先天性心疾患における大血管狭窄に対するカテーテルインターベンションによる拡大術の短・長期予後に関する多施設共同研究

文献情報

文献番号
200200583A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性心疾患における大血管狭窄に対するカテーテルインターベンションによる拡大術の短・長期予後に関する多施設共同研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
越後 茂之(国立循環器病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 石澤瞭(国立成育医療センター)
  • 石川司朗(福岡市立こども病院)
  • 中西敏雄(東京女子医科大学)
  • 中村好一(自治医科大学)
  • 小林俊樹(埼玉医科大学)
  • 黒江兼司(兵庫県立こども病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 効果的医療技術の確立推進臨床研究(小児疾患分野)
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、カテーテルインターベンション(以下CI)が先天性心疾患を中心とする小児心疾患の領域においても施行されるようになり、疾患によっては少ない侵襲で治療が可能になってきた。しかし、先天性心疾患の中で大きな部分を占める肺動脈狭窄や大動脈縮窄など大血管狭窄に対するCIは、多用される傾向にあるが、その予後や適応など未だ解明されていない課題や曖昧に処理されている問題点が少なくない。本研究の目的は、肺動脈や大動脈などの大血管狭窄を持つに小児に対してバルーンまたはステントによる血管拡大術を施行し、バルーンとステントの選択基準、使用バルーン径やステント径と短・長期予後との関係、合併症などを前方視的観察研究や無作為割付研究によって綿密に検証し、これらに対するCIのエビデンスに基づく治療指針を作成することにある。
研究方法
この研究を実施するために、約20の小児心疾患治療中核施設による多施設共同研究ネットワークを形成し、大血管狭窄を持つ登録患者に対してプロトコールに従って前方視的観察研究または無作為介入研究を行って短・長期的予後を検討し、得られた成績の統計専門家による分析からエビデンスに基づいた大血管に対するカテーテルインターベンションの治療指針を作成する。初年度は、前方視的研究のプロトコール作成の基礎資料とするため、肺動脈狭窄と大動脈狭窄に対して後方視的検討を行った。
結果と考察
研究と考察=肺動脈狭窄の検討では、バルーン血管形成術によって50か所の狭窄部径は形成術前の145±29%に増加した。狭窄部径が50%以上増えたのは、50か所のうち19病変(38%)であったが、これら有効例では中央値12.5か月の経過観察後に著明な再狭窄を認めた例はなく、この間に狭窄部の径がさらに増加した例もみられた。ステント留置術によって45か所の狭窄部位は、留置術前の192±72%に増加した。50%以上増加は、45か所のうち28病変(62%)であった。中央値14か月の経過観察後は、28病変のうち8病変(29%)において経過観察期間後(中央値14か月)に内膜の増殖などによって20%以上の再狭窄が生じた。
大動脈縮窄では、バルーン血管形成術を行った34例において圧較差は28±18から13±11mmHgへと減少した。経過観察後(中央値10か月)は、圧較差が12±16mmHgでほとんど変動がなかった。身体の成長がほぼ終了した患者を対象としたり心不全治療の緊急処置としてステント留置術をおこなった。8例の検討では、ステント留置術によって圧較差は36±20から6±8mmHgへと減少し、経過観察後(中央値20か月)は10±11mmHgへと軽度増加した。ステント留置によって、大動脈壁損傷による大動脈瘤の発生を伴うことなく著明な圧較差の減少を得るが、ステント内に内膜の増殖などによる著明な再狭窄が生じる症例を認めた。
結論
肺動脈狭窄ならびに大動脈縮窄とも、急性期効果についてはバルーン形成術に比してステント留置術に良好な結果を得たが、中期予後ではステント内の内膜の増殖による狭窄を認める症例が少なからずみられ、いずれの手技を選択するかは大血管に狭窄に対する前方視的研究の中心的課題であると考えた。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-