文献情報
文献番号
200200589A
報告書区分
総括
研究課題名
結核菌症の病態解明に基づく新たな治療法等の開発に関する研究:[抗結核キラーTリンパ球・結核殺傷蛋白による病態解明に基づく結核ワクチン(サブユニット-・DNA-・リコンビナントBCG-ワクチン)・化学療法剤の開発による新しい治療・予防・診断法]
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 全司(国立療養所近畿中央病院)
研究分担者(所属機関)
- 坂谷光則(国立療養所近畿中央病院)
- 矢野郁也(日本BCG研究所)
- 螺良英郎(財団法人大阪結核研究会)
- 内藤真理子(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
- 吉田栄人(自治医科大学医動物学)
- 倉島篤行(国立療養所東京病院)
- 土肥善胤(大阪大学医学部)
- 菅原勇(財団法人結核予防会結核研究所)
- 原寿郎(九州大学大学院医学研究院)
- 井上義一(国立療養所近畿中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
結核罹患率の横這い、集団感染が頻発、AIDSや糖尿病患者等の免疫不全疾患に高頻度に合併、薬剤耐性結核が増え、いわゆる難治性結核の対策が早急に望まれていることより、結核に対する新しい治療・予防・診断の研究が必須である。すなわち ① BCGよりも強力な新しい結核治療ワクチン・結核予防ワクチン〔サブユニットワクチン、DNAワクチンおよびリコンビナントBCGワクチン(rBCG)〕の開発の臨床研究を行うことを目的とする ② さらに、キラーT細胞活性と結核発症を分子・遺伝子レベルで解明し、結核菌症の病態を解明するとともに ③ これらを用いた新しい治療法及び新しい結核予後診断・難治性診断法の開発を行う。 ④ Toll like レセプター(TLR)とキラー細胞からの結核菌症(特に多剤耐性結核菌)の免疫監視エスケープ機構を解明し、新しい治療薬(新しい化学療法剤等)を開発する。 ⑤ BCG接種が真に大人の結核に有効であるか、検討する。多剤耐性結核の新しいワクチン・治療法を開発する。 ⑥ ツベルクリン反応に代わる新しい結核感染特異的診断法の開発 ⑦ 国立病院・療養所呼吸器ネットワーク(54施設)を利用して臨床応用を行うことを目的とする。
研究方法
[1] サブユニットワクチン:Mtb72f fusion蛋白(Mtb39とMtb32を遺伝子工学的にfusionさせて作製)、下記のHsp65 DNA+ IL-12 DNAワクチン及びリコンビナント72f BCGワクチンをカニクイザルに筋注し、ヒト型結核菌を経気道感染させ、予防ワクチン効果(生存率、血沈、体重、肺の病理)を解析した。又、サブユニットワクチンでin vitroでヒトの多剤耐性結核患者PBLを刺激し、T細胞免疫増強効果を解析した。 [2] DNAワクチンの作製:Hsp65 DNA及びIL-12 DNA等をHVJ-liposome に組み込み、世界に先駆けてこのベクターを用いてワクチン効果を解析した。H37RV 5×105 i.v 感染Balb/c マウスに予防・治療投与した。 [3] リコンビナントBCGワクチンの作製:Mtb72f fusion蛋白遺伝子や種々のfusion蛋白遺伝子を、BCG東京株に導入した。 [4] 抗granulysin抗体を用いたキラーTのFACS解析ならびに血清中のgranulysinやksp37キラー蛋白の解析を行った。 [5]結核感染に特異性の高い、ツ反に代わるDPPD蛋白を用いた解析を行った。又、結核菌に存在し、BCG菌に存在しないESAT-6蛋白やCFP-10蛋白刺激によるヒトリンパ球からγ-IFN産生を測定した。
結果と考察
[1] 新しい結核サブユニットワクチンの開発: ①Mtb72f fusion蛋白ワクチンはカニクイザル(最もヒト結核感染に近いモデル Nature Med 1996)でBCGよりも強力な抗結核予防効果を示し、ヒト多剤耐性結核患者T細胞の結核免疫を増強した。さらに、BCGでprimingし、後に72f融合蛋白ワクチン(boosterワクチン)を行うと、カニクイザルで極めて強力な予防効果が得られた。 ② PhaseⅠstudyを計画。
