ITを活用したひとり親家庭の母親の在宅就労に関する研究

文献情報

文献番号
200200354A
報告書区分
総括
研究課題名
ITを活用したひとり親家庭の母親の在宅就労に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
林 喜男(㈱現代家族問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 宮崎正俊(岩手県立大学)
  • 東明佐久良(大妻女子大学)
  • 手塚和彰(千葉大学)
  • 和田勝(帝京平成大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在ひとり親家庭の母親は100万人と言われ、離婚の増加などから今後益々増える傾向にある。このような人々は、子供の存在や就業に有利な技能がないなどの理由で雇用機会に恵まれない状況にある。また、仮に雇用されたとしても収入が少ないため子供の教育費などの支払いがままならない状況となっており、実際に継続的かつ安定的な就労に結びついていない。本研究の目的は、ひとり親家庭の母親にとって就労機会の創出の必要性とデータ入力技術者の必要性とを併せて、雇用の需給関係を解決できる新たな就労支援システムの開発を行うものである。
研究方法
研究の実施に当たっては、主任研究者及び分担研究者による「e-GF(エレクトロニック・ジェンダーフリー)推進委員会」を設置し、7回の委員会を開催した。研究の実務はワーキンググループにて行った。2002年10月までにシステムの構築、12月から2003年3月にモデル地区での実証研究を行い、最終的に本委員会においてとりまとめた。
結果と考察
1.研究成果の寄与
①ひとり親家庭の母親の自立支援、就労支援
本研究は、在宅で仕事を行うことにより母親たちに新たな収入の道を与えるものであり、母親の経済的な自立と生活への希望を与える画期的な仕組みとして期待される。
②地方分散のためのインフラ
本研究で提案したIT活用就労支援システムは、全国100万世帯の母子家庭を積極的に受け入れるための新たな事業構想であり、その目的は単にひとり親家庭の母親に対する就労支援にとどまらない。このIT活用就労支援システムを全国に先行整備することにより、知識創発型の分散社会を促進するインフラとして教育、地理的、経済的な格差を是正し地方分散に寄与すると考えられる。さらにはデータセンター、ネットワーク構築・運用、教育・研修事業などの新たな事業と雇用の創出が期待でき、将来深刻な問題となることが予想される労働力不足への対応にも寄与する。
③e-JAPAN構想を先取り
IT活用就労支援システムは高速通信網(ブロードバンド)を利用してデータセンターと家庭との間のネットワークを構成し、遠隔でデータ入力業務の管理を行うなど、e-JAPAN構想の先取りともいえるシステムともいえる。一方当プロジェクトの対象とするデータ入力市場は今後8000億円規模が予測され、事業としての成立も十分期待できる。一方当構想の事業性については、全国60箇所(都道府県+政令指定都市)のデータセンターを設置し、10万世帯のひとり親家庭と契約し、データ入力業務を行うことで、最終的に1600億円程度の事業費が推計される。これは10年後の市場規模の約2割を獲得することで、実現可能といえる。
④雇用効果
ひとり親家庭の母親の就労支援ばかりでなく、データセンター、ネットワーク構築・運用、教育・研修事業などの新たな事業と雇用の創出が期待できる。そして、今後予想される労働力不足へ対応でき、新たな労働マーケットを切り開くことができる。
2.IT活用就労支援センターの仕組みについて
①具備すべき機能
本研究では、IT活用就労支援センターの機能の面から鑑みて、(1)IT活用就労支援センターを管理するための総合センター、(2)具体的な業務を行うためのデータセンター(各都道府県もしくは政令指定都市)、および(3)データの管理等を行うための電子倉庫(数箇所)を設置することとした。
また、データセンターに必要となる要件を、データ配信用の回線、配信方式、必要とするソフトウェアやセキュリティ、契約家庭が行う作業内容等の観点から検討した。
その結果、データセンターではブロードバンドを活用し、大量データの送受信が可能な環境を整備し、ひとり親家庭の母親等に対して快適な就労環境を提供することができた。今後超高速インターネット網に常時接続可能な環境が順次整備されるため、家庭とオフィス間で地図・図面などの大容量データのやり取りを行うことが十分に可能となる。
②センターの整備の方向
今回利用したeラーニング(インターネットを使った地図データ入力技術の研修)は、アニメーションのみなので臨場感に欠ける点がある。それを解決するには、ビデオ映像や写真を増やすという手段がある。アニメーションのみではイメージが湧かないことでもビデオ映像や写真を見ることによって閃く可能性がかなり高いと思われる。また開発した教材は、地形図、水道、下水道、ガスの入力システムの操作について解説している。これらの入力の全てが点(ポイント)、線(ライン)、面(ポリゴン)、記号・文字(シンボル)であるので、この入力のエッセンスが多く詰まっている地形の入力についての基礎演習を増やす必要がある。現状の操作用教材でも基礎力をつけるのには十分であるが覚えてしまうと退屈感が出てきて次を勉強する意欲が萎える傾向があるので視点を変えた基礎演習を増やしたほうがよいと考えられる。
③就労支援センター機能の整備
就労支援センターの機能の考慮点として、作業指示のルール化、個人の事情を考慮した業務配分システムの構築、入力システムメンテナンス部門の組織化、コールセンターの整備(時間帯、土日運用を検討)などがあげれる。
④メンタルケアの整備
在宅での作業場合、外界とのコミュニケーションに問題があり、孤立感を深めてしまう。このことは、意欲的に仕事を進めて行く上で問題が多い。電子掲示板を活用することで、同じ疑問や悩みを持った人がいることを認識するだけでも、気分転換となり、別の人の悩みを解決する人も出てくるので、業務面のみならず、プライバシーについてもミニコミュニティーの形成が重要と考えられる。
結論
本研究を通じてひとり親家庭の母親の自立支援のための今後は、ひとり家庭の母親が安心して教育、仕事ができるためのITを利用した双方向コミュニケーションの仕組みの研究、使い勝手の良い作業システム(地図入力システム)の開発研究、コミュニティオフィスの検討、行政としての新しい就労支援の社会システムの検討などが望まれ、当研究チームはさらに目標に向かって研究を進める予定である。

公開日・更新日

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