疫グロブリンファミリーに属する膜蛋白質をコードし、活性化したT、B、及びミエロイド系細胞に発現が認められる。PD-1欠損マウスを作製し、PD-1欠損マウスがC57BL/6系統においては自己免疫性の糸球体腎炎および関節炎を、BALB/c系統においては自己免疫性の拡張型心筋症を発症することを示した。拡張型心筋症は原因不明の致死の疾患であり、現段階では極めて治療の困難な疾患である。拡張型心筋症を発症したPD-1欠損マウスが産生する心臓特異的抗体の抗原を精製・同定し、心臓型トロポニンIであることを明かとした。また、心臓型トロポニンIに対するモノクローナル抗体を作製、野生型マウスに投与することにより、拡張型心筋症を惹起することに成功した。この結果は、心臓抗原に対する自己抗体により拡張型心筋症が発症しうることを初めて示したものであり、これまで心臓移植しか治療法がなかったこの難治性疾患に対し、新たな治療法確立への具体案を示した。
ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)の内、CD25+CD4+T細胞(抑制性T細胞;Treg)が免疫系において抑制的な役割を果たすことが明らかとなり、自己免疫疾患においてこの抑制性T細胞の果たす役割が注目されている。我々はこの抑制機序の少なくとも一部が抗原提示細胞の機能抑制であることを見出し、更にこれまでアナジーにあるとされてきた抑制性T 細胞が他の活性化T細胞依存性に増殖することから、新たな免疫系のネガティブフィードバックシステムを提唱した。
免疫バランス制御に関与する免疫担当細胞の性状や調節機構を明確にするとともに、それらの自己免疫病発症における意義を明確にすることを試みた。その結果、NKT, NK, T細胞活性化におけるDCの役割を追求して自己免疫病発症感受性の異なるBALB/cとC57BL/6マウスにおいてはNKT 活性化におけるDCの機能が遺伝的に異なることを発見した、さらに、BALB/cやC57BL/6マウスにおいては、CD4+T細胞や、CD8+T細胞の獲得性免疫に関与する細胞群のうち、いわゆるメモリータイプT細胞の機能に遺伝的差異があることも明確にした。
全身性エリテマトーデス(SLE)における末梢血T細胞機能の分子機序として、T細胞レセプターζーCD3複合体からの早期シグナル伝達に欠陥が存在し、解析した症例の60%に、TCRζ鎖の蛋白合成低下が、一部の症例には異常スプライシングを伴ったメッセージ異常が見い出された。TCRζ鎖蛋白合成障害に、この異常スプライシングを受けたTCRζ鎖mRNAヴァリアントがどのように関与しているかは不明である。その分子機序をin vitro 翻訳システムで検証すると共に、これらヴァリアントmRNAを安定して発現するT細胞株を樹立し、それを用いてこのヴァリアントTCRζ鎖が、細胞内でどのような機能異常と関連しているのかを明らかにした。
近年、抗原提示細胞がT細胞に抗原提示する際に、HLAクラスII分子を介して抗原提示細胞側にも刺激が入ることが明らかになってきている。HLAクラスII分子は、ヒトの活性化T細胞上にも発現しているが、その機能については不明であった。本研究では、活性化されたCD4陽性T細胞に発現しているHLA-DR分子を介するシグナルが、少なくともRap1とp27Kip1の発現増強を通して、T細胞のアナジー誘導に貢献していることを明らかにした。
自己抗体産生制御機構を解明するために、CD40LトランスジェニックマウスにおけるBリンパ球自己トレランス異常と産生される自己抗体の性状について検索した。その結果、中枢リンパ組織でのトレランス機構と末梢リンパ組織でのトレランス機構で標的となる自己抗体の性状が異なることが明らかとなった。この結果から、自己免疫疾患で産生される自己抗体の性状から、どのような自己トレランス機構に異常があるのかを診断できる可能性が示唆された。
抗リン脂質抗体症候群(APS)における抗β2GPI抗体産生は正常のT細胞レパトワに存在するβ2GPI反応性CD4+T細胞の活性化による。β2GPI反応性T細胞はDRB4*0103拘束性にリン脂質結合ドメインを含むエピトープ(p276-290)を認識する。ただし、p276-290は抗原提示細胞(APC)におけるnativeなβ2GPIからのプロセッシングでは作られないことから、何らかの要因によるAPCでのp276-290の提示がβ2GPI反応性T細胞の活性化を介して抗リン脂質抗体産生を誘導している可能性がある。本年度はAPS患者由来の?2GPI反応性CD4+T細胞クローン株を用いてAPCにおけるp276-290の発現機構を追究した。
酸化LDL-β2-GPI?間での複合体形成の機序についてさらに検討した結果、β2-GPIと酸化LDLが静電的な相互作用で結合した後、Schiff base adductなどによる安定な共有結合が現れることが明らかとなった。患者血中には、この種の安定型β2-GPI・酸化LDL複合体が存在する。さらに、酸化LDL・β2-GPI複合体に対する自己抗体の測定法および血中酸化LDLの測定法を確立しAPSにおける臨床意義について解析を行った。その結果は、APSの臨床症状(動・静脈血栓など)と、血中酸化LDLおよび酸化LDL・β2-GPI複合体に対する自己抗体、もしくは、それらの免疫複合体の出現との間に有意な関連があることが明らかになった。