[2] 新しいDNAワクチンの開発: ① HSP65DNA + IL-12DNAワクチンは、サル(カニクイザル)でも有効であることを明らかにした。(マウスの系でBCGよりも100倍以上強力なワクチン効果を示した)IL-12 DNA + Hsp65 DNAをHVJ-liposomeベクターを用いて、サルでr72fBCGワクチン群と72f fusion蛋白ワクチンで現在最も強いワクチンの検討を同時に行った。それぞれのワクチンでBCGワクチン群に比し胸部X線所見(結核病巣)で強い改善傾向がみられた。 ②1000倍発現効率が高い画期的なAAVベクター(Hsp65 DNA)の開発に成功した。 キラーTに極めて強く認識されるユビキチンDNAと結合したHsp65DNAワクチンを作製した。経口attenuatedリステリア結核ワクチン(Ag85B)を開発した。
[3] 新しいリコンビナントBCGワクチンの開発: ① リコンビナン72f BCG (r72f BCG) を作製し、r72f BCGはマウス、モルモット、サルでBCGよりも強い結核予防ワクチン効果を明らかにした。 ② r72f-85b-, 31f-, r59f-, r88f-, r71f-BCGを作製することに成功した。
[4] 新しい治療ワクチンの開発: IL-6関連遺伝子ワクチンは初めて結核治療ワクチンとしても有効であることを示した。
[5] IL-2レセプターγ鎖ノックアウトNOD-SCID-PBL/huのモデルでヒト多剤耐性結核治療モデルを世界に先駆けて開発した。
[6] 結核菌症の病態解明: ① Granulysinによる結核の病態解明 ○a抗結核キラーT細胞から産出されるgranulysin〔15kdのgranulysin(15KGra)〕が結核殺傷に極めて重要な役割を果たしている発見をした。15KGraはMΦ内結核菌を殺すこと、血清中には15K Graが流れていることを初めて明らかにした。 ○b15K GraDNAワクチンは結核予防効果を示した。 ○c多剤耐性結核患者キラーT細胞のGra蛋白発現の著明な低下を認めた。すなわち新しい結核予後診断法を確立した。 ②結核患者キラーT細胞から分泌されるkiller secretory protein (Ksp37) が血清中で低下していることを初めて明らかにした。 ③ γ-IFNレセプター欠損患者を多数発見し、結核菌に対する易感染性を明らかにし、γ-IFNの結核免疫における重要性を明らかにした。 ④種々のTLR(-/-)マウスと多剤耐性結核菌を用い、解析が進展した。 ⑤ IRF-1 (-/-)マウス、STAT4(-/-)、NKT cell(-/-)を用い、これらは結核免疫に重要であることを明らかにした。
[7] ツベルクリン反応に代わる新しい結核特異的診断法 DPPD skin test及びin vitro ESAT-6 + CFP10刺激 γ-IFN産生testを開発した。
[8] BCG接種者より結核患者が発症し、成人におけるBCGワクチンの有効性が疑問となることを示した。
[2] 新しいDNAワクチンの開発: ① HSP65DNA + IL-12DNAワクチンは、サル(カニクイザル)でも有効であることを明らかにした。(マウスの系でBCGよりも100倍以上強力なワクチン効果を示した)IL-12 DNA + Hsp65 DNAをHVJ-liposomeベクターを用いて、サルでr72fBCGワクチン群と72f fusion蛋白ワクチンで現在最も強いワクチンの検討を同時に行った。それぞれのワクチンでBCGワクチン群に比し胸部X線所見(結核病巣)で強い改善傾向がみられた。 ②1000倍発現効率が高い画期的なAAVベクター(Hsp65 DNA)の開発に成功した。 キラーTに極めて強く認識されるユビキチンDNAと結合したHsp65DNAワクチンを作製した。経口attenuatedリステリア結核ワクチン(Ag85B)を開発した。
[3] 新しいリコンビナントBCGワクチンの開発: ① リコンビナン72f BCG (r72f BCG) を作製し、r72f BCGはマウス、モルモット、サルでBCGよりも強い結核予防ワクチン効果を明らかにした。 ② r72f-85b-, 31f-, r59f-, r88f-, r71f-BCGを作製することに成功した。
[4] 新しい治療ワクチンの開発: IL-6関連遺伝子ワクチンは初めて結核治療ワクチンとしても有効であることを示した。
[5] IL-2レセプターγ鎖ノックアウトNOD-SCID-PBL/huのモデルでヒト多剤耐性結核治療モデルを世界に先駆けて開発した。
