非血縁者間同種末梢血造血幹細胞移植に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200456A
報告書区分
総括
研究課題名
非血縁者間同種末梢血造血幹細胞移植に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
森島 泰雄(愛知県がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 原田実根(九州大学大学院医学研究院)
  • 笹月健彦(国立国際医療センター研究所)
  • 猪子英俊(東海大学医学部)
  • 石川善英(東京都赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究(再生医療分野)
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
-
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
末梢血造血幹細胞を用いた新しい移植法である同種末梢血幹細胞移植を非血縁者移植に導入し、非血縁者間移植成績の一層の向上を図る。非血縁者間移植では、ドナーと患者との組織適合性が最も重要な因子であり、移植免疫反応に関与する組織適合性抗原の同定とこの同種末梢血幹細胞移植におけるHLAの役割りを明らかにする。さらに、非血縁者からの末梢血幹細胞採取の安全性の確保と採取システムの検討、より効率的で有効なHLA検査法を確立するとともに、この治療法の有効性・安全性を検証するための臨床研究を推進する。
研究方法
同種末梢血幹細胞移植の有効性の検討としてわが国において実施された血縁者間末梢血幹細胞移植症例の臨床データを集積し、本移植法の特徴と改善すべき点を明らかにするとともに、同種末梢血幹細胞採取によるドナーの安全性に関するデータを解析し、非血縁ドナーからの末梢血採取の妥当性を検証する。HLA-A, B, C, DR, DQ, EのDNAタイピングをドナーと患者の検体を用いて実施し、HLA-DNAタイピングの意義を確立する。主な解析項目は①HLA-DRとHLA-DQ抗原の移植免疫反応に対する役割り。②HLA-C抗原の移植片対白血病効果への影響③HLA-E抗原特異性の移植免疫反応に対する影響④特定のHLA型の不適合の組み合わせが移植免疫反応に及ぼす効果を検索し、移植許容HLA抗原を同定する。さらに、造血細胞移植に関与する新しい組織適合性抗原を同定するために、①DNAチップによりマイクロサテライト多型を検索するとともに、上記結果と移植成績との相関を検討する中でGVHD、拒絶等の原因遺伝子を同定する。②近年解析が可能になったNK細胞の受容体であるKiller-cell Ig-like receptor(KIR)の遺伝子解析を実施し、移植免疫反応との関連を検索する。
結果と考察
非血縁者間末梢血造血幹細胞移植の基盤整備については、日本造血細胞移植学会における同種末梢血幹細胞採取ドナー登録はほぼ100%なされており、現在短期フォローアップと長期フォローアップがなされている。さらに、ドナー採取ガイドラインの改訂作業が行われており、本研究班においてもこれらの情報に基づき、安全なドナー採取とその体制につき討議している。日本における血縁者間末梢血幹細胞移植症例の全国調査により、骨髄移植に比べ急性GVHDと慢性GVHDの頻度が増加することが示された。非血縁者間末梢血幹細胞移植は前記した骨髄移植とは異なるHLAのバリアーが生じる可能性が高い。このため、日本骨髄バンクを介した非血縁者間末梢血幹細胞移植開始と同時に、その安全性と有効性を早期に検証する臨床試験をHLAの適合性を基盤として実施する必要があり、このためのプロトコール作りの検討を開始した。日本骨髄バンクにおけるHLA検査のあり方について検討した。HLA遺伝子型検査法の進歩に伴いHLA検査のあり方を変更する必要があり、HLA研究者を分担研究者・研究協力者としている本研究班においても討議し、早期からのHLA遺伝子型検査と照合を基本とすることでコンセンサスが得られた。非血縁者間移植におけるHLA遺伝子と移植免疫反応との関連については、日本骨髄バンクを介した非血縁者間移植においてドナーと患者間のHLAのクラスⅠ抗原の違いが移植成績に大きな影響を与えていることが本研究班での解析で明らかになってきた。どのHLAクラスⅠ抗原が関連しているかを明確にするために、GVHD予防法別に移植免疫反応を解析した。新しいGVHD予防法であるタクロリムス+メトトレキセート法(F+M法)では従来からのシクロスポリン+メトトレ
キセート法(C+M法)とは異なるHLAのバリアーが存在する可能性が示唆された。すなわち、急性GVHDの中等症以上の頻度はHLAの適合度と良く相関し、このため生存に影響している可能性が示唆された。現在、実施されることが多くなったF+M法でのHLAのバリアーを明らかにすることが臨床成績の向上のために必要であり、今後症例数を増しての解析が必要である。さらに、新しい組織適合性抗原を検索するためにHLA適合症例で急性GVHD発症例と非発症例を選択して、マイクロサテライト解析を開始した。さらに、急性GVHDの発症にNK細胞のKIRを介した発症機序が存在し、生存に影響する可能性を示した。
結論
非血縁移植にとりドナーと患者のHLAの適合が成績向上にために最も重要であり、さらに、新しい臨床的に意味のある組織適合性抗原が同定されつつある。ドナーの安全性の確保と採取体制の確立、組織適合性に基づいた臨床試験プロトコールの作成が今後実施予定の非血縁者間末梢血幹細胞移植の基盤整備にとり重要である。

公開日・更新日

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