非ホジキンリンパ腫および治療抵抗性特発性血小板減少性紫斑病に合併した抗リン脂質抗体症候群3症例に対しCD20に対するモノクローナルキメラ抗体であるrituximabを投与し、その有用性を検討した。全症例で投与1ヵ月後には抗カルジオリピン抗体は陰性となり、上昇していたプロトロンビンフラグメント(F1+2)も正常値となった。重篤な副作用は認められず、本症候群に対する新規治療法となりうる可能性が示唆された。。
抗プロトロンビン抗体は重要な抗リン脂質抗体のひとつであるが、APSの臨床症状との相関が疑問視され、APSの診断には採用されていなかった。しかし抗プロトロンビン抗体は測定法によって結果がまったく異なっている。これまでの検討から、ホスファチジルセリンを固相化してカルシウムの存在下でプロトロンビンとの複合体をつくってこれを抗原とするホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(APS/PT)がAPSのマーカーとなりうることがわかった。APT/PS は APS の臨床症状に特異性の高いマーカーとしての役割をもつ可能性が示された。また、LAの補助診断として有用である。モノクローナルAPS/PTをもちいた半定量LAをおこなうと著しく高い感度でAPS のスクリーニングが可能であることも明らかになった。
膠原病に合併する難治性間質性肺炎に対する新たな治療法を開発する目的で、タクロリムスの有用性について検討を開始した。症例検討によりその有用性が示唆され、従来予後不良とされた膠原病に合併する難治性間質性肺炎の新たな治療法が開発される可能性がある。今後前向き検索的・検証的治験を企画・実行し、更なる検討を進めていく予定である。
多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)において間質性肺炎(Interstitial Lung Diseases, ILD)は,重要な予後因子であるが,特にDMの中で,筋炎症状に乏しい症例(Amyopathic DM,ADM)に治療抵抗性の急速進行性間質性肺炎(Acute Interstitial Pneumonia, AIP) を合併することが知られている。そのような症例では,抗US抗体が特異的に検出された。
多発性筋炎の優れた実験モデル動物作製の報告は少ないが、近年、ミオシン分画中に含まれるC-proteinに強い筋炎惹起性があることが報告され、新しい筋炎モデルとして注目を集めている。本研究では、LewisラットへのC-proteinの免疫にて、明らかな実験的自己免疫性筋炎 (experimental autoimmune myositis, EAM)を誘導できることが確認された。筋炎組織にはCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、およびマクロファージが浸潤していた。また、浸潤単核細胞あるいは血管内皮細胞は、MCP-1とそのレセプター、IFN-?、ICAM-1、およびintegrin α4を発現していた。これらの分子が、本筋炎モデルにおける病態形成に関与していると考えられた。
間質性肺炎は膠原病患者の予後を左右する合併症の一つである。ステロイドや免疫抑制剤に抵抗性を示す症例があり、新しい治療法の開発が必要とされている。リンパ球性間質性肺炎(LIP)を合併した26例のキャッスルマン病患者に対しヒト化抗IL-6レセプター抗体(MRA)を使用し、高分解能CT(HRCT)を用いて検討した。MRAは、炎症性細胞浸潤に基づくと考えられるHRCT上での小葉中心性粒状影、小葉間隔壁の肥厚、気管支血管束の肥厚、スリガラス影を有意に改善した。一方、不可逆性変化と考えられる浸潤影、嚢胞は改善しなかった。したがって、IL-6阻害治療は炎症細胞浸潤が主体のLIPの治療に有効であることが検証された。
シェーグレン症候群(以下SS)唾液腺においては、リンパ球からなる細胞浸潤が生じ、腺細胞死、腺機能廃絶へと至る。上皮細胞死におけるFasおよびCD40の役割について分子学的検討を行った。その結果、SS唾液腺においては浸潤リンパ球から産生されるIFNγにより活性化された唾液腺上皮細胞がFasおよびCD40を発現し、その状態でFasLおよびCD40Lを発現する活性化T細胞より刺激を受けてアポトーシスにより死に至るメカニズムが示唆された。
シェーグレン症候群(SS)の発症および進展機序について、Toll-like receptors(TLRs)との関連性を検討した。SS口唇小唾液腺組織の腺房細胞、導管上皮細胞、浸潤単核球にはTLR2、TLR4およびMyD88の発現が検出された。SS唾液腺細胞に発現するTLRsはサイトカイン産生や副刺激分子発現を介し、SS唾液腺組織の慢性炎症反応を増強することが示唆された。
SLEは多くの感受性遺伝子が関与する代表的多遺伝子疾患で、病因解明には遺伝要因の解明が必須である。今回我々はSLE自然発症New Zealandマウス系を用いて、ループス腎炎感受性遺伝子のQLT解析を行った。その結果、第4染色体上にコードされるC1q遺伝子のNZB型多型が、C1q産生能の低下を来たし、これがループス腎炎発症の一感受性要因として働いている可能性を見出した。
