インターネット及び人的ネットワークを活用した育児不安軽減に関する研究

文献情報

文献番号
200200389A
報告書区分
総括
研究課題名
インターネット及び人的ネットワークを活用した育児不安軽減に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
渡部 信一(東北大学)
研究分担者(所属機関)
  • 菅井邦明(東北大学)
  • 末永カツ子(仙台市発達相談支援センター)
  • 七木田敦(広島大学)
  • 佐藤智美(聖徳大学)
  • 山村滋(大学入試センター)
  • 三石大(東北大学)
  • 熊井正之(東北大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
核家族世帯や単独世帯の増加、地域ネットワークの弱体化が、家族内・地域内における育児知識・技術の伝達を阻害し、養育者の孤立をまねいている。育児不安やストレスの解決・解消方法を見出せずにいる養育者を支援するため、現在の育児環境を的確に把握し、養育者が抱える育児不安や孤立感を軽減する環境を整備することは喫緊の課題となっている。本研究では1)育児支援のニーズ調査、2)家庭や地域社会における人的ネットワークによる育児支援の現状調査、3)家庭や地域が失いつつある育児機能・育児支援機能を補うオンラインシステムの開発を行い、電子ネットワークによる支援と人的ネットワークによる支援を組み合わせた、マルチネットワーク育児支援システムを提案することを目的とする。
研究方法
育児支援のニーズと現状を、一般的なものと地域特有のものとに分けて把握するため、一般的な地域(東広島市)の子育て支援センター利用者を対象にした調査、及び過疎・多世代世帯という特徴のある地域(山形県西川町)を対象にした調査を実施する。また、昨年度の研究で作成した育児支援サイトMOC(マザーズオープンカレッジ)を中核とするオンラインコミュニティ「MOCタウン」を構築する。
結果と考察
①子育て支援センター利用者のニーズと現状(東広島市の子育て支援センター利用者対象の調査)
a)施設設備・運営・・・全般的に満足している。センターの活動を年齢別に実施することには疑問をもっている。設備の構造には難がある。
b)人的資源・環境・・・子どもの発達に応じた対応をされていると感じている。職員間で一貫した対応をされていると感じている。
c)子どもの変化・・・身体活動が十分にできることが親の満足に。子どもの変化には検討課題が多い。
d)母親の変化・ストレス軽減・・・育児負担の軽減には疑問がある。育児知識の伝達には有効である。リフレッシュ効果が大きい。
e)育児支援サークルの情報・・・情報提供には改善課題がある。
f)集約的なセンターより地域の実情を反映した小規模のセンターを好んでいる傾向があった。
g)今回使用した評価項目は支援センターの評価に有用であることが示唆された。
②過疎・多世代世帯地域の育児の状況調査(面積の95%が山地の特別豪雪地帯、若年層流出・ダム水没により過疎地域、高齢者人口が33%の山形県西川町における子育ての実情・家族支援の調査)
a)少子化により保育園・小学校・中学校が統廃合され、さらに全ての児童館が休館という状況。
b)町が子育て支援の基盤整備、母子保健体制を充実、保育園等の適正配置、子育てネットワークの整備として、全保育園を統合した新しい保育園の建設、保育年齢と時間の延長、保育園への子育て支援センター併設、育児講座・子育て相談・情報提供の実施、マタニティスクール・各種検診・予防接種・母親学級のほかに、ユニークな「孫育て学級」の実施を行っていることがわかった。
c)西川町の女子労働力率は県下・全国的にも高く、また一般に低下する20歳代後半から30歳代にも低下しないこと、配偶者の親との同居率が高く、日常的な育児の主役を配偶者の親が担当する伝統があることによると考えられた。
③育児支援オンラインコミュニティの構築、及びそこで用いるデータベース検索手法の検討
・育児支援に必要な要素、①経済的補助、②母子保健体制の整備、③時間の提供、④将来の保障(産前産後休暇及び育児休暇後の職業の保障など)、⑤人手の提供、⑥場所の提供、⑦情報の提供、⑧教育・啓蒙、⑨コミュニケーションのサポート、⑩相談体制の整備、のうち⑦から⑩はヒューマンネットワークによる育児支援を電子ネットワークがサポートしうる部分である。オンラインコミュニティMOCタウンは⑦から⑩までの支援を行うために、相談機関と連携した育児支援の情報提供システム、教育啓蒙システム、相談システム、コミュニケーションシステムを組み合わせて構築した。またこの際、利用者の関心・特性に合わせたサービスを提供するためのデータベース検索の手法を検討した。
結論
育児支援のニーズと現状を、一般的なものと地域特有のものとに分け、一般的な地域(東広島市)の子育て支援センター利用者を対象にした調査と、過疎・多世代世帯という特徴のある地域(山形県西川町)を対象にした調査を実施するとともに、家庭や地域が失いつつある育児機能・育児支援機能を補うオンラインシステムの開発を行った。子育て支援センター利用者のニーズに合ったサービスを必ずしも提供できていないこと、地域の実情を反映した小規模のセンターが望まれていること、用いた評価項目が今後のセンター評価にも有用であることが明らかとなった。また、多世代世帯が多く育児の主体が祖父母である地域では、その特徴に合わせた「孫育て学級」という独特の支援が行われていることが明らかとなった。育児支援要素のうち、電子ネットワークがヒューマンネットワークを支援可能な情報提供、教育啓蒙、コミュニケーションサポート、相談の機能を持つオンラインシステムの運用により、こうしたシステムの有用性、さらにヒューマンネットワークと電子ネットワークを相互補完的に用いた育児支援の有用性が実証されると考えられた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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