文献情報
文献番号
200200593A
報告書区分
総括
研究課題名
国内での発生が希少のため知見が乏しい感染症対応のための技術的基盤整備に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
山本 保博(日本医科大学救急医学主任教授)
研究分担者(所属機関)
- 蟻田功(国際保健医療交流センター理事長)
- 大久保一郎(筑波大学社会医学系教授)
- 岡部信彦(国立感染症研究所感染症情報センター長)
- 川井真(日本医科大学救急医学助教授)
- 桑原紀之(自衛隊中央病院保健管理センター長)
- 佐多徹太郎(国立感染症研究所感染病理部部長)
- 志方俊之(帝京大学法学部教授)
- 島崎修次(杏林大学医学部救急医学救急医療システム教授)
- 角田隆文(東京都立荏原病院感染症科部長)
- 中村修(慶応大学環境情報学助教授)
- 原口義座(国立病院東京災害医療センター救命救急センター副センター長)
- 徳永章二(九州大学予防医学疫学/医学統計学助手)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国内での発生が稀少のため知見が乏しい各種ウイルス、リケッチア、細菌、毒素など発生した場合に、感染症対応を実際に行うフロントラインに対してより実践的な行動対応マニュアル、シミュレーション・模擬演習の実施方法等を作成、普及させると共に、各地域における感染症対応能力を評価し、フィードバックさせることにより、技術的基盤整備の向上を計ることを目的とする。
研究方法
1)具体的疾患として天然痘を題材とした。①天然痘対応指針と天然痘接種マニュアルを作成。②対応フィージビリティ・スタディとして、天然痘ワクチン接種会場を設置して天然痘接種マニュアルに従った方法で接種訓練を実施した。都道府県衛生局、保健所が参加し、模擬患者を通じて予防接種従事者が作業を行う際の作業負荷を質・量の両面から測定した。③米国の資料及びDr. Anthony Tu, Dr. Ken Alibekの私信をもとに、天然痘テロ対策としての救急医療体制についてまとめた。④天然痘流行とその防止対策の効果の予測について、様々なアプローチによる数理モデル研究があり、本研究者の研究と海外の同情報が本研究班会議で紹介された。2)天然痘以外の疾患(ウエストナイルウイルス、麻疹)での対応指針を作成した。①自衛隊病院の立場から、国内での発生が稀少のため知見が乏しい感染症対応のための技術的基盤整備を検討した。②ウエストナイル感染症及び天然痘に対する行政上の対応についての評価は、本研究班会議にて班員や研究協力者によって検討した結果を採用した。さらに感染症新法による対応の現状、専門家や専門医療施設や検査機関の現状、一般国民の疾患に対する知識、予想されるマスコミの反応等を検討して作成した。③ITによる技術的基盤整備を厚生労働省のホームページで公開した。
結果と考察
1) 天然痘題材・天然痘対応指針①天然痘対応マニュアルに沿った対応フィージビリティ・スタディを実施した。模擬接種者および有症者を迎え、受付・一時検診・説明エリア・予診表記入エリア・問診診察・接種室に分けて平均時間・作業工程・問題点発生の有無等を評価した。実際に訓練してみないと分からない問題点が浮き彫りとなり、今後の対応マニュアル改訂に重要な情報を得た。②天然痘ワクチン接種時のインフォームド・コンセントマニュアルビデオを作成し、天然痘ワクチン接種訓練時に説明エリアで公開した。③米国の機能分担化(モデユラー)救急医療システム(MEMS)を日本に適応するように修正した。MEMSでは、地域の拠点病院となるのがAcute Care Center(ACC)構想である、指揮命令系統の一元化、情報の一元管理、職員の安全確保、事前の対応計画の着実な実施などが重要である。
④International Smallpox Modeling Workshopが開催され、各国のサーベイランス体制や接触者の追跡と患者の隔離が重要であることは多くの数理モデル研究で共通していることが再認識された。研究者によって意見が異なる重要な情報も得られた。2) 天然痘以外の疾患(ウエストナイルウイルス、麻疹)での対応指針①自衛隊A駐屯地(総隊員数約650名)において総数21例の麻疹アウトブレイクが発生し、その隔離治療の概要の報告と、得られた教訓を纏めた。②「特殊災害対応ハンドブック」(自衛隊災害医療研究会)を作成し、災害対応訓練実施時や有事発生時における重要な情報を小冊子にして関係施設全てに配布した。③行政上の対応を纏めた。項目としては、患者発生を迅速に把握するための感染症情報収集還元に関するもの、医療従事者へ医療情報を提供し助言を行う専門家や医療機関のリストアップ、第一例発生時の疫学チームの編成準備、患者家族への心理精神的支援、マスコミ対応等が挙げられた。④「厚生労働省インフルエンザ対応キャンペーンホームページ」で公開されている「インフルエンザ迅速把握(毎日)報告グラフ(http://influenza-mhlw.sfc.wide.ad.jp/?new)を運用し、ITによる技術的基盤整備を行っている。