全身性エリテマトーデス(SLE)および関節リウマチ(RA)を中心とするリウマチ性疾患の疾患感受性遺伝子を見出す目的で、本年度は、LIR1(ILT2, LILRB1), BAFF-R遺伝子の多型スクリーニングと関連解析を施行し、LIR1の細胞外領域多型がHLA-DRB1 shared epitope陰性の関節リウマチ(RA)と有意な関連を示し、細胞内領域多型がSLEと関連する傾向を示すこと、BLySとBAFF-Rの遺伝子型の組み合わせがRAと関連することを見出した。さらに、以前SLEとの関連を報告したHLA-DRB1およびFc?受容体IIb遺伝子の関連をタイ人集団において検討し、それぞれDRB1*1502, FCGR2B-232Tおよび3B-NA2の関連が検出された。これらの知見と日本人集団との比較は、疾患感受性遺伝子をさらなる限局化や、疾患との関連の機序の検討のうえで、有用な情報を与えると考えられる。
全身性エリテマトーデスSLEの治療に於いては、ステロイド薬や免疫抑制薬を用いた薬物療法を主体とするが、これらの薬剤に対する抵抗性獲得とその克服は、重要な問題点である。疾患活動性が高いSLEの活性化リンパ球では既にP糖蛋白質が発現し、治療不応性を齎す事が示された。即ち、リンパ球上のP糖蛋白質発現の評価は、薬剤耐性や不応性の臨床的指標として治療方針決定において有用であり、P糖蛋白質特異的拮抗薬による不応性解除によるテーラーメード医療の実践の可能性が示唆された。
膠原病で血中IL-15を測定し、臨床所見との関連を検討した。膠原病の中では、結節性多発動脈炎、強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎で高値で、血管炎・間質性肺炎(IP)・血球貪食症候群といった難治性病態と関連していた。IL-15高値の症例は予後が不良で、剖検ではDiffuse Alveolar Damage等の組織破壊が認めら、モデルマウスへのIL-15投与実験でも類似の傾向を認めた。IL-15増加の頻度の高いIPを併発した症例ではT細胞のIL-2R/IL-15Rγ鎖の発現が高い傾向を示し、IL-15によるT細胞の異常活性化の可能性が示唆された。
臓器障害性抗DNA抗体を惹起する因子の研究はSLE発症の解明、原因療法開発に直結する可能性を持つ。本邦のWHOⅣ型ループス腎炎に共通して発現するイディオタイプを有するヒトモノクロナル抗DNA抗体O-81をプローブとして、SLE例cDNAライブラリーの発現系を用いて、O-81と結合しうる因子(蛋白)を追求した。
炎症性筋疾患、全身性エリテマトーデスなどの全身性自己免疫疾患ではさまざまな自己抗体が報告されているがその網羅的包括的な把握は十分でない。そのため、病因病態に関与する自己抗体・自己抗原を網羅的検索が必要である。プロテオミクスの手法により炎症性筋疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ベーチェット病などにおける自己抗体の網羅的な検索を試みた。これにより複数の自己抗原が同時に検出され、また、mass fingerprinting法により、cofilinなどの新規自己抗原を同定した。
スタチン類の多面的効果としての抗リウマチ作用の機序をアポトーシス誘導作用の観点から、今回はin vivoでのT細胞とin vitroでの培養滑膜細胞に対するアポトーシス誘導作用の有無を解析すること目的とした。脂溶性スタチンのフルバスタチンはin vivoで正常マウス胸腺細胞にアポトーシス誘導能を示し、メバロン酸経路依存性であった。また培養滑膜細胞に対してもアポトーシス誘導能を示し、protein geranylgeranylation阻害に基づくことが強く示唆された。
結論
本研究班の当該年度の研究から以下の結論が得られた。
1. CD25+CD4+T細胞をはじめとする調節性T細胞やT細胞機能異常として自己免疫疾患をとらえることの重要性が明らかになった。
2. 免疫調整分子としてのPD-1の重要性が明らかになった。
3. B細胞の機能分子異常が自己抗体産生に関与することの重要性が明らかになった。
4. 抗リン脂質抗体症候群における対応抗原の解析が進展した。
5. 抗リン脂質抗体症候群の新しい診断法が詳細に検討され、実用化のめどが立った。
6. 抗リン脂質抗体症候群の治療指針がほぼ出来上がった。
7. PM/DMの間質性肺炎に対する新しい治療法の可能性が示された。
8. SLEの遺伝子異常の解析が進展した。
9. SLEの難治性病態の解析が進展した。
10. SLEにおけるステロイド抵抗性と多剤耐性遺伝子の関係が明確になった。
11. SjSの組織障害の機序の解析が進展した。
12. リツキサン、タクロリムス、IL-6受容体抗体、スタチン等、既存薬で自己免疫疾患の治療に使用可能なものが明らかになってきた。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-