後障害防止に向けた新生児医療のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200200365A
報告書区分
総括
研究課題名
後障害防止に向けた新生児医療のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
田村 正徳
研究分担者(所属機関)
  • 田村正徳(埼玉医科大学 総合医療センター)
  • 仁志田博司(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
  • 藤村正哲(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 戸苅創(名古屋市立大学 医学部)
  • 上谷良行(兵庫県立こども病院)
  • 森島恒雄(名古屋大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
11,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
フォローアップ調査の結果では超低出生体重児の生存児の半数近くが、慢性肺障害に約1/4が脳性麻痺(CP)や精神発達遅延等の後障害に悩まされている。この班では当班では、こうしたハイリスク児の後障害の減少・改善を目的とする。
研究方法
本研究は6名の分担研究者がそれぞれの専門分野における計6分担研究課題(ハイリスク新生児の養育医療環境とケアに関する研究、ハイリスク児の感染防止対策に関する研究、超低出生体重児の後障害なき救命に関する研究、新生児の虚血性脳障害予防に関する研究、後障害防止の観点からみた新生児栄養管理に関する研究、ウイルス母子感染防止に関する調査研究)について独立して研究を行った。
結果と考察
1)通常のベッドサイドモニターを活用することによって、非侵襲的に新生児の体動を定量評価することが可能となった。2)NICUにおいて安全に呼吸理学療法を施行する為のガイドラインを作成し、ホームページ上で公開した。3) NICUにおけるMRSA保菌率が減少しているが、NTEDは広く蔓延しており、重症例も出現している。本邦に蔓延する特有なMRSAクローン(SCCmecc type II型)が新生児室にもひろがりNTEDの流行を来したと考えられる。4)新生児臨床研究を全国的に遂行するネットワークにより、2課題(「脳室内出血と動脈管開存症の発症予防に関する研究」「超低出生体重児への超早期授乳による罹病率の軽減と発達予後改善のための研究」)について大規模な多施設共同臨床試験を実施している。その検討過程において、参加施設の共同研究者に多施設による無作為割付盲検試験の基本的な考え方についての理解を深める事が出来た。5)多施設共同研究において出生早期からのnDPAP呼吸管理法によってCPの発症率は減少し、酸素投与期間も短縮出来た。これらの結果は、今後、極低出生体重児に対する出生早期の呼吸管理法の選択に大きな意味をもつと思われた。6)フォローオンミルクにより、現在のところ身体発育に著明な差はないものの、未熟児貧血、骨代謝における有用性が推測され、本試験の継続により長期予後の判定が待ち望まれる。7) CMV、HSV、HBV、HCVそれぞれ感染動態、臨床症状、診断法、治療および予防が大きく異なる。CMVでは凍結母乳が母児感染を軽症化する可能性がある。HSVは2型が神経学的な予後が悪く、また再発を生じやすい。B型肝炎母子感染対策事業では脱落事例に注意を喚起する必要がある。HCV母子感染における対策を考える上で、血中HCVRNA陽性、特にウイルス量が多い程、母子感染の危険は高い。
結論
低出生体重児の生存率の向上により、その長期の予後が注目され、新生児医療も救命の時代からより良いQOLを目指す時代になった。NICUも単に救命の場であるだけでなく、ハイリスク新生児の養育と母子関係形成の場として捉え直すことが要求されている。そのために、我々は養育環境としてのNICUやルーチンケアを見直し・再評価することが急務である。

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