天然痘は発生が稀少で臨床知見が乏しい代表的疾患のひとつで、熟知している医療従事者は国内で数える程度である。よって、疑わしい患者が発生した場合のワクチン接種が最も有効な予防手段になる。バイオテロ等のリスクが高まっている現在、有事での天然痘ワクチン接種のシミュレーション・フィージビリティスタディーを実施して評価をし、実際に沿って行動した場合に生じる問題点や課題を明らかにしてマニュアルを実情に合うように訂正・追加して基盤整備を計画することが現実的な対応策となる。それと平行して、現在問題となっている感染症であるウエストナイル感染症に対しての対応指針を作成し、対応フィージビリティ・スタディを行ってその評価を多角的に行うことも現実に即した方法と考えられた。現在、各地域・地方自治体においては、幾つかの想定された感染症に対するマニュアルやシミュレーション・模擬訓練などを散発的に行われてはいるが、設備・備蓄・スタッフ・教育などの面において今だ十分ではなく、迅速に全ての感染症に対応できる状態ではない。地域によっては技術的基盤整備が全くなされていない状況も伺える。本研究によって現実的な対応システムを構築して示すことによって、感染症を対応する機関は地域医療現場に則した対応マニュアルを作成することができるものと考えられる。
④International Smallpox Modeling Workshopが開催され、各国のサーベイランス体制や接触者の追跡と患者の隔離が重要であることは多くの数理モデル研究で共通していることが再認識された。研究者によって意見が異なる重要な情報も得られた。2) 天然痘以外の疾患(ウエストナイルウイルス、麻疹)での対応指針①自衛隊A駐屯地(総隊員数約650名)において総数21例の麻疹アウトブレイクが発生し、その隔離治療の概要の報告と、得られた教訓を纏めた。②「特殊災害対応ハンドブック」(自衛隊災害医療研究会)を作成し、災害対応訓練実施時や有事発生時における重要な情報を小冊子にして関係施設全てに配布した。③行政上の対応を纏めた。項目としては、患者発生を迅速に把握するための感染症情報収集還元に関するもの、医療従事者へ医療情報を提供し助言を行う専門家や医療機関のリストアップ、第一例発生時の疫学チームの編成準備、患者家族への心理精神的支援、マスコミ対応等が挙げられた。④「厚生労働省インフルエンザ対応キャンペーンホームページ」で公開されている「インフルエンザ迅速把握(毎日)報告グラフ(http://influenza-mhlw.sfc.wide.ad.jp/?new)を運用し、ITによる技術的基盤整備を行っている。天然痘は発生が稀少で臨床知見が乏しい代表的疾患のひとつで、熟知している医療従事者は国内で数える程度である。よって、疑わしい患者が発生した場合のワクチン接種が最も有効な予防手段になる。バイオテロ等のリスクが高まっている現在、有事での天然痘ワクチン接種のシミュレーション・フィージビリティスタディーを実施して評価をし、実際に沿って行動した場合に生じる問題点や課題を明らかにしてマニュアルを実情に合うように訂正・追加して基盤整備を計画することが現実的な対応策となる。それと平行して、現在問題となっている感染症であるウエストナイル感染症に対しての対応指針を作成し、対応フィージビリティ・スタディを行ってその評価を多角的に行うことも現実に即した方法と考えられた。現在、各地域・地方自治体においては、幾つかの想定された感染症に対するマニュアルやシミュレーション・模擬訓練などを散発的に行われてはいるが、設備・備蓄・スタッフ・教育などの面において今だ十分ではなく、迅速に全ての感染症に対応できる状態ではない。地域によっては技術的基盤整備が全くなされていない状況も伺える。本研究によって現実的な対応システムを構築して示すことによって、感染症を対応する機関は地域医療現場に則した対応マニュアルを作成することができるものと考えられる。
結論
本研究は、国内外の情報収集に加え、米国のシステムを参考にして日本の実情にあったACC構想を唱え、ITによる技術的基盤整備を厚生労働省のホームページで公開するなど包括的かつ高い視野に立ったより現実的な対応システムを構築している。対応システムを構築することにより、感染症を対応する各地域・地方自治体等の機関は自らの位置づけを客観的に把握でき、改善すべき目標がより具体的・現実的なものになる。それにより地域格差が是正され質の均一化につながる。これらによって国内での発生が稀少のため知見が乏しい感染症対応のための技術的基盤整備が充実し、どの地域においても適格な感染症対応が可能となり、日常における緊急時の感染症対応も飛躍的に向上すると期待される。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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