[6] 結核菌症の病態解明: ① Granulysinによる結核の病態解明 ○a抗結核キラーT細胞から産出されるgranulysin〔15kdのgranulysin(15KGra)〕が結核殺傷に極めて重要な役割を果たしている発見をした。15KGraはMΦ内結核菌を殺すこと、血清中には15K Graが流れていることを初めて明らかにした。 ○b15K GraDNAワクチンは結核予防効果を示した。 ○c多剤耐性結核患者キラーT細胞のGra蛋白発現の著明な低下を認めた。すなわち新しい結核予後診断法を確立した。 ②結核患者キラーT細胞から分泌されるkiller secretory protein (Ksp37) が血清中で低下していることを初めて明らかにした。 ③ γ-IFNレセプター欠損患者を多数発見し、結核菌に対する易感染性を明らかにし、γ-IFNの結核免疫における重要性を明らかにした。 ④種々のTLR(-/-)マウスと多剤耐性結核菌を用い、解析が進展した。 ⑤ IRF-1 (-/-)マウス、STAT4(-/-)、NKT cell(-/-)を用い、これらは結核免疫に重要であることを明らかにした。
[7] ツベルクリン反応に代わる新しい結核特異的診断法 DPPD skin test及びin vitro ESAT-6 + CFP10刺激 γ-IFN産生testを開発した。
[8] BCG接種者より結核患者が発症し、成人におけるBCGワクチンの有効性が疑問となることを示した。
結論
[1] 新しい結核サブユニットワクチンの開発: Mtb72f fusion蛋白ワクチンはカニクイザルでBCGよりも強力な抗結核予防効果を示し、世界の最先端のワクチンであり、ヒト多剤耐性結核患者T細胞の結核免疫を増強した。さらに、BCGでprimingし、後に72f融合蛋白ワクチン(boosterワクチン)を行うと、カニクイザルで極めて強力な予防効果が得られた。日本における成人での72f融合蛋白のboosterワクチンが有効であることが強く示唆された。
[2] 新しいDNAワクチンの開発: ① HSP65DNA + IL-12DNAワクチンは、サル(カニクイザル)でも有効であることが示唆された。 ②経口attenuatedリステリア結核ワクチン(Ag85B)を開発した。
[3] 新しいリコンビナントBCGワクチンの開発: r72f BCGはマウス、モルモット、サルでBCGよりも強い結核予防ワクチン効果を明らかにした。
[4] 新しい治療ワクチンの開発: IL-6関連遺伝子ワクチンは初めて結核治療ワクチンとしても有効であることを示した。
[5] IL-2レセプター γ鎖ノックアウトNOD-SCID-PBL/huのモデルでヒト多剤耐性結核治療モデルを世界に先駆けて開発した。
[6] 結核菌症の病態解明: ①抗結核キラーT細胞から産出されるgranulysin〔15kdのgranulysin(15KGra)〕が結核殺傷に極めて重要な役割を果たしている発見をした。多剤耐性結核患者キラーT細胞のGra蛋白発現の著明な低下を認めた。 ②結核患者Ksp37が血清中で低下していることを明らかにした。 ③γ-IFNレセプター欠損患者を多数発見し、結核菌に対する易感染性を明らかにした。
[7] ツベルクリン反応に代わる新しい結核特異的診断法 DPPD、及びESAT-6 + CFP10刺激 γ-IFN産生testを開発した。
[2] 新しいDNAワクチンの開発: ① HSP65DNA + IL-12DNAワクチンは、サル(カニクイザル)でも有効であることが示唆された。 ②経口attenuatedリステリア結核ワクチン(Ag85B)を開発した。
[3] 新しいリコンビナントBCGワクチンの開発: r72f BCGはマウス、モルモット、サルでBCGよりも強い結核予防ワクチン効果を明らかにした。
[4] 新しい治療ワクチンの開発: IL-6関連遺伝子ワクチンは初めて結核治療ワクチンとしても有効であることを示した。
[5] IL-2レセプター γ鎖ノックアウトNOD-SCID-PBL/huのモデルでヒト多剤耐性結核治療モデルを世界に先駆けて開発した。
[6] 結核菌症の病態解明: ①抗結核キラーT細胞から産出されるgranulysin〔15kdのgranulysin(15KGra)〕が結核殺傷に極めて重要な役割を果たしている発見をした。多剤耐性結核患者キラーT細胞のGra蛋白発現の著明な低下を認めた。 ②結核患者Ksp37が血清中で低下していることを明らかにした。 ③γ-IFNレセプター欠損患者を多数発見し、結核菌に対する易感染性を明らかにした。
[7] ツベルクリン反応に代わる新しい結核特異的診断法 DPPD、及びESAT-6 + CFP10刺激 γ-IFN産生testを開発した。
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