保育所の給食システムに関する研究(総括報告書)

文献情報

文献番号
200200357A
報告書区分
総括
研究課題名
保育所の給食システムに関する研究(総括報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
水野 清子(日本子ども家庭総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 春日文子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 太田和枝(女子栄養大学)
  • 堤 ちはる(日本子ども家庭総合研究所)
  • 才村 純(日本子ども家庭総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保育所の調理室のあり方については、「規制改革推進3か年計画」で引き続き緩和を検討することとされているが、平成12年度厚生科学研究「保育所における給食の在り方に関する調査研究」において、調理業務を施設外で行っている(給食の外部搬入)事例が見受けられた。保育所給食を外部から搬入する場合に想定される様々な課題や問題について議論するための研究が必要である。
一方、高層化に伴う保育所設置に係る児童福祉施設最低基準のあり方については、平成13年度厚生科学研究「高層化等に伴う保育施設の計画・設計上の配置」において検討され、基準改正案を提示したところであるが、改正案を具体的に都心部の認可外保育施設に当てはめ、認可保育所への移動可能性を調査し、課題を取りまとめる必要がある。
研究方法
以下の領域から研究を行った。
【給食に関する研究】・・・学校給食センターに焦点を当てて研究を行った。
1.栄養管理・個別対応等に関する研究
27か所の学校給食センターおよびそこから配食される31か所の保育所を対象にして給食全般に関するヒアリングおよびアンケート調査を行った。
2.調理室からの受配給食の衛生に関する研究
厚生労働省大量調理施設衛生管理マニュアルならびに文部科学省学校給食衛生管理の基準を資料とし、保育所給食の衛生管理についての提言をまとめた。
3.給食の工程分析と料理の品質管理に関する研究
規模、給食システムの異なる学校給食センターと保育所2か所を訪問し、献立および作業の工程分析、食事の温度調査、配送容器および調理形態別にみた経過時間ごとの温度降下を調査した。
4.健康・栄養教育に関する研究
研究1の結果を踏まえ、これまで書物等に述べられている食教育の手法を基本に、主に学校給食センター等栄養士を対象にして、保育所児、保護者、保育士に対する食教育の方法について提言を行った。
【高層化に伴う保育所施設等の検討】
5.高層化に伴う保育所施設の避難上の配慮等について
駅型保育施設として認証されている38か所の保育施設から、地域性を考慮し、アットランダムに15か所を抽出し、ヒアリングにより建物の構造、避難施設の構造、調理室の構造について実態を把握し、考察を行った。
結果と考察
1.栄養管理・個別対応等に関する研究
保育所児に供与される食事、間食を含めた栄養管理に改善をはらうこと、0歳児が入所している施設では、その特性を考慮して施設内に調理室を設置することは必須である。学校給食センターによる保育所給食提供システムの拡大に、多くの給食・保育従事者は問題を訴えていた。
2.調理室からの受配給食の衛生に関する研究
学校給食センターから給食の配送ならびに受配保育所での衛生管理に関するポイントを中心に、保育所給食に即するような形で検討した。調理、配送、検収、配膳室、配食担当職員、検食、保存食に関する具体的な提言を行った。
3.工程分析と品質管理に関する研究
献立に用いられる料理の使用頻度、主菜・副菜に用いられる温菜、常温菜、冷菜の使用頻度を検討し、調理後、喫食までの時間、配送容器別に料理の温度降下を調べた。
4.健康・栄養教育に関する研究
効果ある食教育を遂行させるためには、栄養士養成のための教育プログラムを構築した上で、園児や保護者、保育士に対する働きかけの具体的な手法を提言した。
5.高層化に伴う保育所施設の避難上の配慮等について
今般、児童福祉施設最低基準が「高層化等に伴う保育所施設の計画・設計上の配慮について」での検討を経て改正、法制化された。今回の大きな改正点である建物の構造、避難施設の構造、調理室の構造について調査した結果、建物の構造については、駅型保育施設の殆どが耐火建築物に入居しており、適合性が高いことがわかった。避難施設については、屋外階段など屋外避難施設を有する施設は適合となるが、屋内階段しか有していない建物に入居している施設では不合格となる。これらの不合格施設を適合させるためには、部分的な改装が必要となるが、改装にはオーナーや他のテナントの理解と協力が必要である。調理室については、調査対象の殆どが2階に入居しており、類型化することは難しいが、避難施設と同様に、適合させるための改装や新たな設備の導入には、保育施設運営者の努力のみならず、周囲の理解も必要となろう。
結論
現行の学校給食センターによる保育所給食の提供方式には、様々な問題のあることを確認した。一方、調理場からの受配給食の衛生管理、学校給食センターに保育所給食の業務を委託する場合の効果ある食教育の方法について提言を行った。施設外調理委託方式を行う場合には、上述の領域を網羅した給食運営に関するマニュアルが必要であり、現場の栄養士の協力を得てマニュアルの策定を試み、それをモデル保育所において実施の上、有効性を検証する予定である。
建築に関する今回の研究では、駅型保育施設にハード面での防火対策の実態を把握し、事例研究的にそれぞれの問題点や課題を明らかにした。本調査の活用により、個々の施設における防火設備のあり方を見直す上での具体的ヒントが得られるとともに、新設施設の認証を行う際の基本的な指標が得られるものと期待される。

公開日・更新日

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