乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200610A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
加地 正郎(久留米大学)
研究分担者(所属機関)
  • 廣田 良夫(大阪市立大学)
  • 山中 樹(山中たつる小児科)
  • 高砂子 祐平(もりおかこども病院)
  • 松平 隆光(松平小児科)
  • 中野 貴司(国立療養所三重病院)
  • 圀府寺 美(中野こども病院)
  • 永井 崇雄(永井小児科医院)
  • 高崎 好生(高崎小児科医院)
  • 大宜見 義夫(おおぎみクリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳幼児におけるインフルエンザワクチンの効果および安全性の検討
研究方法
対象:小児科診療所を受診した6歳未満の者。
接種群:接種希望者に随時接種し、1回目の接種時に接種群にエントリーした。また2回目の接種を既に終えた者でも、情報収集が可能であれば対象に加えた。
非接種群:接種者1名毎に、以降の連続した受診患児1-2名を非接種群にエントリーした。
ワクチン:2002-2003年度の市販インフルエンザHAワクチン〔A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)、A/パナマ/2007/99(H3N2)、B/山東/7/97を1mL中それぞれ30μg含有〕を用い、接種量は規定通り、1歳未満0.1mL、1-5歳0.2mLを2回皮下に注射した。平成14年12月15日までに接種を完了。
情報収集:保護者より在胎期間、生下時体重、通園状況、家族数、兄弟姉妹数、居住面積などの情報。医療機関より体重、基礎疾患(心疾患、腎疾患、糖尿病、貧血、気管支喘息、扁桃炎、蕁麻疹、アトピー、アレルギー)、ステロイド長期投与、過去6ヶ月間以内の受診歴(なし/感冒症状/胃腸症状/その他)、昨シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種の有無・およびインフルエンザ様疾患罹患の有無に関する情報。
ワクチンの副反応調査:接種後48時間以内の発熱、発疹、接種部位の発赤、硬結、疼痛および医師受診について調査(返信用ハガキによる)。
発病の有無及びその状況:平成14年12月16日から平成15年4月13日まで毎週返信用ハガキにより過去1週間のカゼ症状(発熱、鼻汁、鼻閉、咽頭痛、咳)について調査。
倫理面への配慮:接種群は調査についての説明をうけた後、保護者が接種を希望した者であり、接種群、非接種群を問わず参加者全員に本調査の意義を説明し同意を得た。なお、本研究は大阪市立大学院医学研究科倫理委員会の審査をうけ平成14年11月14日付で承認された。
結果と考察
結果=調査対象はワクチン接種群1569例、非接種群1425例となった。各地区での調査例数は北海道(接種群199、非接種群201)、岩手(198、201)、東京(200、198)、三重(187、176)、大阪(169、162)、四国(200、200)、福岡(199、200)沖縄(217、87)であった。
副反応については、接種後48時間以内に、38.0℃以上の発熱を呈したものは、1回目、2回目、それぞれ1.3%及び1.4%、39.0℃以上に関しては、それぞれ0.2%、0.5%であり、一般乳幼児のバックグラウンドに比べて高いものではなかった。
発病防止効果を検討するため、2913例(接種者1512、非接種者1401)の対象を解析した。地域別に見ると大阪を除く7地域における接種のORは0.49~0.93を示し、そのうち東京で最大の発病防止効果を認めた。地域の発病リスクとワクチンの効果には、一定した関連を認めなかった。
年齢階級別に行った解析では、1歳以上における接種のORは0.74、1歳未満では1.84となり、1歳未満ではワクチンの有効性を検出できなかった。
また、1歳階級ごとに行った解析では、いずれの年齢層においてもワクチン接種のORは1未満となり、2歳代、3歳代、4歳代では有意差または境界域の有意差を認めた。
結論
従来わが国におけるインフルエンザの研究については疫学的な見地に基づいた研究計画および解析が充分でないものが多く、今回(平成12~14年度)の本研究においては、この点に重点をおいて研究を実施し、中でも交絡に関する考慮を払って数多くの調査項目について調査した。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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