保育所における保健・衛生面の対応に関する調査研究

文献情報

文献番号
200200401A
報告書区分
総括
研究課題名
保育所における保健・衛生面の対応に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
高野 陽(日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部部長)
研究分担者(所属機関)
  • 千葉 良(医療法人青仁会青南病院)
  • 春日文子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 遠藤幸子(東京都中野区立仲町保育園)
  • 西村重稀(福井県総合福祉相談所)
  • 小山 修(日本子ども家庭総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保育所の保健活動は、保育所の業務のなかにおいても重要な位置付けにあることは否定できない。特に、今日の保育需要の多様性に伴った保健活動の内容については、その保育事情に見合ったように十分な検討がなされるべきである。保育所保育指針にも示されているごとく、児童の健康の保持増進は、保育所の保育活動の実践において最も基本的な目的である。しかし、今日求められている保育事業は、地域に根ざしたものである。それに関連して、保育所の保健活動も、単に保育所入所児童の疾病や傷害等に関することではなく、子育て支援対策の確立にも視野を拡大しなければならぬことを求められている。 この意味から、本研究においては、保育所の保健活動について、嘱託医・かかりつけ医や看護職の役割、地域医療保健との連携、感染症及び環境保健対策、虐待対策、相談事業の観点から検討することし、それぞれの分担研究を実施するとともに、今年度は、研究の最終年次にあたることから、過去の研究結果に基づく、保育所保健活動に関するマニュアル作成の基本的方針を提示することを目的とした。マニュアルについては、各方面から多角的な内容をもつともに、具体的な方法で実践できる使い易いものを求める要望が強いことから、本研究班の今年度の研究においては、そのマニュアルの策定を図ることにした。
研究方法
千葉分担研究者が嘱託医やかかりつけ医の役割、遠藤分担研究者が保育所に配置されている看護職の役割、高野分担研究者が地域保健医療との連携、春日分担研究者が感染症及び環境保健対策、西村分担研究者が子育て支援の立場での相談事業、小山分担研究者が虐待対策等、それぞれの分担研究について、個々の立場でアンケ-トや聴き取り調査、実態調査等を実施した。併せて、3年間の研究結果に基づき、保育所の保健活動における問題点を検討し、その充実した解決を図ることを目的に、保育所において活用しやすいマニュアル作成の基本的方針となる課題を検討した。
結果と考察
結果=
保育所の保健活動の各分野における課題とマニュアル案の項目を示す。1保育所保健の意義と実践、2健康診断の質的充実、3登園時及び保育中の体調不良児の対応、4地域保健医療福祉活動との連携、5感染症対策、6保育環境の整備に関する基準設定、7相談事業、8虐待対策などであり、これらの具体的内容を検討した。各分担研究者の個別研究結果をまとめると、千葉班・遠藤班・高野班:今日の保育需要の多様性に鑑み、保育と地域保健、医療、療育との連携は必要で、保育からの働きかけとともに、母子保健の観点からの連携に視点をおくことの必要性、個人情報の共有化を図るための地域における保護者を含む協議の必要性を明確にし、さらに入所前健康診断の義務化を提案した。春日班:インターネット上のデータベースを利用することで、保育所における感染症の発生および伝播をリアルタイムに把握し、介入することができた。また環境衛生状態について実態調査を行い、あわせて考察をした。西村班:相談体制の整備にあたって、相談記録票の整備が重要な課題であることが認められた。また、地域特性に応じたものも作成することが望まれ、基本的なマニュアルの整備が望まれた。小山班:保育所における被虐待児の早期発見および家庭への対応の重要な鍵となる保育者と家庭とのコミュニケーションに関して、保育者の意識調査を行った。保育者は日頃から積極的に保護者とコミュニケーションをとろうとしており、保護者との信頼関係を形成していこうとする姿勢がみられた。このような日常的な保育者側の努力は、被虐待児の発見・家庭への支援において有効に働くものと考えられた。
考察=
近年の保育需要に応じた保育所保健活動は、単に、園児の保育所における健康管理だけでなく母子保健学的視点と子育て支援対策という重要な役割をもっている。これに基づくマニュアル作成の基本的方針を検討したが、その場合に、保育所全職員、嘱託医の保健活動に関する意識の方向付けが不可欠な条件であることが強調されている。さらに、地域における各職種や関係機関の連携の必要性が非常に重要であるが、その連携を適切なものに成熟させるためには、多くの課題の解決が必要であることが各分担研究によって明確にされた。しかし、その課題の解決にあたっては、保育所職員や嘱託医自身の意識の改革のみならず各分野の行政指導、機関間の擁護や協調の実践に向けての対応が求められるようになるものと考えられる。この対応が今後の重要な方向性として位置付けられるものといえるのではなかろうか。
結論
まとめ=保育所における保健活動を、各分担研究の結果にも示されているように、単に、保育現場に限定した活動とするのではなく、保育所の全職員や嘱託医、保護者に、子ども・保育所・家庭・地域の視点で認識して実践するというヘルスプロモーションの概念に基づく広く地域母子保健活動の一つの場面としての位置付けることができると考える。この点を踏まえた総合的なマニュアルの作成の基本方針を提示した。

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