骨粗鬆症治療薬に対する反応性決定遺伝子の同定と臨床応用

文献情報

文献番号
200200446A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症治療薬に対する反応性決定遺伝子の同定と臨床応用
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
細井 孝之(東京都老人医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 白木正孝(成人病診療研究所)
  • 堀内敏行(東京都老人医療センター)
  • 井上 聡(東京大学医学部老年病学)
  • 江見 充(日本医科大学老人病研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究(ヒトゲノム分野)
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨粗鬆症、特に加齢に伴う骨量減少が病的に亢進し、高齢者の骨折リスクを増加させる退行期骨粗鬆症に対する対策は、高齢化が進行する現在、医学的のみならず社会的にも大きな課題である。脊椎の圧迫骨折や大腿骨頚部骨折は本症の合併症であり、骨粗鬆症の診療はこれらの予防を最大の目的としている。近年の骨量測定方法の進歩と普及により、骨量を臨床的指標とした骨粗鬆症の診療体系が構築されている。さらに血液・尿中の骨代謝マーカーが臨床応用されている。わが国で骨粗鬆症に対して適応を得ている薬剤は、活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、カルシトニン製剤、女性ホルモン製剤、蛋白質同化ホルモン製剤、ビスホスホネート製剤、イプリフボン、カルシウム製剤と多岐にわたる。これら薬剤の分子レベルでの標的は、未だ不明の部分が多く残されている。しかしながら、治療薬の効果は個人レベルで大きく異なることが観察されている。また、骨代謝における上記の臨床的指標が有意に変動するためには少なくとも6か月、骨折の予防効果を確かめるためには2-3年という長期間を要する。そこで、骨粗鬆症治療薬の有効性を個人レベルであらかじめ予測することができれば、患者の利益になることはもちろん、医療経済学的にも有意義であり、広く社会に貢献することが期待される。
本研究では、骨粗鬆症治療薬に対する反応性決定候補遺伝子の多型性について、臨床的な意義を検討するとともにその分子生物学的な意義を探索する。さらに、新しい骨粗鬆症治療薬反応性決定遺伝子群を同定する。本研究により、骨粗鬆症の薬物療法を最適化する手段が構築されることが期待される。骨粗鬆症治療薬に対する反応性決定遺伝子を同定するために、臨床データベースをもとに骨粗鬆症治療薬に対する反応性の個人差とその臨床的決定要因を検討した。また、従来の研究から掲げられた候補遺伝子の多型性と骨粗鬆症治療薬の効果との関連を解析するとともに、体系的SNPsの中から、治療効果と関連のある遺伝子をスクリーニングし、あらたな候補遺伝子を抽出した。さらにin vitroの系を用いて、骨粗鬆症治療薬に反応して変動する遺伝子群を明らかにした。

研究方法
結果と考察
1. 骨粗鬆症の薬物療法による骨折予防QOL低下予防における個人差に関する研究:対象:東京都老人医療センター骨粗鬆症外来高齢骨粗鬆症に対して、骨折予防目的で投与されたビスホスホネート(ダイドロネル、EHDP200mg/日)またはアルファカルシドール(0.5μg/日)による1年間の骨密度増加の個人差と臨床的指標との関連について検討した。臨床的指標にはQOL評価も取り入れた。
2. 骨粗鬆症治療薬に対する反応決定遺伝子の探索:骨芽細胞の培養系を用いて、① 骨芽細胞におけるサイトカイン応答遺伝子の探索、②初代培養骨芽細胞におけるエストロゲン応答遺伝子の探索を行った。GAS6, TRAIL, LIGHT, Adrenomedullinといった細胞増殖や分化に関与する液性因子の遺伝子が検出された。さらに、エストロゲンによる骨芽細胞増殖にはサイクリンD2,D3/CDK4,CDK6を介した経路が機能していることが示された。これらの結果は骨形成の促進を目指した新しい骨粗鬆症治療薬開発、治療反応性予測から見た薬剤選択法の開発へのよい指標となるものと考えられた。
3. 骨粗鬆症治療薬反応性決定遺伝子スクリーニング解析;成人病診療研究所における骨粗鬆症長期介入試験(RIPID-OFIS)に登録した女性集団より、各種遺伝子多型解析が行われた982例の閉経後女性を対象とし、既知の骨粗鬆症治療反応性遺伝子における多型性と骨量の変化を指標とする治療反応性との関連を検討した。活性型ビタミンD製剤やビタミンK2製剤の治療効果と相関する遺伝子多型性が認められたものの、さらなる検討が必要である。
4. 体系的SNP解析に基づく骨粗鬆症の治療薬感受性に関する遺伝的要因の解明:骨粗鬆症治療薬(ビタミンK、ビタミンD、エストロゲン 、エチドロネート、アレンドロネート)による単独治療をおこなった対象について、体系的SNPsからスクリーニングされたSNPについてタイピングを行い、遺伝子型とそれぞれの治療薬に対する治療応答性との相関解析をおこなった。相関解析の結果、有意な相関を示した SNPは エストロゲン治療応答に 1SNP、ビタミンD治療応答に3SNP のみであった。今後、症例の蓄積により検体数を追加することで、より検出力の高い解析が必要である。またそれぞれの薬剤応答性における機能的意義と相互作用について検討を考えていく必要がある。

結論

公開日・更新日

公開日
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更新日
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