ヒトゲノム、遺伝子治療、再生医療分野の生命倫理観形成におけるメディアの役割(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200452A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトゲノム、遺伝子治療、再生医療分野の生命倫理観形成におけるメディアの役割(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
白楽 ロックビル(お茶の水女子大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究(生命倫理分野)
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
バイオ先端医療研究の生命倫理観をどう形成するかで、国民は、バイオ先端医療研究を受容(または拒否)することになる。生命倫理観の形成での重要な因子は、バイオ先端医療の研究内容や研究成果そのものよりも、メディアがそれらをどのように報道するかである。新聞、テレビ、ウェブ、映画、漫画、雑誌、ゲーム、アニメなどのメディアの中で「ヒトゲノム、遺伝子治療、再生医療分野」がどのように扱われているかを、生命倫理的観点から研究し、バイオ先端医療研究に対する生命倫理観形成の実態と仕組みを解明する。
また、バイオ研究者が事件を起こし、メディアで報道され、バイオ研究者に悪いイメージを抱かれることが、バイオ先端医療研究への否定的な生命倫理観を形成する。それで、バイオ研究者の事件も研究する。
両者とも、主に日本の状況を調査研究するが、アメリカ、オーストラリア、欧州などの状況も調査研究し、国際比較研究を行う。これらの研究を通して、バイオ先端医療研究の生命倫理観形成に及ぼすメディアの役割の現状認識とあるべき姿を提言する。
研究方法
2002年度は日本の新聞記事を対象にバイオ先端医療がどのように報道されているかを肯定度分析した。バイオ関係の新聞記事を①バイオ科学技術、②バイオ周辺の2つに大きく分類した。ついで、ヒトゲノム、遺伝子治療、再生医療分野を含めた項目に分類し、項目ごとに肯定的キーワード、否定的キーワードの数を用いて肯定度分析をした。また、2001年と2002年に生じたアメリカでの日本人遺伝子スパイ事件について、その問題点をメディア記事から研究した。
結果と考察
日本ではバイオ先端医療がどのように報道されているかを日本の新聞記事を対象に肯定度分析した。例えば、「遺伝子」関連の記事や「医薬品」の記事は各紙とも高い肯定度を示した(一例として、読売新聞でK値=7.9と7.2)。ところが、「遺伝子組み換え食品」関連の記事や「クローン(ヒト)」関連の記事は、各紙とも低い肯定度(つまり否定的な傾向)を示した(読売新聞でK値=2・2と1.8)。また、アメリカの遺伝子スパイ事件を解析した結果、日本の問題点として「研究試料や研究情報の所有権と契約書」、「研究室運営の倫理」、「円滑な研究室の人間関係」の技術・教育・広報の欠如が挙げられた。
結論
日本の新聞記事では先端医療研究の報道が「善悪」はステレオタイプ的である。また、バイオ研究者や大学教授が事件を起こし、「悪人」扱いされている。そのため、先端医療の生命倫理観に悪い影響を及ばしていることが読み取れた。研究者を含め人は皆、本来、「善」でも「悪」でもある。日本では、「研究試料や研究情報の所有権と契約書」、「研究室運営の倫理」、「円滑な研究室の人間関係」の技術・教育・広報が欠如している。わが国はこれらの対策をすべきだといえる。

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