特発性造血障害に関する調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200691A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性造血障害に関する調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
小峰 光博(昭和大学藤が丘病院内科)
研究分担者(所属機関)
  • 浅野茂隆(東京大学医科学研究所内科)
  • 内山 卓(京都大学血液病態学)
  • 浦部晶夫(NTT関東病院血液内科)
  • 小澤敬也(自治医科大学血液学)
  • 金倉 譲(大阪大学分子病態内科)
  • 朝長万左男(長崎大学原研内科)
  • 中畑龍俊(京都大学発達小児科)
  • 原田実根(九州大学病態修復内科)
  • 村手 隆(名古屋大学保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 特定疾患対策研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
58,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液系疾患の難病(特定疾患)の中、再生不良性貧血、溶血性貧血、不応性貧血(骨髄異形成症候群)、骨髄線維症の4疾患を対象に、疫学・病因・病態・診断・治療・予後などについて、昨年度までの1期に引き続き残された課題と新しいテ-マを設定し計画的に研究を進め、医療福祉に還元できる有用な知見を得るよう班組織の利点を活用して臨床的・基礎的な共同研究を進める。
研究方法
主任研究者(班長) 1、分担研究者(班員) 9、研究協力者 22(基礎班から2)の構成とした。骨髄異形成症候群の新規治療開発に関する重点研究班(班長 平井久丸)と密接に連携協力し、班員会議および班会議総会を2回合同で開催した。疾患別および横断的領域別に各班員が分担し、主導と調整にあたった。治療研究および患者検体を用いる共同研究においては新GCP基準や遺伝子解析研究等の指針に沿い、患者の権利と自由意思の尊重を徹底することとした。疫学・病態研究においては全国の主要施設および関連学会の理解と協力を得て円滑に進めることができた。
結果と考察
今年度に得られた研究成果を共同研究を中心に疾患別に列挙する。
1.再生不良性貧血では、1)全国自治体からの個人票が平成11~13年に計8,281例登録され、全体像を解析した。更新が6,676例、新規が1,605例であった。この年代の我が国の患者実態を示す参照資料として意義は大きい。2)治療研究事業の改正に伴う診断基準、重症度区分の見直しを行い、軽快者の判定基準を作成し、調査票を改訂した。3)免疫抑制療法の前方視的研究集団の追跡調査に協力した。4)サイトカイン療法(SCF+G-CSF)の経験がまとめられた。5)成人再不貧に対するATG使用の全国調査の成績が集計されCyAの併用効果についても検討された。6)小児再不貧の長期治療成績を昭和63年~と平成6年~とで比較し、とくに最重症、重症例での生存率の改善が有意であることを確認した。7)免疫抑制療法を受けた小児113例の追跡によりMDS/AMLへの移行が8年で14%であることが観察された。8)再不貧およびMDS患者にみられる微小PNH血球の意義を解明するために顆粒球クロナリティとの関係を検討し、PNH血球陽性は背景に免疫病態が関わることを指示する成績を得た。9)再不貧骨髄の染色体の数的異常をFISH法で検索し、premature chromatid separationの頻度と対比し、染色体不安定性の問題を検討した。10)Fanconi貧血について本邦のG群10家系の遺伝子変異の詳細を明らかにした。
2.溶血性貧血では、1)自己免疫性溶血性貧血の自己抗原として重要なRh蛋白の分子生物学的な検討を進め、weak Dを示す6例のRHD遺伝子の変異部位を検討し3種の新しい変異を同定した。2)PNHクロ-ンの拡大機序の解明を進める中で、免疫的攻撃からの逸脱と遺伝子変異による増殖能獲得の2面から、それぞれを支持する実験的・臨床的根拠が得られた。3)PNH細胞において強発現する遺伝子のスクリーニングが試みられたが、すべての患者に一貫する成績は得られなかった。
3.不応性貧血では、1)新症例の登録によるデータベースを用い、IPSSによる予後判定基準の我が国症例での妥当性を検討し、スコアと予後について我が国独自の吟味が必要とされた。2)低リスクMDSに対するシクロスポリン療法の前方視研究で、中間集計を行い安全性と有効性について成績を得、若干の修正を加えて継続することとした。3)MDS診断における形態異常の判定に好中球のクロマチン染色パターン等をスコア化して用いる方法が検討された。4)単施設での幹細胞移植成績から、前処置を低毒性とすることで成績の向上を期待できるとの成績が得られた。5)高齢者および高リスクMDSに対するミニ移植の臨床研究が継続され、中間成績が報告された。規定した前治療レジメンは毒性が少なく生着率は高いと解釈された。6)各個研究として、MDSのCD34++細胞のG-CSFレセプター発現、MGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化、抗アポトーシス分子survivinの高発現と新しいスプライスバリアントの同定、MDSにおけるテロメラーゼ活性の測定、遺伝性鉄芽球性貧血の姉妹例でのX染色体不活化パターン、などが報告された。
4.骨髄線維症では、1)新規発生例の集積から年間約30例が発症すると考えられ、その約57%で染色体異常がみられた。2)骨髄移植を受けた22例が集計され、比較的良好な成績がえられ、50歳以上でも適用し得ると考えられた。
対象疾患が複数であり研究課題も多様かつ広範であるが、全国実態調査と共同研究を計画的に進めることによって、疫学、病因・病態発生の分子機構から治療法の評価、予後の追跡などについて所期の成績がまとめられた。
結論
臨床病態、分子病態、治療の各側面について着実に具体的なデータが集積されつつある。共同研究についてもほぼ順調に進捗しつつある。今期3年間ですべての領域で診断基準、重症度、治療ガイドラインの作成、症例集団の追跡調査などが計画されている。

公開日・更新日

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